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Date: 2022/0530 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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新生WINE TO STYLEの試飲会で美味しかったワイン(2022年春、1/3)
新生WINE TO STYLEの試飲会で美味しかったワイン(2022年春、2/3)
に続く3回めです。


パックスのトゥルソー2018(5900円)です。フランスのジュラ原産のトゥルソー、ニューカリフォルニア系では人気の品種で、なかなか入手できないワインです。ジュラでは非常に力強いワインを生み出す言われていますが、ニューカリフォルニア系のトゥルソーはそこまでパワフルな印象はなく、赤系果実と旨味がしっかりしたチャーミングな味わいです。


マリエッタのオールド・ヴァイン・レッドは2000年代前半、ロバート・パーカーがコスパ系ワインとして激賞しており、私も見かけると買っていました。ヴィンテージ表記はなく、複数ヴィンテージをブレンドして年に数回ロット番号を付けて出荷されるというユニークなスタイル。最近ではロット71がワイン・アドヴォケイトで94点を取って話題になりました。今回試飲で出ているのはロット73(2500円)。古木らしい深みのある味わいで、これで2500円は相当安いです。

評判のロット71はこちら。



もうひとつコスパ系のジンファンデルでOZV(オー・ジー・ヴィー)のオールド・ヴァイン・ジンファンデル2019(2300円)です。ちょい甘な感じで、このクラスに求められるジンファンデルらしい味わいだと思います。


ラシーヌはブルゴーニュとシャンパーニュとカリフォルニアの4人のコラボで生まれたワイナリーで2017年に最初のワインをリリースした新しいワイナリーです。サンタ・バーバラのサンタ・リタ・ヒルズをベースにしています。シャルドネも非常にいいのですが、個人的にはピノ・ノワールに特に感銘を受けました。サンタ・リタ・ヒルズのピノ・ノワール2018(10,000円)は実にエレガントで果実味もきれい。銘醸畑サンフォード&ベネディクト2018(18,000円)は複雑さもあり素晴らしい。


トゥエンティ・ロウズのシャルドネ2000(2700円)とカベルネ・ソーヴィニヨン・リザーブ2020(3700円)。シャルドネはトロピカル・フルーツの味わい。果実味が爆発しています。樽はそれほど強く感じません。カベルネはジューシーで親しみやすい味わい。


ヴァイン・クリフのカベルネ・ソーヴィニヨン2019(12,000円)。果実味豊かでナパらしい味わいのカベルネ・ソーヴィニヨン。ストラクチャーもしっかりあります。


最後はニューヨークのワインです。ラモロー・ランディング(Lamoreaux Landing)のエステート・レッドキュベNV(3500円)。バランスよく旨味あり、ほっとする味わいのワインです。
Date: 2022/0529 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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前半はこちら「新生WINE TO STYLEの試飲会で美味しかったワイン(2022年春、前半)」です。2回のつもりでしたが3回にするので、これは中盤ということで。


かなりレアなワインも並ぶ試飲会ですが、さすがにウルトラマリンはなく、ウルトラマリンを作るマイケル・クルーズの「トラディション」とヴァルディギエのペティアンの2つのスパークリングが出ていました。ヴァルディギエはチェリーのような風味で親しみやすく、トラディション(いわゆるRMタイプ)は旨味がしっかりと出ていて、高級感もあります。トラディションはNVですが、今回のは2017年が94%で、リザーブワインが6%入っているそうです。


ちなみにこのあたりはニューカリフォルニア系が並んでいます。アイ・ブランド&ファミリーはイアン・ブランドというワインメーカーのワイナリー。SFクロニクルのワインメーカー・オブ・ザ・イヤーにも選ばれている優秀なワインメーカーです(「SFクロニクルが2018年のワインメーカーオブザイヤーを発表」。インポーターの紹介文には「キモかわエチケットに似合わぬシリアスで本格派な冷涼系シャルドネ」と書いてあります。とてもきれいでミネラル感もあり、3300円とは思えないレベルのワインです。


