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Date: 2018/1227 Category: 業界ニュース
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先日、SFクロニクルのワインメーカーオブザイヤーを紹介しましたが、同時に発表された注目のワインメーカーを紹介します(2018 Winemakers to Watch: Meet the rising stars poised to change West Coast wine - San Francisco Chronicle)。

先日、ルータム(Lutum)のワインメーカーとして取り上げたギャヴィン・チャナンもかつて選ばれたこの注目のワインメーカー、若手の登竜門的に興味深く、またSFクロニクルの「今っぽさ」が感じられるのも面白いところです。

今回選ばれたのは5人。一人目はアリソン・トンプソン。L.A. Lepianeというワイナリーを持っています。かのシネクアノンで働き、その後4年間パルミナで働きました。そこでイタリア系品種に目覚め、サンタバーバラに自身のワイナリーを立ち上げて、バルベーラやネッビオーロといったイタリア系品種のワインを作っています。また、歌手のピンクのワイナ「Two Wolves」のアシスタント・ワインメーカーも務めています。

二人目はエリン・プーリー。ナパで「Little Frances」というワイナリーをやっています。また、デュモルではコンシューマーに直接ワインを売る部門にいるそうです。

エリンはオーストラリアのシドニー育ち。オーストラリアやカナダ、欧州で修行して、2010年にカリフォルニアに移住しました。実はオーストラリアで素晴らしいワインができるというセミヨンに可能性を見出し、ナパのレイク・カウンティの畑からセミヨンを作っています。

特徴は極端な早摘み。2015年のものなどは10.7%しかアルコール度数がありません。酸味を残すためにはそれくらい早く摘まないといけないとのこと。ステンレスタンクで発酵させた後、早い段階でボトルにいれ、そこから3年間熟成させてから出荷します。

3人目はジェイミー・モトリー。Jaimee Motley Winesというワイナリーをやっています。ウインドギャップ(現在のパックス)で働き、アルノー・ロバーツなどでも働きました。

自身のワイナリーではサンタバーバラのビエンナシードの畑からモンデュースを作っているほか、サンタクルーズのマーティン・レイの畑などからカベルネ・ソーヴィニヨンも作っています。修行したワイナリーがいずれも「ニューカリフォルニア」系でず、カベルネ・ソーヴィニヨンもつくるというのがまた面白いところです。

4人目と5人目は夫婦です。夫のジョン・ハウスは今回唯一の男性。妻は発音がよくわかりませんがKsenijaコスティック・ハウス。オレゴンでOvum Winesというワイナリーをやっています。二人はフロリダで出会い、オレゴンのチュハレムで働いた後、独立してOvum Winesを作りました。オレゴン各地のリースリングでワインを作っています。

日本から入手するのはなかなか難しいワインばかりですが、興味深いですね。
Date: 2018/1226 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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著名なワイン評論家のジェームズ・サックリングが2018年のアメリカワイン・トップ100を発表しています。トップ10は以下のもの。


1位 RIDGE VINEYARDS SANTA CRUZ MOUNTAINS MONTE BELLO 2015
2位 CONTINUUM NAPA VALLEY SAGE MOUNTAIN VINEYARD 2015
3位 REALM CABERNET SAUVIGNON NAPA VALLEY OAKVILLE TO KALON VINEYARD 2015
4位 COLGIN CELLARS SYRAH NAPA VALLEY IX ESTATE 2015
5位 SCREAMING EAGLE NAPA VALLEY 2015
6位 LITTORAI PINOT NOIR SONOMA COUNTY SONOMA VALLEY SONOMA COAST THE HAVEN VINEYARD 2016
7位 CAYUSE VINEYARDS SYRAH WALLA WALLA VALLEY BIONIC FROG 2014
8位 ULYSSES NAPA VALLEY 2016
9位 BERINGER CABERNET SAUVIGNON NAPA VALLEY PRIVATE RESERVE 2015
10位 NO GIRLS SYRAH WALLA WALLA VALLEY LA PACIENCIA VINEYARD 2015

ナパのワインが6本と過半数を占める中、1位はリッジのモンテベロ2015でした。果実味に頼らないワイン造りを一貫しており、まさにカリフォルニアのクラシックと言えるワインです。2013年のダブル100点(ワインアドヴォケイトとデカンター)に続く名誉で、改めてその実力が見直されていると思います。

