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Date: 2019/1030 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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ソノマの大火事キンケード・ファイヤーの猛威が続いています。2日前の記事では3万エーカーほどとなっていた延焼面積は7万5415エーカーと2倍以上に広がりました。当初広がった南西のドライクリーク方面は食い止められたものの、南に広がりアレキサンダー・ヴァレーからチョークヒルのあたりまでになりつつあります。
Kincade fire
コンテイン率は15%と2日前の5%より改善しました。建物は124破壊されました。その中には全焼したソーダ・ロック・ワイナリー、それからフィールド・ロックというワイナリーも被害を受けたという報告があります。

今年の収穫はだいぶ終わっているという報告もありますが、アレキサンダー・ヴァレーのカベルネ・ソーヴィニヨンは収穫が遅い地域なので、まだブドウが畑に残っているところもあるようです。また多くの地域で停電しているため、タンクの温度管理などができなくなっているワイナリーも多数出ている可能性があります。ちなみにセバストポールにあるポール・ホブズのワイナリーも電気がなく、運任せの部分があるとのことです(来日中の本人から聞いた話です)。

また、太平洋に近いセバストポールなどの地域は避難命令から避難勧告へと変わりました。

キンケード・ファイヤーだけでなく、この数日間でカリフォルニアで起こった山火事は300件超にもなっています。ロスアンゼルスではゲッティ・センターの近くで起こったゲッティ・ファイアーで避難勧告も出ています。避難した人の中には前カリフォルニア州知事のアーノルド・シュワルツェネッガーやNBAスターのレブロン・ジェームズなども含まれています。
Date: 2019/1028 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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予想されていた強風によってキンケード・ファイヤーの勢いが止まりません。アレキサンダー・ヴァレーのソーダ・ロック・ワイナリー(Soda Rock Winery)はワイナリーが全焼しました。1869年に設立され、今年150年を迎えた歴史あるワイナリーで、当時からの石造りの建物も焼け落ちています。

風速は最大秒速40メートルほどにもなっており、台風並みの強風が吹き荒れています。ヒールズバーグに住む布袋ワインズのオーナー、ビル・キャンベル氏も避難しており、氏によると消防士たちの奮闘によってHighway128で炎をなんとか食い止めているとのこと。頭が下がります。現在の予報では月曜日の午前まで強風は続く見込みです。

火事の面積は3万エーカーほどに広がっており、コンテイン率は10%と変わっていません。現在のところ11月7日までに完全にコンテイン(それ以上火災が外に広がらない状態にすること)したいとしています。

避難命令も10の地域に広がっており、18万人が対象と過去で最大になっています。10の地域を以下に挙げます。
1: Geyserville;
2: Knights Valley;
3: Healdsburg and Windsor;
4: Dry Creek Valley;
5: Mark West, Larkfield, Wikiup;
6: NE Santa Rosa including Fountaingrove, Oakmont, Rincon Valley;
7: Forestville, Guerneville, Duncans Mills, Jenner, Bodega Bay, Occidenta;
8: Sebastopol and Valley Ford;
9: Coffey Park and Santa Rosa north of Guerneville Rd-Steele Lane and
10: West of Stony Point Road between Guerneville Rd. and Ludwig Ave.

追記:カリフォルニアのニューサム州知事は非常事態宣言を発令しました。
Date: 2019/1027 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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ソノマで発生した山火事「キンケイド・ファイアー」(Kincade Fire)の勢いが衰えません(Kincade fire now at 25,000 acres, 10% containment as officials stage backup plan for evacuees)。2日前には1万エーカーだった焼失面積は2万5455エーカー(約103平方キロメートル)にまで広がりました。コンテイン率は10%とまだまだ少なく、コントロールできている状態ではありません。ちなみに2年前のナパ・ソノマなどの大火は3つの山火事が同時並行で起こったものですが、中でもソノマで被害の大きかったタブズ・ファイアーによる焼失面積は36807エーカーであり、かなり近づいています。ただ、このときは全部で250ほどの山火事がカリフォルニアで起こっており、全部合わせると24万エーカーを超えています。

