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Date: 2020/0830 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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duvin
アカデミー・デュ・ヴァンの秋冬コースの募集が始まりました。今回は3つのコースを予定しています。

カリフォルニアの超一流ワイナリー」は3期目。コルギン、シュレーダー、ハーラン・ファミリーと無茶苦茶豪華なラインアップ。カリフォルニアのカベルネ・ソーヴィニヨン系の頂点を極められる講座です。おそらく4期まででで講座内容は変えると思うので、残り少ないチャンスですよ。

対決・カリフォルニアの名門ワイナリー」は新講座。これまでの「名門ワイナリー」と「続・名門ワイナリー」を足して2で割ったような内容です。モンダヴィとオーパス・ワン、カレラとオー・ボン・クリマのように、1回に複数のワイナリーを対決させる内容。

品種で学ぶカリフォルニアワイン」も新講座。ありそうでなかった品種ごとに様々な地域のワインを試飲する内容となっています。

新しい講座2つも試飲内容は充実しています。というか基本的には自分が飲みたいワインを試飲するというのがこの講座の基本方針なので、試飲するワインはいいものを選んでいます。その分、価格はちょっと高めになってしまいますがご容赦を。

新型コロナの影響で、飲み会などは開きにくい状況がまだまだ続きます。多くの会社で「会食禁止」になっていると思います。ワインスクールでも講座の後のクラス会などはなかなかできませんが、教室でみんなで同じワインを飲んで感想を言い合うのも、貴重な機会だと思います。換気や飛沫対策などスクール側もかなり気をつけて運営していますので、安全にいろいろなワインを飲みましょう。

講座紹介はこちらから
Date: 2020/0827 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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サンタ・バーバラにアリソス・キャニオン(Alisos Canyon)という新しいAVAが8月25日、誕生しました(‘A New Niche to Taste and Explore’: Alisos Canyon is America’s Newest Appellation | Wine Enthusiast Magazine)。
アリソス・キャニオン
サンタ・バーバラは北にサンタ・マリア・ヴァレー、南にサンタ・イネズ・ヴァレーがあり、どちらも太平洋からの東西方向に伸びる谷によって冷たい風が吹き込む冷涼な地域となっています。

アリソス・キャニオンはこの二つに挟まれた非常に小さな地域ですが、ここも同様に太平洋からの風を通す「チャンネル」があり、冷涼です。ただ太平洋からの距離はそれなりにあるので、ピノ・ノワールよりはシラーやグルナッシュなどローヌ系品種に向く地域となっています。現在のところ5800エーカーのうち、240エーカーほどがブドウ畑になっています。
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このようになだらかな丘が連なったような地形です。

また、ここは砂時計のようにさらさらした砂地の土壌が多くあります。こういった砂地の土壌はフィロキセラが住めないので、自根での栽培も可能になっています。

AVA設立に奔走したのがトンプソン・ヴィンヤーズ(Thompson Vineyards)のオーナーであるノア・ロウルズ。2014年に購入した後、ここの価値に気づいて、地元の有名人でサンタ・リタ・ヒルズなどのAVA認定に携わったウェス・ヘーガンなどを巻き込んで今回の認定にいたりました。

現状、それほど有名なワイナリーはありませんが、トンプソンのブドウはテンスレーなどいくつものワイナリーが購入しています。また、シネ・クア・ノン(Sine Qua Non)のマンフレッド・クランクルはトンプソンの畑の裏にある「ザ・サード・ツイン(The Third Twin)」という畑を2010年に購入。2014年からシラーを使っています。

明るいニュースの少ない昨今、久しぶりのいいニュースでした。
Date: 2020/0822 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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マップ
LNUライトニング・コンプレックスなどの山火事の続報です。現在の様々な山火事によって、北カリフォルニアと中央カリフォルニアにおいて少なくとも5人が亡くなり、500以上の建物に損害が出ており、約70万エーカーが延焼しています。このうち22万エーカーがナパ・ソノマのLNUライトニング・コンプレックスです。この火事の包囲率はまだわずか7%ですが、それでもほぼゼロだった昨日までと比べると前進しています。