トップ10にシラーが3本入りました。うち2本はワシントン州(カイユースとノーガールズ)。評論家の評価の高さと相反して、市場ではなかなか盛り上がらないシラーですが、もっと人気が上がっていい品種だと思います。先日ワイン会で出したストルプマンのシラーも大人気でした。

6位にリトライ(ピノ・ノワール ヘイヴンズ 2016)が入ったのもすごいこと。例年カベルネ・ソーヴィニヨンが強いジェームズ・サックリングのリストの中で、ピノ・ノワール、しかもエレガント系のリトライもいうのはとても目を引きます。ちなみに40位にもリトライのピボット・ヴィンヤード ピノ・ノワールが選ばれています。



ドミナスのクリスチャン・ムエックスが作る新しいプロジェクト、ユリシーズが8位。確か昨年もかなり上位だったと思います。

9位はベリンジャーのカベルネ・リザーブ2015。日本でも1万6000円くらいで買えるワイン(このヴィンテージは未入荷)で、この中では安価なワインです。

トップ10以外で見ると、オーパスワンが29位。一昨年は全世界の1位に選ばれていますが、2015も高評価です。

28位にはアイズリー・ヴィンヤーズのソーヴィニヨン・ブラン。赤ワインが圧倒する中、白ワインではこれがトップです。ちなみにシャルドネでトップ(白ワインで2位)は58位。HdVのワインでした。

74位にはケンゾーのカベルネ・フラン明日香。ケンゾーも頑張ってますね。

Date: 2018/1222 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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SFクロニクル紙が2018年のワインメーカーオブザイヤーを発表しました(Winemaker of the Year Ian Brand represents the only way forward for California wine - San Francisco Chronicle)。ル・プティ・ブランド(Le P'tit Brand)、ラ・マレア(La Marea)、アイ・ブランド・アンド・ファミリー(I. Brand & Family)の3つのワイナリーを持つイアン・ブランドが選ばれました。
ル・プティ・ブランド

モントレー近辺の沿岸地域の畑にこだわり、リーズナブルな価格で高品質なワインを作っています。

イアン・ブランドはコネティカットの出身。2003年にボニー・ドゥーンで働き始め、その後Big Basinを経て2008年にル・プティ・ブランドを立ち上げます。その後、同地域のグルナッシュやアルバリーニョにこだわったラ・マレア、カベルネ・ソーヴィニヨンなども、作っています。

日本でもル・プティ・ブランドグルナッシュ・ブレンドのワインは売っています。実売価格だと
3000円台前半なのは、いいですね。

Date: 2018/1221 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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先日はワシントンのチャールズ・スミス来日イベントを紹介しましたが、その前の週には「Taste Napa Valley」としてナパのワイナリーがいくつも来日します。どちらかというと業界向けのイベントが中心ではありますが、一般向けのイベントもあります。

一般向けイベント | Event Categories | ナパヴァレー・ヴィントナーズ

東京では1月17日に2つのイベントがあります。
「ナパヴァレーの環境にやさしいワイン」というセミナーは、環境に優しいワイン造りをしている5人の生産者を招いて、その取組を紹介するもの。もちろんワインの試飲もあります。会場は青山(表参道)のアカデミー・デュ・ヴァンで、19:00~21:00。会費は5400円です(安い!)。ナパ・ヴァレー・ヴィントナーズはサスティナブルのプログラム「ナパ・グリーン」を推進していて、先日はカリフォルニア州で表彰されました。いいタイミングのセミナーですね。

もう一つは「生産者に会えるテイスティング会!(レクチャーつき)@有楽町ワイン倶楽部」というもので14:00~16:00。上記のセミナーとはしごも可能です。ちなみに登場するワイナリー(3つ)は重なっていません。なんと参加費は1000円!。ワインの販売もあります。ワイナリーがブースを出して、そこに行って試飲する形式のようです。場所はBistro&Bar 有楽町ワイン倶楽部の店内です。

大阪でも同じ形式の試飲会が19日に「タカムラ」で開催されます。こちらは8ワイナリーが参加して、会費は3000円。シルバー・オークやシュラムスバーグも出ます。時間は12:30~14:00。

関西ではこのほかランチが一つとディナーが3つ開催予定です。
ランチは19日11:00からウルフギャングステーキで。生産者5人のワインを飲みながら、ウルフギャングステーキのTボーンステーキが食べられるという、よだれの落ちそうな会です。会費は税別1万6000円。