上記の数字は現地時間で土曜日の朝7:30時点で発表されたもの(10時の発表でも同じ数字)ですが、この後土曜日の夜にかけて西向きの風が強まるという予報が出ており、さらに広がることが懸念されています。この半日前のレポートでは燃えた建物が21、危険にさらされているのが約700とされていました。ガイザーヴィルに加え、新たにヒールズバーグとウインザーの5万人に避難命令が出ています。サンタローザ・フェアグラウンドでは家畜に避難勧告が出ました。

Kincade Fire

南西端はアレキサンダー・ヴァレーに入っており、リッジのガイザーヴィルの畑もかなり近いところにあります。ただ、この1日で見ると北東方向に広がっており、畑の多い南西方向は今の所止まった状態です。ガイザーヴィルからも近いリッジのリットン・スプリングスのワイナリーは金曜日は閉じていましたが、土曜日はオープンするとのことです(これについてはヒールズバーグに避難命令が出たのでクローズにしますとのこと)。
Date: 2019/1026 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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サンタ・クルーズ・マウンテンズの生産者団体サンタ・クルーズ・マウンテンズ・ワイングロワーズ・アソシエーション(SCMWA)がマウンテン・コレクションという地域を代表するワインのセットを販売しています(Mountain Collection - Santa Cruz Mountains Winegrowers Association)。

このセットはマスター・ソムリエのデイビッド・グランシーが選定したものでシャルドネ、ピノ・ノワール、カベルネ・ソーヴィニヨンそれぞれ3本からなります。2019年のマウンテン・コレクションは11月15日まで999ドルで販売されています。

ワインリストは
2012 Mount Eden Vineyards Estate Chardonnay
2015 Big Basin Vineyards Bald Mountain Vineyard Chardonnay
2017 Rhys Vineyards Horseshoe Vineyard Chardonnay
2014 Partage Saveria Vineyard Pinot Noir
2014 Thomas Fogarty Winery Will’s Cabin Pinot Noir
2014 Clos de la Tech Sunny Slope Pinot Noir
2012 Kathryn Kennedy Estate Cabernet Sauvignon
2015 Ridge Vineyards Monte Bello Cabernet Sauvignon
2016 Eden Estate Wines Reserve Cabernet Sauvignon



サンタ・クルーズ・マウンテンズは48万エーカーと地域はかなり広いですが、ナパやソノマのように畑が広がっているのではなく、山地の中に畑がポツポツと点在している感じです。畑はわずか1300エーカーあまりしかありません。例えばナパのステージコーチ・ヴィンヤードはそれだけで1300エーカー(うちブドウが植えられているのは600エーカー)ありますから、いかにサンタ・クルーズ・マウンテンズが小さい生産者から成り立っているかわかると思います。

ただ、ここは太平洋に面していて冷たい空気が直接当たるのと、標高の高さによる日照の良さなどがあり、冷涼系のシャルドネやピノ・ノワールに関してはソノマ・コーストなどにも負けないポテンシャルがある地域だと思います。また、冷たい空気から遠い山頂付近で作られるカベルネ・ソーヴィニヨンでも、リッジのモンテベッロなど世界に名だたるワインができています。個人的にも注目している産地の一つであり、このコレクションも興味深いものになっています。

シャルドネでは日本にも輸入されているマウント・エデン(Mount Eden)とリース(Rhys)のホースシュー(Horseshoe)が選ばれています。もう1つのビッグ・ベイスン(Big Basin)も以前は輸入されていましたが最近は見かけませんね…

ピノ・ノワールで選ばれているトーマス・フォガティ(Thomas Fogarty)も輸入されていますが、ピノ・ノワールは見たことないような。残りのクロ・ドゥ・ラ・テック(Clos de la Tech)とパータージュ(Partage)は初めて見ました。パータージュのサヴェリア(Saveria)はヴィナスで92点ついているようです。58ドルと比較的価格も抑えめで気になるワインです。

カベルネ・ソーヴィニヨンではリッジのモンテベッロにキャスリン・ケネディはこの地域の老舗。この2本だけで500ドル近くになるので、実はこの9本セット、かなりお得な価格になっています。もう一つのエデン・エステート(Eden Estate)はマウント・エデンの近くにある畑のようです。このワインも気になります。