いいニュースとしては、まだ煙はそれほどひどくないようで、ソノマのロシアン・リバー・ヴァレーやグリーン・ヴァレーあたりでは収穫を進めているワイナリーもあります。

一方で、トランプ大統領は、山火事を州が落ち葉などの清掃をしなかったせいだと非難しています。なお、カリフォルニアの森林の約半分は国家が所有して色、州が所有しているのはわずか3%という情報もあります。

Date: 2020/0821 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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熱波の後の雷によって起こった山火事が大変な勢いとなっています。火事はカリフォルニアの様々な地域で発生していますが、中でもソノマが一番危ない状況になっています。
map
ロシアン・リバー・ヴァレー北部やドライ・クリーク・ヴァレーなどに近いヒールズバーグ(Healdsburg)では避難命令が出ています。ヒールズバーグは昨年の山火事でも真っ先に避難命令が出たところであり2年連続で避難命令となりました。

ワイナリーではスパークリング・ワインのコーベル(Korbel)が大きな影響を受けています。スパークリング・ワインの収穫時期は早く、9月上旬までには終わる予定ですが、避難命令で中断しました。このほかギャリー・ファレル(Gary Farrell)なども火事のエリアから近いワイナリーとして挙げられています。

ナパではレイク・ヘネシーの東側で火事が起こっており、プリチャード・ヒルのシャペレー(Chappellet)やコルギン(Colgin)などが比較的近いワイナリーですが、今のところ危ない状況にはなっていません。

なお、ソノマの火事はワルブリッジ・ファイアー(Walbridge Fire)、ナパはヘネシー・ファイアー(Hennessey Fire)などの名称がありますが、今回火事の数が多く、総称としてはLNU(レイク・ナパ・ユニット)ライトニング・コンプレックスと名付けられています。(当初ナパの方だけLNUライトニング・コンプレックスとしていましたが、ワルブリッジ・ファイアーも含めて呼ばれていることが判明したので修正します)

また、今回一つ大きな問題になりつつあるのが消防士の不足です。カリフォルニアは秋の山火事シーズンに一時雇いの消防士を契約しますが、実はその中には服役囚からの消防士が少なからずいます。ところが現在多くの刑務所で新型コロナのクラスターが発生しており、服役囚の消防士がほとんどいない状態なのだといいます。

そうでなくても不安要素の多かった今年の収穫、どうなってしまうのかかなり心配です、
Date: 2020/0818 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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「『ロマネ・コンティ』と同じ製法で仕込んだピノ・ノワールが2300円台!」という記事がバズっているようです(あえてリンクは張っていません)。掲載されているサイトは「Tabi Labo」です。Tabi Laboといえば数年前にパクリ記事などでたびたび「炎上」騒ぎを起こしていましたが、最近はそういう話題もなく、どうなっているかよく知らなかったのですが……。

2007 Romanee Conti Wine Bottle at Valentino"2007 Romanee Conti Wine Bottle at Valentino" by Muy Yum is licensed under CC BY-NC-ND 2.0


この記事の主旨としては、コスパのいいピノ・ノワールは何かということで、ソムリエのお薦めを聞いています。

紹介されているワインは「アルタ・マリア」のピノ・ノワール。このブログでも何回もお薦めとして掲載したワインです

「鼻を近づけると紅茶葉のようでもあり、森の中にいるようなグリーンと土のニュアンスがする」と表現されており、このニュアンスは「全房発酵」によるものだとしています。

そして全房発酵について「ちなみに、一度はその名を聞いたことがあるはずの“ブルゴーニュの女王”、あの『ロマネ・コンティ』も同じ製法だって知ってた?」と書いており、これがタイトルにつながっているわけです。

確かに全房発酵(ホールクラスター)を100%あるいはそれに近いレベルで使うワイナリーはそれほど多くはありません。それでもいくつかは思い付きます。ブリュワー・クリフトン、カレラは昔から全房ですし、サムサラ、ドメーヌ・ドゥ・ラ・コート、サンディなどもあります。100%でなければ数限りなくあります。ホールクラスターをほとんど使っていなかったスティーブ・キスラーも、今のオキシデンタルではその比率を増やしています。むしろ、畑やヴィンテージによって変えているというのが普通でしょう。