ディナーは18日に大阪のロウリーズ・ザ・プライムリブとモダン中華シーフで、19日には京都の木乃婦で開催されます。ロウリーズは生産者7名、シーフは5名、木乃婦はなんと10名参加です。ロウリーズは税別1万5000円。シーフは税別2万円、木乃婦は税別3万円です。

関東でディナーやランチがないのが寂しいと、ある人が言っていました。次回はぜひ関東でもやってほしいですね。

Date: 2018/1219 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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ワシントン州で非常に高く評価されているシラーを輩出しているKヴィントナーズや、先日wine.comで2018年の1位に選ばれたワインズオブサブスタンスのオーナー兼ワインメーカーのチャールズ・スミスが来年1月、9年ぶりに来日します。一般向けにもイベントが開催されるので、そのお知らせです。
チャールズ・スミス
チャールズ・スミスのKヴィントナーズは、白黒で、墨絵のようなイラストをあしらったラベルが印象的。チャールズ・スミス本人の容貌も合わさり(彼の前職はロックバンドのマネージャーだったとか、なるほど)てっきり色物のワイナリーかと思いきや、数多くの種類が作られているシラーなど、非常に高く評価されています。例えばパーカー98点以上のワインで20本! ワシントンの、というより米国を代表するシラーの生産者と言っても過言ではありません。それだけ高評価なのに、価格はかなり控えめ。これがナパの生産者だったら倍の値付けでも不思議ではないレベルです。

また、ワインズオブサブスタンスでは打って変わって品種の頭文字をあしらったシンプルなラベル。ワインも基本に忠実な作りでコスパ抜群。wine.comで一番人気に選ばれるのも理解できます。

イベントは1月23日19時00分から赤坂の「Artisan Table」というオシャレなレストランで。
立食形式で、会費は前売り8500円とこれほと有名な生産者のパーティーとしてはお安めになっています。

申し込みはこちらから。
チャールズ・スミス・ワインナイト at THE ARTISAN TABLE / Charles Smith Wine Night at THE ARTISAN TABLE | Peatix

ワシントンワイン、僕もまだまだ不勉強で知らないことだらけですが、いいワインがたくさんあるので、なるべく紹介していけたらと思っています。
Date: 2018/1217 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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20代で2つのワイナリーを手にし、注目のワインメーカーとなったギャビン・チャナンが来日し、ワインメーカー・ディナーが開かれました。

会場は表参道のTwo Rooms Grill | Bar。とてもおしゃれなレストランです。
今回は46名が一列のテーブルに並ぶという圧巻の配列。

ギャビン・チャナンがワイン業界に足を踏み入れたのは18歳のとき。元々オー・ボン・クリマの事務・クレンデネンとは家族ぐるみでの付き合いがあり、そこから自然にオー・ボン・クリマで修行を始めたそうです。「人生に必要な知恵はすべて幼稚園の砂場で学んだ」という有名な書籍がありますが、彼の場合は、ワイン造りで重要なことはすべてオー・ボン・クリマで学んだ、といっていいでしょう。

21歳の2007年には初めてワインを造ります(チャナン・ワインズ)。これもオー・ボン・クリマの伝手で始めたものでした。9歳からワインを造ったベッドロックのモーガン・ピーターソンのような例がないことはないですが、米国ではお酒を飲めるのが21歳からですから、やはり非常に早いです。その若さで、最初からワールドクラスのワインを作ることだけを考え、最初はクレージーだと言われながらも、次第に周りが認めていったとのこと。

25歳の2011年に、ソノマに複数の畑を持ち、キスラーやコスタ・ブラウンにも出資していたビル・プライスと出会います。ビル・プライスはサンタ・バーバラに興味があり、ギャビン・チャナンは、逆にソノマにも興味があったため、双方のニーズが合致して意気投合。著名な畑であるデュレルのブドウをビル・プライスから入手して、新たなワインを造り始めました。それが今回のLutum(ルタム)です。ワインの造り方は全く同じということで、サンタ・バーバラで素晴らしいピノ・ノワールやシャルドネを造ってきたブリュワー・クリフトンに通じるものを感じました(ブリュワー・クリフトンもさまざまな畑のワインを全く同じレシピで作ることをモットーにしています)。ルタムはシャルドネとピノ・ノワールをサンタ・バーバラのサンフォード・ベネディクトやラ・リンコナーダ、ソノマのギャップス・クラウン、デュレルなどから造っています。日本にはサンフォード・ベネディクトとギャップス・クラウンのワインが入ってきています。ちなみに、ビル・プライスが関わっているワイナリーで、最近注目が集まっているスリー・スティックスも、やはりギャップス・クラウンのワインを造っていますし、コスタ・ブラウンのエステートのワインにも使われています。要注目の畑の一つです。