同じくアイ・ブランド&ファミリーのカベルネ・フラン2018(5400円)。エレガント系のカベルネ・フラン、美味しいです。


メートル・ド・シェはスコリウム・プロジェクトにいたアレックスとレオ・スティーンで修行したマーティが作る自然派系ワイナリーです。カベルネ・ソーヴィニヨン2019(6800円)はナパのクームズヴィルとアトラスピークの間にあるマウント・ジョージの1000フィートのところにあるガラ・マウンテンというバイオダイナミクスの畑からのもの。これもナパとは思えないほどのエレガントさ。驚きのワインです。ジンファンデル2018(3900円)はベッドロックのモーガンに紹介された畑のものだそう。プラムの風味。価格以上の満足度です。


マサイアソンの入門編レッド・ブレンド「タンデュ」2019(2900円)。バルベーラ、アリアニコ、モンテプルチアーノ。、サンソー、カリニャンというカリフォルニアではかなりのマイナー品種のブレンドですが、堅苦しいことを考えず気軽に飲むのがいいワインです。甘酸っぱくチャーミング。


個人的、この日のトップがこのマヤカマスのカベルネ・ソーヴィニヨン2012。今はアンディ・エリクソンがワインメーカーを務めていますが、これは先代のボブ・トラヴァースの最後のヴィンテージです。当時は資金面などかなり大変なこともあったようですが、クラシックなスタイルをずっと続けています。長熟型のワインですが2012年はいい感じに飲み頃に入っていると思います。これぞ山のカベルネという味わいです。

2回で終わる予定でしたが、もう1回に分けます。
Date: 2022/0528 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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シエラフットヒルズのアマドール、エルドラド、カラベラスの3つの郡が災害援助をカリフォルニア州に申請しました(Sierra Foothills Counties File For Disaster Aid, Though Frost Damage Still Being Assessed in West Coast Vineyards)。

4月半ばに起こった低温ではオレゴンのウィラメット・ヴァレーやカリフォルニアのローダイ、シエラフットヒルズなどに被害が生じました。

今回援助を申請した3郡では今年の収穫が最大で60%減ってしまう見込みだといいます。ただ、実際のロスがどれくらいになるかは、芽がダメになった後に出てくる2番目の芽からどれくらいの収穫ができるかに寄っており、簡単には推計できないそうです。

低地のサンホアキン郡では、今のところ災害援助を申請するほどの被害ではないとしています。
Date: 2022/0527 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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ワイン・イン・スタイル改めWINE TO STYLEになって初めての大きな試飲会が開かれました。合併したナカトのワインも含むため、新世界だけでなく、フランスやイタリアなどのワインも出されていました。268種ものワインがあったため、さすがに全部を試飲するのは無理。新世界のワインを中心に試飲しました。旧世界もいくらか試飲してはいますが、今回の記事では省かせていただきます。


ファー・ニエンテと、その兄弟ワイナリーであるニッケル&ニッケルのシャルドネ2019(13,500円)です。ファー・ニエンテは樽のイメージが強いと思っていましたが、マロラクティック発酵なしの作りであり、樽も思っていたより抑制が効いていて非常によくできていました。ニッケル&ニッケル2020(9200円)の方はカーネロスのトゥルシャードの畑のシャルドネを使っており、ファー・ニエンテよりもさらにエレガント感があります。どちらも非常にいいシャルドネで、この日のシャルドネの白眉といっていいと思います。


ハーンのピノ・ノワール2020(2450円)。AVAはカリフォルニアとなっていますが、モントレーの時差畑のブドウを使っているようです。バランスよく非常にコスト・パフォーマンスの高いワイン。


スミス&フックのレッド・ブレンドとカベルネ・ソーヴィニヨン。ヴィンテージはどちらも2019年、希望小売価格も4700円と同じです。レッド・ブレンドは非常に柔らかさのある味わい。カベルネ・ソーヴィニヨンはシルキーなテクスチャが価格以上の満足感を与えてくれます。バランスも素晴らしい。レッド・ブレンドは今年のサクラ・アワードでダイヤモンド・トロフィーと特別賞の女性ワインメーカー賞を受賞しているそうです。


ミウラのピノ・ノワール、ピゾーニ・ヴィンヤード2016(13,500円)。ピゾーニのワインとしては最安の部類になります。パワフルさがピゾーニらしく、ストラクチャーもしっかりしています。


ザ・ヒルトのエステート・シャルドネとピノ・ノワール。ヴィンテージはどちらも2018で価格は5900円。何度も紹介しているワインですが、やはりこれはいいです。シャルドネはほどよい樽感があり、コクもあります。ピノ・ノワールは果実味に旨味もしっかり。