もちろん、これらはすべてカリフォルニアに限った話なので、他の国のワイナリーでももちろんホールクラスターを多く使うところはたくさんあると思います。

つまり、この記事で一番問題だったのは記事の内容そのものというよりも、それほど珍しくない共通点について「ロマネコンティと同じ」とタイトルで持ってきたところだと思います。

ちなみに、昔からカリフォルニアのピノ・ノワールでロマネコンティと比較されたり引き合いに出されてきたものというと、カレラとオー・ボン・クリマがあります。

カレラは「ロマネコンティ」の畑で枝を拾ってきて、それを畑に植えた「ロマネコンティ」と同じブドウを使っていると言われていました。現在はそれに対しては否定あるいはノーコメントということになっていますが、創設者のジョシュ・ジェンセンはこの問題について、次のようにも語っています。

クローンがロマネ・コンティから来たものであろうがあるまいが、それだけでロマネ・コンティのワインと同じ味のワインが造れるわけじゃない。単に、にせものではなくて、素性の知れた、よく選別されたピノ・ノワールの苗を手に入れたということにすぎない。野球のピッチャーにたとえれば、ツーストライクを取ってあとはとどめをさすだけだという心境ではなくて、まだ相手はバッターボックスに立っただけで何でもありという感じかな。
『ロマネ・コンティに挑む―カレラ・ワイナリーの物語』(マルク・ド・ヴィリエ著、阪急コミュニケーションズ)より

オー・ボン・クリマは堀賢一さんが著書の中で、マスター・オブ・ワインの受験生たちがブラインドで飲んでロマネコンティかもしれないと思ったワインがイザベルだったというエピソードを紹介していたのがきっかけで日本の人気が上がりました(細かいところは違っているかもしれません)。

おそらく、カレラも、オー・ボン・クリマもアルタ・マリアもロマネ・コンティになぞらえられることは期待も希望もしていないでしょう。カレラはカレラ、オー・ボン・クリマはオー・ボン・クリマ、アルタ・マリアもアルタ・マリアの良さがあると思います。

いろいろ与太を書きましたが、ともかくアルタ・マリアが非常にコスパが高く、いいピノ・ノワールであるのは事実です。今回の騒ぎでなかなか入手できなくなってしまうかもしれませんが。

なお、この記事、インポーターとのタイアップやステマの類ではないことを確認しております。





Date: 2020/0818 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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カリフォルニアには、デスバレーで地球最高気温を記録するなど「70年に一度」の熱波が押し寄せています。先週末にはナパやソノマなどを含むサンフランシスコ近辺で大規模な雷雨も発生。雷によって山火事も起こっています。
雷
(写真はイメージです)

カリフォルニアでは8月中旬から記録的な熱波が起こっており、各地で連日華氏100度(摂氏約38度)を超える高温が続いています。雷雨で1回は気温が下がったものの、また熱波は押し寄せており、現在の予報では8月29日ころまで続く見通しとのこと。

これらによって電力不足も起こっており2001年以来と言われるエネルギー危機の状態でもあります。電力会社は「ローリング・ブラックアウト」と呼ぶ一部地域の計画停電を実施しており、熱波の中で熱中症など健康への影響も懸念されます。

ワインの面からみると、これだけの熱波が続くと、シャルドネやピノ・ノワールといった比較的収穫時期の早いブドウでは酸が早く落ちてしまうことが懸念されます。コロナウイルスで収穫も多難が予想される今年、悩みが尽きない年になりそうです。
Date: 2020/0815 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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南アフリカのワイン産業がコロナ禍で壊滅の危機に瀕しています。「Enough Is Enough, Says Wine Industry Body On Alcohol Ban | wine.co.za」では「もうたくさん」という業界の悲痛な叫びが書かれています。洒落でも冗談でもなく、本当に危ない状況であり、一刻も早い対策が望まれています。

コロナ禍において、南アフリカではアルコールの販売が禁止された状態が続いています。アルコールによる交通事故や暴力などがコロナによる医療崩壊に拍車をかけることを恐れてのことです。それだけでなく、アルコールの輸出までも5週間禁止されていました。