Date: 2019/1025 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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ソノマの北部で大規模な山火事が発生し、約1万エーカーが既に燃えたと推察されています(Kincade Fire: Sonoma County blaze explodes to 10,000 acres, forces evacuations | abc7news.com)。
Kincade Fire
キンケイド(Kincade)ファイアーと呼ぶこの火事は、ソノマのガイザーヴィル(Geyserville)付近で起こっており、西に進んでいます。幸い一時に比べて風は収まってきているようですが、ガイザーヴィルでは避難勧告が出ています。AVAで言うとアレキサンダー・ヴァレーからドライ・クリーク・ヴァレーにかけて影響が出ている可能性があります。

折しもPG&Eは大規模山火事の恐れありとして計画停電を実施しており、この地域も停電中でした。火元などについては明らかになっていません。
Date: 2019/1024 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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ヘレン・ターリーやハイジ・バレットなど著名なワインメーカーに女性は珍しくないし、日本人でもフリーマンのアキコさんや、シックス・クローヴズの平林園枝さんなど、カリフォルニアのワイン業界は女性に開かれているような気がします。

しかし、実際にはカリフォルニアにおいて女性ワインメーカーは10パーセント、女性のワイナリーオーナーは4パーセントに過ぎないのだそうです。米国の他の産業と比べて男女差が大きなこの状態を変えたいと、エイミー・ベス・クックという人がウーマン・オウンド・ワイナリーズ(WOW)という団体を2年前に立ち上げました(Women-owned wineries on the rise in Wine Country - SFChronicle.com)。

活動は大きく分けて2つ。女性ワインメーカーや女性オーナーのディレクトリーを作ることと、それらのワイナリーのワインの頒布会です。

今年の2月にはイベントを開催し、女性オーナーなどとのディナーとディスカッションを行いました。

2020年には正式な業界団体の立ち上げも目指すとのこと。地道な活動が続きます。
Date: 2019/1023 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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PG&Eが再び計画停電を予定しています(PG&E Says 209,000 Customers in 16 Counties May Have Power Turned off ...)。

今回は水曜日(23日)午後開始で16郡の20万世帯が対象となりそうです。ナパやソノマ、レイク、シエラ・フットヒルズといったワイン産地も対象に入っています。

停電は数日間続く可能性があります。ワイナリー自体にとっても大変ですが、観光で行く場合もお目当てのワイナリーが開いていない可能性もあるので、よく情報を収集する必要があります。

計画停電の効果はわかりませんが、とりあえず今年は今の所大規模な山火事は発生していなさそうです。
Date: 2019/1020 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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「ワイン・ピナクル・アワード」という、マスター・オブ・ワインやマスター・ソムリエなどの有識者の投票のみで決める賞が今年初めて開催され、10月10日にシンガポールで授賞式が行われました。有識者の投票で選ぶという点では映画のアカデミー賞と同様であり、こういったスタイルの賞が今後受け入れられるのかも気になるところです。
ワインピナクルアワード
最も優れたワイナリーに贈られるグランド・ジュリー賞はドメーヌ・コシュ・デュリが受賞しました。