ザ・ヒルトの兄弟ワイナリーであるホナータのフロール ホワイトワイン2019(12,000円)とトドス・レッドワイン2018(9000円)。フロールはボルドー系の白ワイン。旨味がありしっかりした味わい。トドスは非常にパワフルで濃いワイン。45%シラーに21%カベルネ・ソーヴィニヨン、14%プティ・ヴェルドなど。


アルノー・ロバーツのシラー2018(6200円)。「うまい!」とメモしてあります(笑)。

今日はここまで。前半を紹介しました。後半ではこの日一番と思ったワインが出てきます。
Date: 2022/0524 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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米国のTTB(アルコール・タバコ税貿易管理局)が新しいAVA「West Sonoma Coast」を2022年5月22日に承認しました(TTB Approves California's Newest Sonoma AVA: The West Sonoma Coast)。ソノマでは19番目のサブAVAとなります。

ソノマの太平洋沿岸にはこれまでも「ソノマ・コースト」AVAがありましたが、このAVAはあまりにも広大で、AVAとしての意味が希薄ではないかと以前から考えられていました。実はAVA策定時に、大手ワイナリーのソノマ・カトラー(Sonoma Cutrer)が自社の畑の場所をほぼこのAVAに入れたため、非常に広大になったと言われています。太平洋沿岸だけでなく、南はサン・パブロ湾のほど近くまで、内陸ではロシアン・リバー・ヴァレーAVAのほとんどの部分を含んでいます。

そこで、太平洋沿岸だけの「True Sonoma Coast」のAVAを作ろうというグループができたのが2011年のことでした。ここにはフリーマンやリトライ、ファイラなどが参加していました。AVAの申請を出そうとしたものの、その地域が既存のグリーン・ヴァレーなどと重なっているところがあったため、「完全に包含するのはいいが部分的な重なりは認めない」というTTBの方針変更を受け、なかなか認可されませんでした。

そうしている間に、ソノマ・コーストの中でも太平洋からサンパブロ湾方面につながる谷間の地域は「ペタルマ・ギャップ(Petaluma Gap)」AVAとして2017年に認可されています。

こうして、残る大物AVAとして、今か今かと待ち望まれていたわけですが、トランプ政権時代はAVAの認可が非常に降りにくく(ペタルマ・ギャップは例外中の例外のような感じでした)、バイデン政権になってからはコロナ禍もあり、今まで延びていたのでした。


新しいAVAはソノマ・コーストに完全に含まれ、ロシアン・リバー・ヴァレーやペタルマ・ギャップと接する形になっています。フォートロス・シーヴューは完全に内包しています。

マーカッシンや、ウェイフェアラー、ボアズ・ビュー、フラワーズ、ペイなどの大物ワイナリーの畑も含まれており、あまり使われなかったフォートロス・シーヴューと異なり、今後は多くのワインのラベルに名前が登場することが予想されます。例えばフリーマンでは、「Yu-ki」の畑がウエスト・ソノマ・コーストに入るので、次のボトリングから「Yu-ki」のピノ・ノワールとスパークリングのラベルに使うと表明しています。

今年は3月に「San Luis Obispo Coast(SLOコースト)」AVAが認可され、これで二つの大物AVAが決まったことになります。
Date: 2022/0521 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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アイコニックワイン・ジャパンの試飲会に参加してきました。2000円から5000円ほどの中程度の価格帯で非常にいいワインをたくさん持っているインポーターで、特にモントレーからサンタ・バーバラまでのセントラル・コーストに強みを持っています。


カモミの「ロッソ・ディ・ナパ2020」(希望小売価格2450円)です。1000円台前半で人気の高かった「ロッソ・ディ・カモミ」はなくなり、ナパのワインになった分値段は上がっていますが、ナパのワインとしては最低価格帯でしょう。実売で安いところは2000円そこそこです。よくできています。


689セラーズの「689」カベルネは今や一番人気のカリフォルニアワインになっていますが、689セラーズはほかにもワインを造っています。この「キラードロップ2019」(3800円)もその一つ。かなりタンニンもしっかりしていて濃いワインですが、バランスは取れています。


昨年登場して一気に人気ワインになった「スラムダンク2019」(2700円)。名前やラベルの魅力もありますが、ワイン自体バランスよく、とても美味しいワインです。1年経ってもやっぱりいいものはいいです。