これによって80を超えるワイナリーと350を超えるブドウの生産者が廃業に向かう見込みであり、その数はさらに増えていきそうです。

まずは何よりも、アルコールの販売禁止が解けるのが必要ですが、輸出の回復も同じくらい重要です。我々にできるのは南アフリカのワインを買って飲むくらいですが、少しでも力になりたいと思います。

南アフリカワイン、品質の高さで定評があるのはシュナン・ブランです。今では祖国フランス以上に素晴らしいシュナン・ブランができる国と言われています。

赤ワインでは、南アフリカで生まれた品種ピノタージュ(ピノ・ノワールとサンソーの交配)があります。ピノタージュそれ自体は、ピノ・ノワールの赤系果実味に野性味を加えたような感じで、むちゃくちゃ美味しいというわけではないですが、最近はピノタージュを中心にカベルネ・ソーヴィニヨンなどをブレンドした「ケープ・ブレンド」の人気が上がっています。

このほか、もちろんボルドー系のワインもたくさん作られていますし、シャルドネなどもあります。また、瓶内二次発酵で作られる発泡ワインは「キャップ・クラシック」と呼ばれています。

南アフリカワイン、どこで買ったらいいかわからないかもしれませんが、カリフォルニアワインに強い柳屋は南アフリカワインにも力を入れています。
柳屋の南アフリカワインはこちらから

こちらのスパークリングのセットもおいしそうです。

Date: 2020/0814 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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缶入りワイン
缶入りワインの急増がとまりません。ワインスペクテーターの記事「Canned Wine Sales Are Bursting at the Seams | Wine Spectator」によると2020年7月11日までの52週の売上は1億8360万ドル。記事には68%の伸びとあって、上のグラフの数字と合っていませんが、集計した週がずれているのかもしれません。正しい数字がわかったら修正しますが、とりあえず傾向をみるために上の図を置いておきます。

最近の傾向としては品質の向上があります。ワインスペクテーターでは缶入りワインのレビューをまとめた記事「Tasting Highlights: 15 Top-Rated Wines in Cans | Wine Spectator」を掲載していますが、ここでは最高89点を取得しています。

また、モンダヴィがウッドブリッジの缶入りをNFLのチームと共同で開発したり、コッポラがダイヤモンド・コレクションの缶バージョンを作ったりと、既存のブランドの缶入り版が増えてきています。

また、ニュー・カリフォルニア系の生産者であるブロック・セラーズも普及ラインのラブ・レッド、ラブ・ホワイトの缶入り版を作っています。ラブ・レッドは87点をかなりの高得点でした。また、面白いのは最近アルバリーニョの記事で紹介したファーディナンドも缶入りのアルバリーニョを出していることです。86点と評価されています。

Date: 2020/0812 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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サンタ・ルシア・ハイランズでピゾーニ(Pisoni)と並ぶビッグネームである「ロアー(Roar)」のヴィンヤード・マネージャー、ニック・フランシオーニ(Nick Franscioni)氏とワインメーカーのスコット・シェイプリー(Scott Shapley)氏によるWebセミナーを受けました。ロアーがこういったセミナー類に出てくることは米国でも非常にレアであり、貴重な経験でした。

Nick Franscioni

まずはサンタ・ルシア・ハイランズを紹介しておきます。セントラル・コーストでサンタ・クルーズ・マウンテンズとパソ・ロブレスの間にあるAVAで、カレラのあるマウント・ハーランよりも山一つ太平洋側になります。1970年代からハーン(Hahn)やパライソ(Paraiso)などによってワイン作りが始まり、1991年にはAVAに指定されていますが、この地域を有名にしたのはなんと言ってもピゾーニです。

ピゾーニは1982年に植樹された畑で、ブルゴーニュのラ・ターシュのクローンとされるピノ・ノワールを使っており、その力強い味わいで2000年代のピノ・ノワール・ブームに乗って一世を風靡しました。パッツ・アンド・ホール、ピーター・マイケルといった凄腕のワイナリーにピノ・ノワールを供給して有名になり、さらに自身のワイナリー、ピゾーニのピノ・ノワールは「ピゾーニ、ピゾーニ(ピゾーニ・ワイナリーのピゾーニ・ヴィンヤード)」として今も珍重されています。