現在は、チャナンでは年間3000ケースほど、ルタムでは2000ケースほど生産しているとのこと。また、チャナンはホールクラスター(除梗なし)で造るのが多いですが、ルタムでは大部分除梗しているそうです。


食事を進めながらワインをいただきます。


まずはシャルドネから。サンフォード・ベネディクトのシャルドネはきれいな酸で、比較的軽い味わいでさわやかさがあります。時間がたつとだんだんふくよかさも出てきます。サンタ・バーバラらしいちょっと塩っぽい風味もあります。カリフォルニア的な押し出しの強さはあまりありませんが、きれいなワイン。

一方、ギャップス・クラウンは酸は少なめでそのぶんリッチに感じられる造り。サンフォード・ベネディクトは珪藻土の土壌なのに対して、ギャップス・クラウンは粘土に砂利。そのあたりの違いも関係しているのかもしれません。

ピノ・ノワールのサンフォード・ベネディクトは、ピノ・ノワールとしては比較的濃い目で、ラズベリーなどの赤い果実味に、ブルーベリーのようなダークな果実の風味もあり、パワフルです。これもブリュワー・クリフトンのワインを少し思い出させるものがありました。

一方、ギャップス・クラウンはバランスのよいワイン。こちらの方が穏やかな味わいです。

筆者の周りにどちらのワインが好きか聞いてみたところ、ソノマ派とサンタ・バーバラ派に分かれました。いい悪いの違いよりも、好みの違いといえるでしょう。私個人としてはサンタ・バーバラのワインのコントラストの強さに魅力を感じました。

最後のワインはポートフォリオの2014年。毎年ながらすばらしいワインです。先日セミナーで試飲したロバート・モンダヴィのトカロンのカベルネ・ソーヴィニヨンと、同じ造り手だけあって通じるところがあり、それも面白かったです。ちなみに、ポートフォリオのカベルネ・ソーヴィニヨンはヘンドリーの畑のブドウですが、15%使われているカベルネ・フランは、19世紀にはトカロンの畑の一部だった「デタート」の畑のものを使っています。


会場となったTwo Rooms Grillさんも本当にすばらしいレストランでした。

Date: 2018/1214 Category: 業界ニュース
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オーパス・ワンがTCA(ブショネの素になる物質)で汚染された樽を売ったとして、フランスの樽会社を訴えました(Opus One Sues Supplier Alleging Barrels Were Contaminated with TCA)。

汚染された樽の数は10。これによって2016ヴィンテージのワインのうち590ガロン(2233リットル、ボトル約3000本)のワインが駄目になったといいます。

オーパス・ワンは最低でも$471,356の被害があったと主張しています。
Date: 2018/1213 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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ナパのワイナリーの業界団体ナパ・ヴァレー・ヴィントナーズとメンドシーノのフェッツアーがカリフォルニア州の環境リーダーとしての賞「Governor’s Environmental and Economic Leadership Award」(GEELA)を受賞しました。10の団体や会社が表彰される中の2つにワイナリー関係が選ばれたことになります(Napa Valley Vintners and Fetzer Vineyards Receive Californias Top ...)。
Geela
ナパ・ヴァレー・ヴィントナーズは「ナパ・グリーン」と呼ぶ環境のプログラムが受賞の理由。フェッツアーはゴミを減らす努力が受賞の理由です。ナパ・ヴァレー・ヴィントナーズからはケイクブレッドのオーナーであるブルース・ケイクブレッドが授賞式に参列。ケイクブレッドはゴミの93%をリサイクルしているとのこと。
Date: 2018/1212 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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1980年に設立されたスパークリング・ワインのプロデューサー「パイパー・ソノマ」が日本での販売を始めました。元々シャンパーニュのパイパー・エドシックが始めたワイナリーですが、現在はパイパー・エドシックの手は離れているようです。また、米国では流通・マーケティングはマイケル・モンダヴィの「フォリオ」が2018年から手がけるようになりました。