その他の受賞者は以下の通り。

Grand Jury Award: Domaine Coche-Dury
Best 1996 Vintage Bordeaux: 1996 Château Latour, Pauillac, France
Best 1999 Vintage Barolo: 1999 Giacomo Conterno, Monfortino, Barolo Riserva DOCG, Italy
Best 2002 Vintage Champagne: 2002 Salon, Cuvée 'S' Le Mesnil Blanc de Blancs, Champagne, France
Best 2005 Vintage Burgundy Red: 2005 Domaine de la Romanée-Conti, Romanee-Conti Grand Cru, Côte de Nuits, France
Best 2005 Vintage Rioja/Ribera Del Duero: 2005 Vega Sicilia, Unico Gran Reserva, Ribera del Duero, Spain
Best 2007 Vintage Tuscan Red: 2007 Tenuta San Guido, Sassicaia Bolgheri, Tuscany, Italy
Best 2008 Vintage Australian Shiraz/Syrah: 2008 Henschke, Hill of Grace Shiraz, Eden Valley, Australia
Best 2008 Vintage Burgundy White: 2008 Domaine Coche-Dury, Corton-Charlemagne Grand Cru, Côte de Beaune, France
Best 2009 Vintage Cabernet Based California Wine: 2009 Screaming Eagle, Cabernet Sauvignon, Napa Valley, USA
Best Recent Release: New World Pinot Noir: Ata Rangi, Pinot Noir, Martinborough, New Zealand
Best Recent Release: Non-Burgundy Chardonnay: Kumeu River, Mate's Vineyard Chardonnay, Auckland, New Zealand
Best Recent Release: Non-Champagne Sparkling Wine: Gusbourne Brut Reserve, Kent, England
Best Recent Release: Sauvignon Blanc: Didier Dagenneau, Pouilly Fume Silex, Loire Valley, France
Best Recent Release: South American Red: Almaviva, Puente Alto, Chile
Hidden Treasure: Australia: Tyrrell's Wines, Vat 1 Semillon, Hunter Valley, Australia
Hidden Treasure: Bordeaux: Château Roc de Combe, Bordeaux, France
Hidden Treasure: Burgundy: Mark Haisma, Bonnes-Mares Grand Cru
Hidden Treasure: Piedmont: G.D. Vajra, Petracine Langhe Riesling, Piedmont, Italy
Best Chinese Red: Ao Yun, Yunnan, China
Best Organic/Natural Wine Of The Year: Domaine Marcel Lapierre, Cuvée Marcel Lapierre, Beaujolais, France
Best Rosé In The World: Lopez de Heredia Vina Tondonia, Gran Reserva Rosado, Rioja DOCa, Spain
Black Swan Of The Year (Most Thought Provoking Wine): Gravner, Anfora Pinot Grigio Venezia Giulia IGT, Friuli-Venezia Giulia, Italy
Best Friend Of The Earth (Most Environmentally-Conscious): Miguel Torres, Familia Torres, Spain
Best Young Winemaker Of The Year (Under 40): Morgan Twain-Peterson MW (Mr.), Bedrock Wine Co., USA
Top Wine Influencer (Under 45): Pascaline Lepeltier MS (Ms.), Racines NY, USA
Unsung Hero: István Szepsy (Mr.), Szepsy, Hungary

カリフォルニアワインに関連するのはあまりありませんが、2009年のカベルネ・ベースのベスト・カリフォルニアワインはスクリーミング・イーグル、シェーファー ヒルサイド・セレクト、ダイヤモンド・クリーク ヴォルカニック・ヒル、 スタッグス・リープ・ワイン・セラーズ CASK23、シャトー・モンテリーナがノミネートされ、スクリーミング・イーグルが受賞しました。

また、40歳以下のベスト・ワインメーカー・オブ・ザ・イヤーにはベッドロックのモーガン・トウェイン・ピーターソンが選ばれています。

ユニークな賞としては「ブラック・スワン」という賞があり、最も挑発的なワイナリーが選ばれました。残念ながら受賞にはいたりませんでしたが、アルノー・ロバーツがノミネートされています。

Date: 2019/1019 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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UCデーヴィスを卒業し、リトライなどで修行した平林園枝さんのブランド「シックス・クローヴズ」の2ヴィンテージ目が入荷してきています。

最初のヴィンテージはソノマの中井章恵(あきよし)さんの畑のシャルドネでした。これもエレガントでよかったのですが、カリフォルニアのシャルドネとしては驚くほどの酸の強さがあったので、万人向けというより、酸っぱいシャルドネ好きな人向けといった感がありました。

ナパでスター生産者スティーブ・マサイアソンのリンダ・ヴィスタのシャルドネとなった2ヴィンテージ目はバランスもよくミネラル感もあり、エレガント系のシャルドネとして相当のレベルになりました。「濃くて甘い」シャルドネではありませんが、とても美味しいです。

ソノマのペタルマ・ギャップのカラ・ヴィンヤードのブドウを使ったピノ・ノワールもラインアップに追加。こちらもバランスのよい味わいです。

新しくなったラベルも素敵で女性に喜ばれそう。



Date: 2019/1018 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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ナパの栽培者団体ナパ・ヴァレー・グレープグロワーズは今週、今年のワイン用ブドウの収穫が75パーセント終了したと発表しました(Napa Countys wine grape harvest is about 75 percent completed)。