ロアーのオーナーであるフランシオーニ家は、ピゾーニ家と仲がよく、中でもピゾーニの畑を作ったゲイリー・ピゾーニと、今回セミナーをしたニックの父親であるゲイリー・フランシオーニは幼少のころからの友人同士。その縁からフランシオーニ家の畑でもピゾーニの畑のクローンを使わせてもらうのと同時に、両家で共同運営する畑もあります。また、ロアーでもピゾーニのブドウからワインを作っています。
畑マップ
こちらが畑のマップです。実は私もサンタ・ルシア・ハイランズの畑のマップをあまりちゃんと見たことがなかったのですが、ロアーが使っている畑(オレンジ色のところ)は結構分散しています。マップの端から端までは30kmほどあります。

この地図は左右になっていますが、この地図の右の方が北西方向にあたり、このしばらく先にモントレー湾があります。地図の上側、つまり南東方向は山脈になっています。
SLH
こちらを見れば雰囲気がわかるでしょうか。
ここはモントレー湾から強い風と霧が吹き込んできます。そのため、海に近い北西部ほど寒く、南東ほど暖かくなります。上の畑のマップで言うと右ほど冷涼で、左ほど温暖ということです。この中で一番左にあるのがピゾーニの畑です。

マップの中で一番右、すなわち一番冷涼なところに位置するのがロゼラズ・ヴィンヤード(Rosella's Vineyard)で、ゲイリー・フランシオーニの奥さんの名前から付けた畑です。ここがフランシオーニ家の畑では一番古く、家もここにあります。
ロゼラズ
こちらがロゼラズです。約50エーカーで、ピノ・ノワールのほかシャルドネと少量のシラーもあります。ロゼラズの特徴は、ピゾーニ以外にも様々なクローンを植えていること。ポマール・クローンやディジョン・クローンの777、667などを使っています。ピゾーニ・クローンの比率は半分弱だそうです。ロゼラズのピノ・ノワールはローズ・ペタルの香りがあり、ロアーのピノ・ノワールの中では一番エレガントな味わい。個人的にもロゼラズのワイン、大好きです。特に、現在は関係が切れてしまったオーガスト・ウエストのロゼラズは、かなりたくさん飲んでいました。
ゲイリーズ
次が、ゲイリーズ(Garys')とソベラネス(Soberanes)で、この2つの畑は隣接しており、どちらもピゾーニ家とフランシオーニ家の共同経営です。ゲイリーズはピゾーニ・クローンが大部分でカレラ・クローンもあり、スパイス感や複雑さを出すのに役立っているそうです。
シエラマー
次のシエラ・マー(Sierra Mar)は非常にユニークな畑。ゲイリーズからもだいぶ南になり、温暖になりますが、ここは標高が300m以上あり(ロゼラズは100m以下)、数多くの尾根からできています。土地は400エーカーほどありますが、うち植樹されているのはわずか50エーカー。ピノ・ノワールが3分の2でシャルドネも11エーカーほどありますが、このほかごくわずかだけシラーやグルナッシュ、ヴィオニエもうわっています。

畑は有機栽培ではありませんが、サステナブルで認証を受けています。収量は多くて1エーカー3トンとかなり少なめです。

ワイナリー
こちらがワイナリーです。機能的なだけでなく、かなりおしゃれな作り。これはロゼラさんの意見がだいぶ入っているそうです。
樽
シャルドネは樽発酵・樽熟成しています。樽発酵すると、より樽の風味が付きそうですが、実際には樽の風味がよくなじんでむしろ樽の感じは強くなくなるそうです。樽は5種類のメーカーを使っており新樽比率は30%(シャルドネ)だそうです。樽メーカーによって風味の特徴があり、インポーターのilovecalwineさんによると、樽別の試飲をしたら全然味わいが違って驚いたそうです。
タンク
ピノ・ノワールは写真のステンレススティール・タンクのほか、コンクリート槽も使っているとのこと。タンクは特注品で通常のものよりかなり浅くなっています。これはスキン・コンタクトの効果を出しやすくするためだとか。果房はパンチダウンで果汁と混ぜています。ホールクラスターは年によって使うときと使わないときがありますが、ピノ・ノワールではあまり使わない方向だそうです。シラーではゲイリーズのシラーで100%全房発酵など、かなり使っています。