これも近年コスパワインの製造元として注目されているマイケルポザーン(ポーザン)のワイン。「ジアポーザ」のシャルドネ2018(2900円)。酸がきれいに出ていて、樽も突出せずいい感じです。


先日「2022年のイチオシ!? 「ほぼオーパスワンが5000円」」という記事で紹介したワインの一つですが、これもマイケルポザーンです。「ナパ1847」2018(5000円)。カベルネ・ソーヴィニヨンらしさがしっかり出ていて、この価格帯にしてはストラクチャーもしっかりしています。


ナパのホワイトホール・レーンがソノマのマヤカマス山麓に持つ「ラッシ」の畑のカベルネ・ソーヴィニヨン(2018年、4500円)。これもストラクチャーがしっかりしていて山らしいタンニンが感じられます。好きです。


先日、「ビエン・ナシード・オーナーが造る抜群のコスパワイン」という記事でバラード・レーンを紹介していますが、同じオーナーが造る別ブランドがバレル・バーナー(Barrel Burner)。文字通り樽を効かしたワインですが、樽感はもちろんしっかりあるものの、バランスもよく、いい感じに仕上がっています。シャルドネ2018、カベルネ・ソーヴィニヨン2018いずれも2800円はかなり割安感があります。

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パソ・ロブレスのデナー(Denner)が造るシラー「ダートウォーシッパー2017」(10,500円)。スパイス感や複雑さもしっかりあって美味しいシラー。レベル高いです。パソ・ロブレスがシラーの名産地であることがうなづけるワイン。


パソ・ロブレスのファイヤーストーンのカベルネ・ソーヴィニヨン2017(3240円)。この価格にして非常に完成度の高いワイン。美味しいです。


フィールド・レコーディングスの「ワンダーウォール」シリーズのシャルドネとピノ・ノワール。いずれもヴィンテージは2020年で3300円です。以前はミュージシャンのラベルでしたが、シンプルなラベルに変わってしまいました。ワンダーウォールは複数の畑のブレンドものです。シャルドネもピノ・ノワールもエレガント。シャルドネは特にミネラル感を強く感じます。この価格でこのレベルは恐るべしです。


リアルな動物モチーフのラベルで人気を集めたファブリストの「ブラン・ド・ブラン2019」(3700円)です。これはうまみがしっかりあって思わず「うまっ!」と声が出てしまいました。


サンタ・バーバラのサン・リージュの南ローヌ系ブレンド「オファリング2016」(5000円)。とてもバランスよく美味しい。


サンタ・バーバラの人気ワイナリーメルヴィルの「シラー ドナズ・ブロック2018」(8500円)です。今回はシラーでいいものが目立ちました。複雑さもしっかりあります。


最後もシラーになってしまいました。ストルプマンの「ラ・クローチェ 2019」(1万円)。むちゃくちゃ美味しい。最後の方なのでコメントが雑になってしまいすみません。
Date: 2022/0518 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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カリフォルニアのAVAでどこが好きか一つだけ挙げるとしたら、サンタ・クルーズ・マウンテンズ(Santa Cruz Mountains)かなあと思っています。オークヴィルとかソノマ・コーストとかロシアン・リバー・ヴァレーといったメジャーなところではないですが、非常に魅力的なワインが作られる産地です。
SCM
この地図で示したように、サンタ・クルーズ・マウンテンズはサンフランシスコの南方の半島を中心にしたAVAです。シリコンバレーと太平洋の間の山地になります。

歴史的に見ると、境界を標高で決めた初めてのAVAとして重要です。標高で霧の入り具合が決まるからです。

サンタ・クルーズ・マウンテンズで一番有名なワイナリーといえばリッジ(Ridge)です。2006年の「パリスの審判30年後」のブラインド・テイスティングで1位になったモンテベッロのカベルネ・ソーヴィニヨンがこの地域の畑です。というとカベルネ・ソーヴィニヨンが有名なようですが、実はカベルネ・ソーヴィニヨンはサンタ・クルーズ・マウンテンズの中では内陸よりの標高が高いところくらいしかなく、地域でメジャーな品種というわけではありません。太平洋に近いところは非常に冷涼で、酸のくっきりとしたピノ・ノワールやシャルドネが生まれます。個人的には特にこの地域のシャルドネは非常に好きです。リッジやマウント・エデンのシャルドネなど、凛とした味わいがあります。