今年は6月が2006年以来、8月が2003年以来という高温に見舞われましたが、秋に入ってからは順調でほとんど問題のない収穫となっています。

100パーセント自社畑のブドウを使っているトレフェセンでは既に90パーセント収穫を終了。先週はこのブログでも報じたPG&Eの大規模計画停電がありましたが、発電機を準備して乗り切ったとのことです。

クリフ・レイディは今週、すべての収穫を終了。気候がマイルドだったので、最後数日間収穫を遅らせて、味わいがさらに良くなったと今年の出来に自信を示します。

ランチョ・キミレスという栽培家は現在約半分を収穫。カベルネ・ソーヴィニヨンの収穫真っ最中とのことです。

停電を除いては大きな問題の起こっていない今年の収穫、2018年に続いていい年になりそうです。
Date: 2019/1017 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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人気ワイン漫画『神の雫』全44巻がデジタル漫画としてフル英語化されると発表されました(Beloved 'Drops of God' Wine Manga Gets Full English Translation)。
神の雫
まず過去に英語化された8巻分と新たに訳した3巻分が配信開始しました。

欧米でも「グラフィック・ノベル」(ストーリー漫画の意味でしょうか)の人気は上がっており、グルメ系の出版も好調なことからこのタイミングでの英語化になったようです。

また、これとは別に「神の雫ワインサロン」が発表されています。これは会員を対象としたワインの頒布会のようなもので、作者の樹林姉弟が選んだバランスが取れて食事に合うワインを提供するとともにワインゲームというアプリを使ってブラインドテイスティングで能力を高められるようです。今月、ナパとビバリーヒルズで発表会を開きます。

ワイナリーのパートナーとしてはマサイアソン、マシカン、カンパイ、ノリア、マリエッタ、スクライブが発表されています。
Date: 2019/1015 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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ワイン・エンスージアスト誌が2019年のパーソン・オブ・ザ・イヤーを発表しました(Wine Enthusiast's 2019 Wine Star Award Winners | Wine Enthusiast Magazine)。選ばれたのはナパ・ヴァレー・ヴィントナーズのプレジデント兼CEOのリンダ・ライフ(Linda Reiff)。1995年から長らく任に着いています。
Linda Reiff
リンダ・ライフの3本柱は農業保護区としてのステータスを維持すること、ナパ・ヴァレーのブランドを守ること、住民のコミュニティーを強化するために資金集めをすること。近年ではナパ・ヴァレー・グリーンと呼ぶサステナビリティのプログラムを作り、2020年までに100%サスティナブルになることを目指すなどの功績があります。
Date: 2019/1013 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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米国のワイン市場で今一番注目されているのは「缶入りワイン」だと言っても過言ではありません。2018年から2019年にかけても年間34%という急成長を遂げています。このブログでも何度となく取り上げているので、最近の記事から2本挙げておきましょう。
急成長遂げた缶入りワイン(2019/5/24)
急増止まらない缶入りワイン(2019/8/15)

これに伴い、日本にも少しずつ缶入りワインが輸入されるようになってきています。その一つが今回紹介する「ヘッド・ハイ」。 Price Family Vineyards & Estates ディレクター・オブ・セールスのクリス・マットソンが来日して、紹介しました。

ヘッド・ハイのオーナーはビル・プライス。実業界で成功した後、ワインビジネスに入り、デュレルやギャップス・クラウンといった畑を所有するほか、キスラーやスリー・スティックスといったワイナリーのオーナーでもあります。また、サーフィン好きでもあり、ヘッド・ハイとは頭の高さの波というサーフィン用語から付けられています。当初はスリー・スティックスの中のワインの名前として付けられたヘッド・ハイでしたが現在は独立しています。

今回ヘッド・ハイで輸入されるようになったワインは2つ。一つはピノ・ノワール ソノマ・カウンティ 2018(3600円)。もう一つは250ml缶入りのピノ・ノワール カリフォルニア NV(900円)です。

スリー・スティックスがハイエンドのピノ・ノワールを目指しているのに対し、ヘッド・ハイはコストパフォーマンスの高いピノ・ノワールを提供しようとしています。畑はビル・プライスが所有するデュレルやギャップス・クラウンなどのブドウを使っています。