また、ワインメーカーはシュラムスバーグで長年ワインメーカーを努めていたキース・ホック。2015年から参加しています。

日本で販売するのは基本のブリュット。価格は4000円とリーズナブルです。


Date: 2018/1211 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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米国TTB(アルコール・タバコ税貿易管理局)がウエスト・ソノマ・コーストなど新AVAの申請を出しています(Feds propose new West Sonoma Coast wine territory)。ほかに提案されているAVAはニューヨークのアッパーハドソンなど。

ウエスト・ソノマ・コースト

ウエスト・ソノマ・コーストはソノマ・コーストの太平洋側。乱暴に言えばソノマ・コーストからペタルマ・ギャップAVAを除いた部分になり、フォートロス・シーヴューAVAを完全に包含した形になります。

2019年1月7日まで意見募集の予定。
Date: 2018/1210 Category: 業界ニュース
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ナパのマウント・ヴィーダ―にワイナリーを構えるヘス・コレクションのワインメーカー、デイブ・ガフィ氏が初来日し、セミナーを開催しました。



ヘス・コレクションの創設者はスイス人のドナルド・ヘス。ミネラルウォータービジネスで財を築いたあと、1970年台にナパを訪れました。BVのカベルネ・ソーヴィニヨンやロバート・モンダヴィのシャルドネを飲み、ナパのワインの可能性に気づいたドナルド・ヘスはロバート・モンダヴィに直電。ナパでワインを造ることを決意したそうです。

ただ、ロバート・モンダヴィのアドバイスは「山は避けろ」だったのに、ドナルド・ヘスは山のワインの可能性に賭けてマウント・ヴィーダ―に畑を切り拓き、ワイナリーを構えます。1983年にワインを初リリースしました。

ワイナリーには美術館を併設し、ナパでも人気のワイナリーの一つになりました。特にカベルネ・ソーヴィニヨンでは非常にコスト・パフォーマンスの高いワインを造ってきています。

マウント・ヴィーダ―産のワインの生産量はナパ全体の1%ほど。ナパのヴァレー・フロアはずっとぶどう畑が広がっているのに対し、マウント・ヴィーダ―は今でも畑がごくわずか点在するのみです。地質は火山性で頁岩と岩が主体。痩せた土地で、ブドウの房も実も小さいそうです。

ヘス・コレクションは現在、マウント・ヴィーダ―の標高240mほどから600mほどのところに畑を3つ持っています。このほか、ナパの北東部にあるポープ・ヴァレーにアローミという自社畑も持っています。

試飲は赤ばかり4種類。


まずはアローミのカベルネ・ソーヴィニヨン2015。カベルネ・ソーヴィニヨン92%にプティ・シラーが6%、プティ・ヴェルドが2%です。アローミのあるポープ・ヴァレーはナパの中でも海からの距離があり、気温が高いところ。一般的に考えれば果実味が豊かで芳醇なカベルネができそうな場所ですがアローミのカベルネは意外にタンニンがしっかりあり、酸も豊か。もちろん芳醇さや濃厚さもあるのですが、これも山カベ(山地産のカベルネ・ソーヴィニヨンのこと)かと思うくらいのタンニンでした。

理由の一つには、ワインに重厚感を与えるということで加えているプティ・シラーがありそうです。また、デイブ・ガフィさんいわく「山カベの味に慣れすぎているから、平地のカベルネで造ってもそういった味わいにしていってしまうのかもしれない」とのことでした。

二番目はライオン・テイマーというレッド・ブレンドの2015年。マウント・ヴィーダ―の畑ではマルベックがよいものができるということでマルベックが50%入っています。そのほかはジンファンデルが23%、プティ・シラーが11%など。自社畑のブドウが主体ですが、一部買いブドウも入っています。

これもかなりタニックではあるのですが、重さはあまりなく、なにか軽やかな味わい。面白いワインです。

3番めがマウント・ヴィーダ―のカベルネ・ソーヴィニヨン2013。カベルネ・ソーヴィニヨン82%でマルベックが18%。ブルーベリーなど青系の果実味が濃厚ですが、それ以上にガツンと来るタンニン。酸もきれいで、洗練されています。ストラクチャーのしっかりしたワインでまさに山カベ。山カベのお手本のようなワインです。