一方、この地域の弱点はリッジを除くと小規模な生産者ばかりなこと。サンタ・クルーズ・マウンテンズのAVAの面積はナパの1.5倍もありますが、畑の面積は30分の1以下。1300エーカーしかなく、そのうち1割を超える140エーカーほどがリッジの畑です。文字通り山地が中心であり、畑を切り開くのはかなり大変です。特に近年は斜面の畑の開発には自然保護の面からなかなか許可が得られなくなっています。今後も大規模な生産者が登場する可能性は低いでしょう。

反面、小規模な生産者を探す楽しみはある産地だと思います。大量生産ができる地域ではないので、作られるワインはほぼ高級品といってもいいでしょう。アルノー・ロバーツやセリタスといった、注目されている生産者がこの地域のブドウを調達してワインを造っているのは決して偶然ではありません。







Date: 2022/0512 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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ナパのケイマス(Caymus)がナパに隣接するソラノ(Solano)郡のサスーン・ヴァレー(Suisun Valley)に新しいワイナリーを建設、ケイマス・サスーン(Caymus-Suisun)として力を入れ始めています(Napa’s famous Caymus opens tasting room unexpected Bay Area location)。


テイスティング・ルームは全体がガラス張りで外にいるかのような感覚を得られます。この場所は非常に風が強くそれを感じさせる工夫でもあります。屋外でのテイスティングもできますが、風の強さでグラスが倒れるため、ステムレスのグラスを使っているほどです。

ケイマスがこの場所に滲出した大きな理由は、ナパではワインの製造量を増やせないこと。ケイマスはかつてそれに違反したとして100万ドルの罰金を払ったこともあります。そういうわけで最初はワインの製造やボトル詰めの拠点としてだけ考えており、実際に醸造はこの場所に移転しています。また、ナパではワイナリーにおけるイベントの制限が大きいことも、理由の一つでした。例えばナパのワイナリーでは結婚式は開けません。新しいワイナリーでは150人規模のイベントが可能だとのこと。
ケイマス
サスーン・ヴァレーAVAは、ナパの南東になります。ナパの南東端にあるワイルド・ホース・ヴァレーAVA(KenzoのあるAVAです)はソラノ郡にも入っていて、ソラノ郡のソラノ・カウンティ・グリーン・ヴァレーAVAとも共通部分があります。グリーンバレーの東側に接しているのがサスーン・ヴァレーです。

ケイマスは、実際に進出してからはワイン造りの面でも大きな可能性を見出しているようです。600エーカーの地所を購入し、プティ・シラー(ここではGrand Durifと呼んでいます。なおPetite Sirahの正式名称はDurifです)を造っています。SFクロニクルの記事によるとグルナッシュも素晴らしいものができそうだとのこと。

いろいろなものが高くなりすぎたナパから、田舎的雰囲気を残したソラノへの進出、ケイマスだけではないかもしれません。
Date: 2022/0510 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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2021年12月には月商6000万円を超えたという楽天の「しあわせワイン倶楽部」。1年前の2020年12月には初めて月商3000万円を超えたとのことであり、1年間で売上倍増の急成長をしています。楽天の「Walk Together」という店舗向けの冊子にも「Rakuten Dream物語」として取り上げられているほどです。この4月には新しいオフィス兼倉庫に引っ越したとのことで、訪問してきました。

左が社長の木之下嘉明さん、右が妻で取締役の木之下麻衣子さん


新しいオフィスは調布駅から徒歩20分くらいのところ。1階が倉庫兼梱包場所、2階が倉庫とオフィスで訪問したときにはまだ2階の倉庫はほぼ空でした。

全くワイン業界とは縁のなく、趣味でワインを飲んでいた木之下さんが独立してワインショップの開業を考え始めたのは2009年頃。前職でECに携わり、ワインでも行けるのではないかと手応えを感じたそうです。2010年にはワインエキスパートを取得、2011年にECのみでワインの販売を始めました。

倉庫は自宅の四畳半。断熱材とエアコンでセラー代わりにしていました。

最初は売上もほとんどなかったそうですが、転機の一つになったのが「ナパ・セラーズ」を扱うようになったこと。



その味わいとコスパで、「これはぜひ扱いたい」と思ってインポーターに問い合わせたそうです。実はこのワインの輸入元はコルドンヴェール。やまやとイオンの合弁会社で、基本的にやまやとイオン系スーパーやショップのためのインポーターです。他のワインショップに卸すことはほとんどないのですが、熱意を認めてもらって取り扱いできるようになったといいます。今楽天で調べてもしあわせワイン倶楽部のほかはやまやでしか扱いがありません。

