このところ、ワインの本以外に、知り合いがEPUBで電子書籍を作るのを手伝ったりしています。おりしも縦書きやルビなどをサポートしたEPUB3が策定されたこともあり、EPUBの記事を見かけることが増えています。

一方で、電子書籍全体を見ると、シャープのGALAPAGOSが路線変更を迫られたように、電子書籍自体の市場の伸び悩みという話もあります。

個人的には、最近EPUBをいろいろといじった感想として、これは間違いなく流行るだろうと思っています。特に、メルマガのフォーマットとして有力ではないかと感じています。ここでは10項目でそれを論じます。

1.作るのに特別な知識が要らない
  EPUBは簡単に言えば、XHTMLあるいはHTML5でページを作り、XMLで目次など書誌情報を入れ、ZIPで固めたものです。難しい技術は何もありません。ページサイズがデバイスによって大きく変わることさえ意識しておけば大丈夫です。習得が容易であることは普及において極めて重要な要素です。ツールもどんどん出てくることと思います。

2.いろいろなデバイスで見られる
  これからの時代、スマートフォンで見られないコンテンツは機会を大きく損じていることになります。Webページの場合、User-Agentによって表示を変えられますが、パッケージ化されたコンテンツではその手は使えません。代表的なパッケージコンテンツであるPDFの場合も、PC用のものをスマートフォンで見ると字が小さくなり過ぎてしまうのが大きな弱点です。EPUBであれば、一つのコンテンツがいろいろなデバイスの上で見られます。

3.ネットがない環境で見られる
  ダウンロードしてしまえば、ネットがない環境でも見られるのが普通のWebページと比べた大きなメリットです。筆者がカリフォルニアワインの本をEPUBで作りたいと思ったのも、旅行中などでネットにつなぎにくい環境でも簡単に見られるようにしたかったからです。

4.ネットとの親和性が高い
  EPUBの表示はHTMLですから、既存のWebページへのリンクも入れておけます。Webのコンテンツを移植するのも簡単です。

5.Kindleが来ても簡単に変換できる
  電子書籍の黒船と言われているKindleはEPUBには対応していません。しかしAmazon自身がEPUBをKindleの形式に変換するツールを作っているので、EPUBで作っておけば簡単にKindle用にできます。

6.動画や音声付きの本が作れる
  AppleのiBooksはQuickTimeの動画や音声を再生できますし、今後EPUB3が普及すれば、HTML5対応の動画が見られるビューワも増えるでしょう。こういったものが簡単に作れるのはPDFに比べて大きな魅力です。

7.アプリケーションにもなる(EPUB3で)
  EPUB3はJavaScriptも利用できるようになります。ビューワによって対応しないものもありますが、むしろここが差異化のポイントになってくるような気がします。例えばパズル系の本など、JavaScriptで解けるようになれば、本というよりアプリケーションと言っても過言ではなくなるのではないかと想像しています。これもPDFではできないことです。


8.目次は便利
  目次はEPUBの基本機能ですが、普通のHTMLと比べると、これがあるのは大きなメリットです。長いメルマガなどが、EPUBで配信されるようになると、目次機能で見たいところをすぐに見られて便利だと思います。

9.保存できる
  例えば、有料のメルマガなど、まとめて保存しておきたいと思うことはあるでしょう。EPUBはファイルとして保存できるので、普通のHTMLよりも保存が楽です。個人的には今のPodcastみたいな感じでEPUBの購読ができるといいのに、と思います。iPhoneのNewsstandはちょっとアプリより過ぎていまいちな気がするのですがどうでしょうか。

10.もしかしたらブラウザの標準機能に入るのでは
  EPUBの表示はHTMLですから、WebkitなどHTMLのエンジンを使って開発するのが普通です。裏を返せば、WebブラウザでEPUBを表示するのも簡単です。今後はWebブラウザの基本機能に入ってくる可能性もあるでしょう。