今回、私は試飲なしだったのですが、それでもすごく勉強になりました。ロアーのワイン自体は10数年まえから飲んでいますし、実は初代ブログを立ち上げた2003年3月に記事で書いたワイナリーの一つなのである意味とても懐かしかったのですが、こうやって直接話を聞いたのは初めてで、貴重な経験でした。

なお、今回輸入されたのは
ROAR SLH Chardonnay 2018
ROAR SLH Pinot Noir 2018
ROAR Rosella’s Vineyard Pinot Noir 2018
ROAR Garys’ Vineyard Pinot Noir 2018
の4種。特にSLHのシャルドネは限られた州と日本にしか出ていなかったレアものです。すでに輸入元完売で、リンク先のWassy'sの在庫のみだそうです。

以下のリンクのショップはWassy'sです。




Date: 2020/0809 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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「クインテッサ(Quintessa)」はナパのラザフォードで1990年に設立されたワイナリーです。オーパス・ワンなどと同様、ワイナリー名のワインただ一つを作り続けています。1990年代には日本でもそこそこ知られていた印象がありますが、近年は輸出をほとんど行っていなかったため、あまり目立たない存在になっていたかもしれません。2019年に出荷された2016年ヴィンテージからはオーパス・ワンやハーラン・ファミリーのプロモントリーといったエリートワイナリーと並んで、ボルドーのネゴシアン経由で輸出されるようになりました。2015年まではファインズが輸入していましたが、現在はどのインポーターでも輸入できる状態になっています。

そのクインテッサが2017ヴィンテージの出荷を始めたところで、ジェネラル・マネージャーのロドリゴ・ソト氏に詳しく話を伺いました。



クインテッサは設立以来、オーガニックで栽培をしており、現在はデメターからバイオダイナミクス(ビオディナミ)の認証も受けています。ナパのラザフォードでオーガニックというとフロッグス・リープが有名ですが、フロッグス・リープが有機栽培を始めたのは1988年で、実は2~3年しか違いません。また、フロッグス・リープは有機栽培にあとから転換したのに対して、クインテッサの場合は、畑を切り開いた最初から有機栽培であり、土地に農薬が一度も使われていないという価値があります。



場所はラザフォードの東北部。ちょうどナパ・ヴァレーがぐんと幅を狭くしていくあたりです。西側はナパ・リヴァー、東側はシルバラード・トレイルに挟まれた200エーカーを超える広大な畑を持っています。ヴァレー・フロアではありますが畑の中に丘や池などがあり、5種類の斜面からなり、土壌などもかなり変化に富んだ畑です。


ブドウ品種はカベルネ・ソーヴィニヨンを中心に、カベルネ・フランやメルロー、プティ・ヴェルドなど。珍しいところではチリの固有品種であるカルメネール(正確にはボルドーから持ち込まれた品種ですが、現在ではほとんどチリだけで作られています)を一部植えています。オーナーで創設者のアグスティン・ヒューネウス(Agustin Huuneus)はチリの出身で1960年代にはチリのコンチャ・イ・トロのCEOでした。そのため、コンチャ・イ・トロを通じてチリから持ち込んだものです。ソト氏によると、ナパではほかに聞いたことがないとのことでした。

カルメネールは、やや樹勢が強くなりすぎるのが欠点ですが、フィロキセラがいないチリでは自根で育てているのに対し、ナパでは接ぎ木。そのせいかいい感じに樹勢が抑えられているといいます。カルメネールを加えることでスパイシーな風味が加わるとともに「面白い要素」が入ってくるそうです。

クインテッサはボルドー流の1エステート1ワインに倣うと同時に、複数ブドウのブレンドといった面でもボルドーに倣っています。ボルドーだとリスク管理の意味合いも大きいですが、ナパではワインに多様性を与えることを目的にしています。「完璧なワインを作るには多様性が必要」とソト氏はいいます。自社畑のブドウしか使っていないことにもこだわりが見えます。