その後は自社輸入物を増やすなどして(現在は自社輸入はほぼゼロ)徐々に軌道に乗り、当初の自社サイトのみから2015年に楽天での出店も始めました。

しあわせワイン倶楽部でワインを買うと、「おまけ」がたくさんついてくるのに驚きます。クリスタルガイザーのペットボトルに、購入したワインのテイスティングノート、それから当サイトとのコラボによるカリフォルニアワイン・ニュースも同梱していただいています。

ワインは1本ずつラップと紙で巻かれており梱包も丁寧、発送も平日15時までの注文は即日出荷されます。外部に倉庫を借りて出荷を行うことも可能ですが、しあわせワイン倶楽部では梱包と配送こそ力を入れるところだと考えており、新しい倉庫もそれを念頭に作られています。

こういったことで購入した人がファンになりリピート買いすることが右肩上がりの売上につながっています。昨年末の記録も、特別な策を講じたというよりも「年末には一度買った人がだいたい戻ってきて買ってくれる」とリピート客に支えられています。

また、顧客から送ってもらったコルクをコルクリサイクルに使うというプロジェクトも行っており、これも顧客とのつながりに貢献しているとのこと。

会社のミッションは「ワイン文化の定着」。ワインを通じて人生を楽しみ、ワインによって人生を豊かにする人を生み出し続けること。そして未来のビジョンとしては「3世代が一緒にワインを楽しむ社会の実現」だといいます。

売上や利益といった金銭面ではなくこういったビジョンやミッションを大事にしているからこそ、ファンが増える店舗になっているのだということを改めて感じました。

なお、2019年には日本ワインのショップもオープン。今後はシャンパーニュの専門店も予定しています。

私もビジョンの実現に、少しでもお役に立てるよう、協力していきたいと思います。
Date: 2022/0509 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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1972年に設立されたワイナリーが今年50周年を迎えます。その多くが今もなおカリフォルニアワインを牽引していると言っても過言ではない名門ワイナリーです(California’s ‘class of 1972’ wineries continue to raise the bar)。

19世紀に急激に広がったカリフォルニアのワイン生産でしたが20世紀に入り、1920年から33年までの禁酒法の期間に多くのワイナリーが廃業に追い込まれました。ワイナリーが減ったこと以上に大きかったのが、消費者が美味しいワインを求めるという嗜好を失ったことで、禁酒法期間の倍以上の30年間ほど、高品質なワイン造りはイングルヌック(Inglenook)やボーリュー(Beaulieu)などごくごくわずかなワイナリーを除いてはほとんど行われていませんでした。

1960年代に入り、ハイツ・セラー(Heitz Cellar)、シュラムスバーグ(Schramsberg)などの今に続く高級ワインのワイナリーが少しずつ誕生してきました。その象徴的存在が1966年に設立されたロバート・モンダヴィ(Robert Mondavi)であり、モンダヴィ傘下で働いた人たちが次々と名門ワイナリーを興すようになるのです。60年代にはすでにスタッグス・リープ・ワイン・セラーズ(Stag's Leap Wine Cellars)がオープンしていますが、その動きがさらに活発になったのが1972年でした。

ナパ・ヴァレー・ヴィントナーズによるとこの年、少なくとも8個のワイナリーが開業しており、60年代全体に匹敵するほどでした。ナパでは70年代に40を超えるワイナリーがオープンしていますが、まさにカリフォルニアワインが開花を始めた時期と言っていいでしょう。

1972年にオープンしたのはケイマス(Caymus)やシルバー・オーク(Silver Oak)、ダイヤモンド・クリーク(Diamond Creek)、クロ・デュ・ヴァル(Clos du Val)、マウント・ヴィーダー(Mount Veeder)、スミス・マドローン(Smith Madrone)など。また、そのまではドライ・クリーク・ヴィンヤード(Dry Creek Vineyard)やジョーダン(Jordan)がこの年に生まれています。ケイマスやシルバー・オーク、ジョーダン、ドライ・クリークなど創業した家族が今も経営を続けています。