クリス・マットソンによると、缶入りワインはミレニアル世代と呼ばれる若い人たちに受け入れられています。手軽さや価格、アウトドアのライフスタイルにマッチしているということに加え、分量が適切だということも理由になっています。また、缶の方がリサイクルしやすく地球環境にも優しいと言われています。

ワイン造りの観点からすると、缶入りワインはボトルのワインと違うアプローチが必要になるといいいます。ワインを缶に入れるためにはワインの酸との作用を防ぐために缶の内側にライナーを入れますが、現在のところこれがどれだけ保つのかは不明とのこと。一応保証としては5カ月程度なので、熟成には不向きです。缶入りワインは基本的に買ってすぐ飲まれることを想定しているのでそれで美味しいワインにする必要があります。また、ミレニアル世代は缶入りワインをグラスに移すことなく直接飲むことが多いので、それで美味しいことも必要です。

急増止まらない缶入りワイン(2019/8/15)の記事で書いたように、コンシューマーは250mlのサイズを好むという調査結果が出ています。米国ではこのサイズは4本パックで売らなければいけないという制限がありますが、現在TTBにはたらきかけてこの制限を変えようとしているところです。ヘッド・ハイは規制緩和も見越して最初から250ml専用で作っており、規制のない日本ではパックではなく缶単位で販売します。

ボトルとの造りの違いで見ると、ボトルのヘッド・ハイは新樽も3割り程度使っていますが、缶入りの方は新樽は使っていないとのこと。果実味を中心にした味に仕上げています。また、缶入りはヴィンテージを入れていません。実際には現在販売しているのは2018年のものですが、ヴィンテージを入れると逆に「若すぎる」と思われるのを避けたいのだそうです。

実際に試飲してみましょう。写真で右がボトルのヘッド・ハイ、左が缶のヘッド・ハイです。明らかに色が違います。味わいもボトルの方が濃くしっかりとしていて、普通にワインを評価するならばやはりボトルのものの方が美味しいと思う人が多いでしょう。

ただ、缶入りの方もチャーミングな造りで、普通にピノ・ノワールとして美味しいワインです。また面白いのが缶から直接飲むとまた味わいが変わること。当然香りは感じにくくなりますが、逆にタンニンなどのストラクチャーは缶から飲むほうがはっきりします。ボトルと同じ味わいのものを缶から直接飲んだら重すぎるだろうと思います。缶から直接飲むのは「意外と美味しい」というのは一つの発見でした。実は、このワインをアカデミー・デュ・ヴァンの授業の後にも試飲してもらったのですが、そこでも同じような感想でした。

缶入りのヘッド・ハイは250mlで900円。750mlに換算すれば2700円です。2000円台のピノ・ノワールとして納得できる味わいですが、缶入りワインの中では少し高めの値付け。ただ缶入りワインでちゃんとしたピノ・ノワールはまだほとんどないので、そこは大きな魅力になるでしょう。余談ですが、米国の価格は4本で28ドルなので1本7ドル。日本のインポーター価格はずいぶん頑張っていますね。

いろいろな意味で今後が気になるワインです。

Date: 2019/1012 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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リッジの前ワインメーカーであるポール・ドレーパーがブログで、リッジが今も使っている珍しいテクニックを紹介しています(Submerged Cap Fermentation - Ridge Vineyards)。
サブマージドキャップ
赤ワインの発酵過程において、ブドウの果皮は発生する二酸化炭素の泡で浮かび上がり、上に溜まります(果帽)。それをそのまま置いておくと、果皮と果汁の接触が不十分で、色や味わいがあまり出なくなります。

そのため、普通は果皮を上から押して中に沈める「パンチダウン」、あるいは果汁を下から抜き取り、上からかける「ポンプオーバー」をします。

ピノ・ノワールなどは果汁に優しいパンチダウン、カベルネソーヴィニヨンなどはより味を引き出すポンプオーバーを使うことが多いようです。

リッジの使う「サブマージド・キャップ」は上から網で押さえつけて果帽を浮かび上がらないように沈める方法。昔からフランスで使われていたそうですが、現在はあまり聞かない方法です。