最後はフラッグシップのザ・ライオン2014。このワインについてはスケアクロウのワインメーカーであるセリア・ウェルチがコンサルタントを務めています。

色は紫から黒と見間違えるほどの濃厚さがあります。香りも重厚。さすが「ライオン」の名を冠すだけのことはあります。タンニンは非常にこなれて洗練されています。個人的にはカベルネ・ソーヴィニヨンの荒々しさに惹かれるところはありますが、こちらの洗練さもたいしたものです。



このほか、試飲コーナーでは、買いブドウで造っているコスパの高い「ヘス・セレクト」のワインもいろいろ出ていました。個人的には、ここのワイナリーの味で一番好きなのはやはりカベルネです。そのほかではプティ・シラーやシラーなどをブレンドした「トレオ」というレッド・ブレンドもうまみがあってなかなか良かったです。
Date: 2018/1208 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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10月に、試験問題が漏洩したとして、今年マスターソムリエに合格した24人中23人が不合格となった問題で、このほど再試験が行われ、6人が改めて合格しました(6 Master Sommeliers Regain Titles After Exam Invalidation | SevenFifty Daily)。

再試験は2019年4月にも行われるため、今回は23人全員が受けたわけではありませんが、何人受けたのかは公表されていないようです。

今回の問題、マスターソムリエ協会からはほとんど情報が発信されていません。誰が漏らしたかは、マスターソムリエのリストから消えた人間をあぶり出すことでほぼ判明していますが、その情報公開の姿勢には批判の声もかなりあるようです。

いろいろな意味で禍根を残す今回のマスターソムリエ試験です。

とはいえ、6人の再合格者はおめでとうございます。
Date: 2018/1207 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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ジャン・シャルル・ボワセ率いるボワセ・コレクションがナパのオークヴィルとソノマのヒールズバーグに店を持つオークヴィル・グロサリーを買収することが判明しました(Oakville Grocery Joins Boisset Collection)。


oakville grocery

オークヴィル・グロサリーは2007年からはラッド(Rudd)家がオーナーでしたが、この5月に当主のレスリー・ラッドが亡くなり、娘が引き継いでいました。ナパの店舗に併設して、ラッドのテイスティングルームもあるのですが、そちらは1月に完了する買収後はボワセ・コレクション関連のものになるようです。

ジャン・シャルル・ボワセは、初めてナパを訪れた11歳のときにオークヴィル・グロサリーに感銘を受けたとのこと。彼のJCBブランドのワインは思い出の数字が付けられるのですが、ピノ・ノワールが、初ナパ訪問の「11」と付けられています。

オークヴィル・グロサリーのオークヴィルの店舗は1881年にオープン。カリフォルニアで継続している店舗としては最も古いのだそうです。JCBはカリフォルニア最古のワイナリーであるブエナビスタも所有しており、古いものへのこだわりもあるのかもしれません。

個人的にはオークヴィル・グロサリーといえばパロアルト店が思い出なのですが、もう無くなって10年も経つんですね。時間が過ぎるのは早いなあ。
Date: 2018/1206 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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試飲したワイン
昨日は、アカデミー・デュ・ヴァンのセミナー3回目。全6回なのでこれで折り返しです。

テーマはリッジです。歴史の話やモンテベロ、リットンスプリングスとガイザーヴィル、さらにはラベルの話などをしました。

試飲の目玉はデカンター、ワイン・アドヴォケイトで100点を取った2013年のモンテベロ。モンテベロらしい杉の風味に加えてさすがの凝縮感。ナパのカベルネとは一線を画すしっかりとした酸なとが特徴的でした。

セミナーの後は初のクラス会。さすがに飲み過ぎました。
Date: 2018/1204 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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11月末に発表されたワイン・アドヴォケイトの中間号で日本酒のレポートが出ていました。精米歩合の低い日本酒に高得点が次々と与えられました。

最高点となったのは宮城県の新澤醸造による「残響 Super7 2017」。日本酒では珍しいヴィンテージ表記のついた酒で、精米歩合は7%。98点がついています。これだけ精米歩合が低いと相当すっきりした味わいになるのかと思いきや、以外にもかなりコクがある味わいのようです。価格も高級ワイン並みの48000円(税抜き)。


続く96点は「楯野川 純米大吟醸 光明」。精米歩合はなんと1%。99%もコメを削ってしまうのって意味があるのかどうなのか、素人にはわかりませんが、すごい技術であることは間違いないようです。値段もかなりすごい。非常にピュアな味わいのお酒だとのことです。