クインテッサはナパの中でも恵まれたところに畑がありますが、その割には「フルポテンシャルを引き出せていないのではないか」といった見方もされてきました。ソト氏の就任後は、畑に穴を掘って、根などの状態を調べる「再勉強」をしています。例えば「モン・カリース」というブロックはナパでは珍しい白い土壌があるところ。


左から2人めはワインメーカーのレベッカ・ワインバーグ

モン・カリースの土壌は中央の白い石

これは、火山性の灰が固まったものですが、想像以上に水を保持せず、それがここの区域のブドウのタンニンをきついものにしていることがわかりました。そこでカバークロップを増やしたり、灌漑の水を増やすことで、やわらかいタンニンに変わりました。それまではブレンドから除外されることも多かったブロックですが、今では最重要なブロックの一つだそうです。

ワイナリー(醸造設備)はすべて丘の下にあり、ポンプを使わず重力でワインを移せる設計になっています。


写真の左側は一般的なステンレススティールのタンクですが、右側はコンクリート製です。近年はこちらの使用比率も上がっています。コンクリート槽で発酵させることによって、よりタンニンがまろやかになるとのこと。


品種や多様なブロックのため、ブレンディングは重要かつ非常に大変なプロセスです。クインテッサではブレンディングのマスター・ブレンダーとして20年前からミシェル・ロラン(写真)を雇っています。一貫性と、潜在力の発揮を重視しているとのこと。

出荷が始まったばかりの2017年のワインを試飲しました。

第一印象は非常にエレガントです。ミディアムプラスボディで、ナパの濃いワインをイメージしていると驚くかもしれません。カシスやブラックベリーといった果実味以外に、ちょっとオリエンタルなスパイスの風味や杉、クローヴなど果実以外の風味もかなりあります。おそらく10~20年後に熟成感が出てくるともっと面白いと思いますが、今でも非常に美味しく飲めます。おそらく、和食と合わせても違和感がないくらいのエレガントさです。いわゆるナパのワインとは違いますが、この味わいは日本人の好みにも合うでしょう。

自然派を売りにしているわけではありませんが、むしろそれをもっと打ち出してもいいのではないかという気もします。自然派っぽい味わいではありませんが、この柔らかさは自然派の好みにも繋がる感じがします。
Date: 2020/0807 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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ナパで2020年の収穫が始まりました。例年通り、先陣を切ったのはマム・ナパ。8月3日に最初の収穫がワイナリーに運び込まれました。シュラムスバーグも8月5日に収穫を開始しています。

2020年は様々な逆風が吹いています。2018年からの「ブドウ余り」が止まらず、ワイナリーは今年も収穫量には敏感です。

コロナももちろん大きな逆風です。特に、畑の作業の大半を行っているメキシコ人は、コロナの被害に一番大きく会っているグループでもあります。ワシントン州のオカナガン・ヴァレーでは畑の労働者でクラスターが発生しています。また、危険手当として、畑の労働者への支払いもかさむことになりそうです。マムやシュラムスバーグの初収穫は、例年のお祝いムードはなく、最小限の人たちで祝う形だったようです。

ただ、こんな状況でもブドウは育ちます。2020年のブドウの生育はこれまでのところ非常に順調。収穫量は平均よりやや少ないところになりそうです。

パンデミック下でもワインはいいものができてほしいですね。
Date: 2020/0806 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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カリフォルニアワイン協会がインスタグラムで展開しているワインプレゼント企画がもう第4弾になっています。

今回のプレゼントはなんとサンドラーのピノ・ノワール。定価7000円の高級ワインです。オーガストウエスト等で鳴らしたエド・カーツマンのプライベートなワイナリー。もともと7000円でも安すぎるといわれているワインです。さすがに本数は3本とちょっと狭き門ですが、トライする価値はあります。