これを使い始めたきっかけがユニーク。最初のワインメーカーだったデイブ・ベニオンが、発酵の期間中に奥さんと2週間旅行に行くため、これを導入したとのこと。

当初、リッジのメンバーはスタンフォード大学の研究所で働いており、毎日ワイナリーに来られなかったため、その後もこのテクニックは使われていました。

その後、カベルネソーヴィニヨンは、よりタンニンをコントロールしやすいポンプオーバーに変わったものの、ジンファンデルでは今でも一部、このテクニックを使っているそうです。
Date: 2019/1011 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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PG&Eによる大規模計画停電でワイナリービジネスにも大きな影響が出ています(What mass power outages mean for California wineries - Decanter)。

収穫の真っ只中の状況で、ブドウのプレスやタンクに入れるためのポンプ、パンチダウン、タンクの温度管理など、現在の醸造に電気は欠かせないものになっています。

今回の計画停電は突然起こったわけではなく、7月頃からアナウンスされていたため、発電機を用意しているワイナリーが多かったようです。ただ、ソノマのあるカスタム・クラッシュではそのレンタルだけで月に100万円以上かかるとのことで、かなりの出費になりそうです。

観光客用のテイスティングルームを閉じたワイナリーも多数あります。ロバート・モンダヴィもその一つ。観光客を大事にしてきた同ワイナリーとしては苦渋の決断だったでしょう。

この週末にワイナリーに行く計画の人はまずオープンしているかを確認してからでかけましょう。
Date: 2019/1010 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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カリフォルニアの電気会社PG&Eは10月9日、山火事の恐れが高まったとして大規模な計画停電を開始しました(PG&E: Massive power shut-off to hit 800,000 customers, could extend nearly a week - SFChronicle.com)。最大で1週間近く停電する可能性があります。

2017年にナパやソノマなどで起こった大規模山火事からちょうど2年経ちました。火事の火元については、乾燥した木が大風で倒れ、それ電線を切断し、そのときの火花が燃え移ったとされています。PG&Eはこの問題で破綻寸前にまで追い込まれました。

今回、高温と強風という条件が重なり、大規模山火事が再び発生する恐れが高まったとして、計画停電に踏み切ったわけです。
地図
エリアにはナパやソノマ、またシリコンバレーの大半が含まれており、日常生活のみならず、経済活動にも大きな影響がありそうです。
Date: 2019/1009 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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ソノマのチョーク・ヒルでパーカー100点など非常に評価の高いボルドー系ブレンドを作るヴェリテ(Vérité)がワイナリーを新築することを明らかにしました(Verite Announces a New Home for Its Iconic Wines)。

住所はヒールズバーグ(Healdsburg)ですが、ヒールズバーグの街からは車で約20分かかるチョークヒル・ロード沿いです。現在のワイナリーの隣になります。

ワインメーカーであるピエール・セランの息子で、親会社であるジャクソン・ファミリー・ワインズ副社長のニコラス・セランが設計し、ケークブレッド・セラーズやシルバーオークなど数多くのワイナリー建築を手掛けているテイラー・ロンバルド・アーキテクツが建築を請け負います。

ワイン造りに影響しないよう、建築は3段階に分かれます。まずは2020年に完成予定の樽の貯蔵庫とホスピタリティ・スペース。次がワイン醸造設備、最後がワインメーカーのテイスティングとブレンディング用設備やレセプション・スペースとなります。


余談ですが、今年、ヴェリテのセミナーに出席する機会を2回も逃してしまって残念無念。次の機会は逃したくないものです。
Date: 2019/1008 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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ナパ・ヴァレーの生産者団体ナパ・ヴァレー・ヴィントナーズ(NVV)が75周年を迎えました(Napa Valley Vintners Celebrates 75th Anniversary with Oral History Project)。同時にNVVオーラル・ヒストリー・プロジェクトと呼ぶ、ナパの歴史を生産者のインタビューで残すプロジェクトにUCバークレーのバンクロフト・ライブラリーと取り組んでいることも明らかにしました。

1944年に作られたナパ・ヴァレーのサイン

オーラル・ヒストリー・プロジェクトでは12人の生産者にインタビューして、歴史を振り返っています。その中には今年亡くなったシェーファーの創設者ジョン・シェーファーも含まれています。「Napa Valley Vintners | UC Berkeley Library」からインタビューのテキストを読むこともできます。