ちなみに冒頭に写真を載せたシャトー・モンテレーナ(Chareau Montelena)は1882年設立と設立は古いのですが、禁酒法以降は休眠状態であり、1972年にそれを買い取ったジム・バレットによって再生を始めたのでした。翌年のシャルドネが1976年のパリスの審判で1位になったのは周知の通りです。

何百年も続いている欧州の名門に比べれば歴史の短いカリフォルニアワインですが、それでもしっかりと年を刻んできています。50年ともなると、ブドウの樹は植え替えも経ているのが普通であり、シャトー・モンテレーナでも現在3回めの植え替えをしているとのこと。歴史の浅さが品質の低さになるようなことはもうないと言っていいでしょう。

Date: 2022/0508 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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ダックホーン・ポートフォリオ(ダックホーンやカレラなどを所有する会社)はパソ・ロブレスで289エーカーの畑を購入しました(Duckhorn Acquires 289-acre Paso Robles Vineyard)。ダックホーンにとってはセントラル・コーストではカレラの畑に次ぐ自社畑ということになります。

畑の名前はボトム・ライン・ランチ(Bottom Line Ranch)。パソ・ロブレスのサン・ミゲル・ディストリクトにあり、カベルネ・ソーヴィニヨンが265エーカーに植わっています。サン・ミゲル・ディストリクトはパソ・ロブレスの中でも比較的温暖なところです。

この畑のブドウはデコイやポストマークに使われる見込みです。
Date: 2022/0506 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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ナパ郡で、年間5000ガロン(約2100ケース)以下の小規模ワイナリーの開設許可が3年間の期間限定で容易になりました。これまでは開設計画を郡の委員会に提出し、審議の上で認められる必要がありましたが、この期間においては一定の条件を満たすワイナリーであれば、審議不要で開設できます(Napa County Micro-Winery Ordinance Goes Into Effect May 5, 2022 - DPF Law)。

条件としては生産量は201ガロンから5000ガロン、自社で製造設備を有し、75%のブドウは自社畑である必要があります。ワイナリー設備の面積は5000平方フィート(約464平方メートル)以下。ツアー、試飲、小売販売は午前9時から午後6時まで。ツアーや試飲以外のマーケティングイベントは許可されていません。

また、ワイナリーへの訪問者はオーナーや従業員、デリバリー、ビジターなどを含めて1日平均車10往復となっています。少々ややこしいですが、フルタイムのオーナーとパートタイムの従業員がいたらそれで2往復分となり、残り8往復がビジター分となります。車1台で2.6人と計算することになっており1日平均19人のビジターを受け入れられるという計算です。

3年後にこの方式を継続するか打ち切るかを改めて決める予定です。
Date: 2022/0504 Category: 業界ニュース
Posted by: Andy
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ナパのケークブレッド・セラーズ(Cakebread Cellars)の創設者であるジャック・ケークブレッドが4月26日に亡くなりました。92歳でした(Jack Cakebread, Photographer Turned Napa Vintner, Dies at 92 | Wine Spectator)。おわかりになるようにワイナリー名は名字そのものです。意外と知らない人が多いのでは。

ジャック・ケークブレッドはカリフォルニアの生まれ。父親はオークランドで車の修理業者を始めた人でした。10歳のときにコントラコスタ郡に農場を購入してアーモンドやくるみ、ストーンフルーツなどを育てるようになりました。

ジャックは父親の車の修理業を手伝いながらフリーランスで写真家もやっていました。

1972年に「The Treasury of American Wines」という書籍の仕事でナパに行き、ラザフォードの友人宅で食事をしました。そのときに友人に、いつか土地を売るときがあったら僕が買うよといったところ、その日の午後に電話があり、土地を購入することになりました。

その後は近隣に土地を買い足したり、カーネロスにシャルドネやピノ・ノワールのための畑を買ったりして現在に至ります。環境に気を使っているワイナリーの代表格の一つでもあります。

ジャックは2002年に社長を息子のブルースに譲りましたが、2015年まではCEOを続けていました。一緒にワイナリーを始めた妻のドロレスは2020年に亡くなっています。

ナパを築いてきた一人がまた亡くなりました。ご冥福をお祈りします。

ケークブレッドのフラッグシップはこのワイン。パーカー100点を取っているそのものです。


廉価版のブランドもあります。