申し込みはインスタグラムでカリフォルニアワイン協会をフォローし、上の投稿にいいねするだけ。奮ってご参加ください。
Date: 2020/0802 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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ついに国内輸入が始まったデリンガー(Dehlinger)のワインを試飲してきました。
dehlinger
カリフォルニアのピノ・ノワールのブームは有名な映画「サイドウェイ」が公開された2004年頃から始まりましたが、それよりはるか前、1970年代にピノ・ノワールを植えた先駆者の一つがデリンガーでした。ロキオリやジョセフ・スワン、デイヴィス・バイナムなどと並ぶロシアン・リバー・ヴァレーの偉大な先人です。

ワイナリーの場所はグラトンの町の近く。ロシアン・リバー・ヴァレーをいくつかの地域に分類してその個性を説明しようとしているrussianrivervalley.orgによるとセバストポール・ヒルズに分類されていますが、実際にはラグーナ・リッジだと思います。グリーン・ヴァレーとサンタ・ローザ・プレインズと呼ばれる平地の間にある丘陵地帯です。

ロシアン・リバー・ヴァレーというと「ゴールドリッジ」と呼ばれる粘土と砂が混じった黄色い土壌が有名で、ピノ・ノワールやシャルドネ、特に後者に最適と言われています。水はけはよく、それでも深く根を張ると適度な水を得られるのが特徴です。

デリンガーのある土地は、それに加えて「アルタモント(Altamont)」と呼ばれる赤っぽい表土があります。ゴールドリッジよりも粘土と砂利の比率が高く、ゴールドリッジよりも水分を保持しない土壌。1mくらいの深さの表土ですが、植物の生産性はゴールドリッジよりも低く、昔のリンゴ農家には避けられていた土壌のようです。生産性が低い分、味わいの凝縮したブドウができます。
goldridge and altamont
写真で左側がゴールドリッジ、右側がアルタモントです。色がだいぶ違うのがわかります。
vineyard
前述のようにここは丘陵地帯になっていて、デリンガーの畑の中でも低いところと高いところがあります。アルタモントの土壌は高いところにあり、それが削られた部分がゴールドリッジになっているようです。
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畑のブロックの図と、土壌のマップを重ねてみました。アルタモントが多いところにカベルネ・ソーヴィニヨンやピノ・ノワールを植えているようです。

試飲しました。

シャルドネの2017年はライムなどの柑橘系に、ネクタリンのようなとろっとした甘さがあります。ヴァニラやカスタード、ナッツの風味も。酸がいきいきとしていて美味しい。シャルドネの名手レイミーを思い出しました。

ピノ・ノワールはゴールドリッジ2017とアルタモント2016。名前の通り、ゴールドリッジの土壌とアルタモントの土壌のブドウを分けて作っています。

ゴールドリッジはレッドチェリーやレッドプラムの完熟した味わい。スパイスの風味も少しあります。柔らかくロシアン・リバー・ヴァレーらしい良さのでたピノ・ノワールです。

一方、アルタモントはかなり濃厚というか強烈。ダークチェリーにシナモン、五香粉のようなスパイスの風味。キノコの風味など熟成感も出てきているのですが、まだ味が落ち着いていない印象もあります。個性的で少し好き嫌いは分かれそうな気がします。

最後はカベルネ・ソーヴィニヨン2014。ロシアン・リバー・ヴァレーでカベルネ・ソーヴィニヨンというのもかなり珍しいですが、ナパなどのような味の詰まった感じはないもののミディアムプラスボディでエレガント系のいいカベルネ・ソーヴィニヨンです。ナパのスプリング・マウンテンにあるスミス・マドローンのクローンを使っているとのことで、実はスミス・マドローンも同じ輸入元であり、何か縁があったようです。

ロシアン・リバー・ヴァレーの名門、ついに輸入開始ということでオールドファンは興奮しています。

ところで、オールドファンはこのワイナリー「デリンジャー」と呼んでいたと思います。ここの発音は米国人にとっても難しく、「ジャー」なのか「ガー」なのかわからないそうなので、日本人がわからないのは当然ですね。ある掲示板の投稿によると、ワイナリーの人は「day」+「linger」の発音だったとのことで、カタカナにするなら「デイリンガー」が一番近いのかもしれません。ともかく輸入元の表記は今回「デリンガー」になったので、それで覚えましょうね。

以下、ショップはWassy'sです。