Date: 2019/1006 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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ワイン・エンスージアスト誌が2019年のベストバイトップ100を発表しています(Top 100 Best Wine Buys of 2019 | Wine Enthusiast Magazine)。

栄えある1位に輝いたのは名門ベリンジャーのピノ・ノワール ファアンダーズ・エステート2017。ベリンジャーのラインアップの中では一番安い普及ラインのワインです。ワイナリーのあるナパではなく、様々な地域のブドウでできています。





日本に入っているものだと、5位にスリー・シーヴスのカベルネ・ソーヴィニヨン2017。スリー・シーヴスはジョエル・ゴットなどの業界有力者3人が集まって作ったブランドでコスパには定評があります。私も1000円台のお薦めカベルネ・ソーヴィニヨンとして以前紹介しています。


興味深いのはトップ10に缶入りワインや箱入りワインが入っていること。やはりこの2つのジャンルはあなどらないと、同誌も見ているのでしょう。

Date: 2019/1004 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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レイヴェンズウッド(Ravenswood)の創設者であるジョエル・ピーターソン(Joel Peterson)が、同ワイナリーのライブラリー・ワインを放出することを発表しました。10月15日に販売を開始し、22日に終了するとのこと。

今年、レイヴェンズウッドのブランドがコンステレーション・ブランズからガロに売却されたのに伴い、レイヴェンズウッドはソノマのワイナリーやテイスティング・ルームをクローズし、ジョエル・ピーターソンもレイヴェンズウッドからは完全に離れた形になっています。現在はワンス・アンド・フューチャー(Once and Future)に専念しています。
Once and Future

レイヴェンズウッド時代のジョエル・ピーターソンは熟成したワインを楽しめるようにするため、毎年5~10ケースのワインを保存していました。その後、ワイナリーをコンステレーション・ブランズに売却したわけですが、数年前にコンステレーションの会計士が「余分な」ワインについてジョエル・ピーターソンに問い合わせてきました。不良在庫として処分したいというのがその目的でしたが、それがジョエル・ピーターソンが熟成用に置いていたワインのことでした。

ジョエル・ピーターソンはそれらを自身で買い取り状態を確かめ、リコルクし、そして今回販売にこぎつけたわけです。どんなワインが出てくるか楽しみです。記念の年のワインは買ってしまうかも。

ちなみに、レイヴェンズウッドのフラッグシップとして知られていたのがオールド・ヒル・ランチのジンファンデルですが、ワンス・アンド・フューチャーと、息子のモーガン・ピーターソンのベッドロックも2018年からオールド・ヒル・ランチのワインを作り始めています。
Date: 2019/1003 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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ワイナリーの建物は比較的地味な色味のものが多いのですが、色も建築認可の条件の中に入っています。ナパでは「アース・トーン」であるということが条件とされていますが、あるワイナリーが発端となってより細かい指定をすることになりました(Unhappy with some recent color choices, Napa County to define 'earth tones' for wineries)。

問題になったワイナリーは「アッシュ&ダイヤモンド(Ashes & Diamonds)」。
ashes diamonds
このように白にビビッドな黄色が入ったデザインです。


上から見ると横のワイナリー(醸造設備)の方がさらに白が目立つようです。

ここは2017年に作られた新しいワイナリーで、ワイナリーはちゃんと認可を得て作られたのですが、色が白すぎて景観と調和しないという苦情が来ているとのこと。

このような問題を避けるために今後は「アース・トーン」についてカラー・パレットで具体的に範囲をしていするようにするそうです。
Date: 2019/1001 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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napa wine fair
ナパ・ヴァレーのワインを気軽に楽しもうという「ナパワインフェア2019」が2019年10月1日~11月30日の2カ月間、開催されます。飲食店やワインショップが対象で、飲食店ではナパのワインをグラスで楽しめるようにし、ワインショップではナパのワインを4種類以上用意します。ショップでは購入特典として、チーズペアリングのコツとレシピの載ったポスターを用意します(上の写真)。

参加店舗は「NAPA WINE FAIR 2019~開催店~ | ナパヴァレー・ヴィントナーズ」をご覧になってください。東京だけでなく全国の店舗が含まれています。

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