95点の一つは木屋正酒造の高砂純米大吟醸松喰鶴。


2つ目は来福ファンタスティック7。これも精米歩合は7%。


最後は再び楯野川の純米大吟醸極限。これは8%の精米歩合。


Date: 2018/1201 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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2018年11月25日、カリフォルニアの山火事史上、最大の死者数となったキャンプ・ファイアー(Camp Fire)がようやく100%包囲された形になりました。昨年は12月にも巨大な山火事が起こっており、まだ安心するには早い状況ではありますが、今回の山火事を含め、カリフォルニアの山火事について、知っておきたいことをまとめてみます。

・山火事は珍しくない

 乾燥しているカリフォルニアでは山火事が起こること自体は珍しくありません。例えばWikipediaの2018年の山火事のまとめを見ると2018年だけで7579件の山火事が起こっています。ちなみに2017年は9133件とやや多かったのですが、毎年7000から9000件程度の山火事があるのです。ニュースで報じられない山火事もたくさん起こっていて、それ自体は珍しいものではないということです。

・「鎮火」は火が全部消えたことではない

 日本では「鎮火」として報道されていますが、英語では「contained」。意味は文字通り「包囲された」とのことです。山火事の消化活動は、水を撒いたり、消火剤を撒いたりというのはありますが、それ以外に燃えたところの周りに一定幅の防火帯を作って、それを火が越えていかないようにするというのがあります。100%包囲したというのは、こういった防火帯で完全に回りを包囲したということ。実際にはエリアの中では火が残っている可能性もあります。「鎮火」というと完全に火が消えたイメージですが、必ずしもそうではありません。

・史上初、史上最大が多すぎる

 2017年10月に、ワイン・カントリーにも大きな被害をもたらした山火事があったのは記憶に新しいところです。中でもタブズ・ファイアー(Tubbs Fire)と呼ばれる火事はナパのカリストガで始まり、ソノマのサクラメントあたりまで一気に焼き尽くして、長沢鼎ゆかりの施設などを破壊しました。建物の被害が5643件、亡くなった人が22人。36,807エーカーを焼きました。最も破壊的な火事でした。

 2017年12月にはトーマス・ファイアー(Thomas Fire)が起こり、サンタ・バーバラやベンチュラに大きな被害を与えました。オーハイ(Ojai)ワイナリーもかなり危険な状況でした。281,893エーカーが燃え、その時点での最大の面積を焼いた火事となりました。

 2018年7月にはメンドシーノで「メンドシーノ・コンプレックス・ファイアー」と呼ばれる複合火災がありました。これは「ランチ・ファイアー」と「リバー・ファイアー」の混ざったものですが、その時点で複合火災として最大面積となりました(459,123エーカー)。また、このときは「ファイアー・トルネード」と呼ばれる竜巻状の火災が起こったことも話題になりました。さらに、このときの被害から、メンドシーノでのブドウの煙汚染問題が起こっています


 そして、2018年11月の火事です。ロスアンゼルス近辺では「ウールジーファイアー」が起こり、マリブ近辺の豪邸などを焼き、「マリブコーストAVA」地域のワイナリーにも大きな被害を与えました。これは記録としては、トップではありませんが、ほぼ同時に起こった「キャンプ・ファイアー」では88人が亡くなり、カリフォルニアで最も多くの死者を出した山火事となりました。なお行方不明者も200人を超えています。 18,804の建物を破壊し153,336エーカーを焼きました。

2年間でこれだけ記録的な火災が頻発するのは異常事態です。

・なぜこんなに被害が大きくなるのか。
 秋になると、カリフォルニアでは強風が吹くことがあります。キャンプ・ファイアーや、昨年のタブズ・ファイアーでは最大時速100kmに近い強風が吹いたといわれています。このため、火が広がるのも非常に速く、1時間に3kmとか4kmとか進んだと言われています。

・異常事態は続くのか?

 カリフォルニアの州知事は「これは“新しい正常”などではありません。これは“新しい異常”です」と言っています。これが正常になったという自身の発言を否定して改めて異常事態を宣言した形になっています。

・来年以降も火事は起こるのか。

 冒頭にかいたように、山火事自体は毎年何千件と起こっています。ただ、ここまで人的被害や建物の被害が出たことはありませんでした。これからも毎年のように記録は起こる可能性が高いと思います。