カリフォルニアのカベルネ・ソーヴィニヨンの最高峰の1つであるシェーファーのヒルサイド・セレクト。カリフォルニアワインのファンであれば、だれもが憧れるワインでしょう。
シェーファーのすごいところは、ヒルサイド・セレクトだけでなく、スタンダードなカベルネ・ソーヴィニヨンや、シラー、メルロー、シャルドネといった品種でも一級品のワインを作り続けていることです。
このワイナリーの足跡を、創設者ジョン・シェーファーの息子であり、現社長(以前はワインメーカーも務めました)のダグ・シェーファーが綴った本が『ナパ奇跡のぶどう畑 第二の人生で世界最高のワイナリーを造りあげた<シェーファー>の軌跡』です。
本書の読みどころは大きく分けて2つあります。1つは1970年代から90年代前半の、ナパが成長しながらも模索を続けていた時代の雰囲気がよくわかること。もう1つは、シェーファー・ヴィンヤーズというビジネスを発展させていくビジネス書としても興味深く面白いものであることです。
シェーファーが移住してきたころはまだスタッグス・リープという地域は確立しておらず、ナパでも「はずれ」の方でした。それがパリ・テイスティングなどを経て、注目されるようになり、AVAとしても認定されました。このAVAの線引きのかけひきややり取りなどは、現在でもさまざまなAVAで繰り広げられているものと共通しており、興味深いものでした。
また、1980年代にはナパのカベルネが「フードワイン」の時代となり、軽くアルコール度数が低いものを目指していました。これも現在のIPOBと共通するところがあり、時代は繰り返すのだなあと思いました。
ビジネス面では、ワインメーカーのイライアスへの権限譲渡や、2000年に立てた10年計画、などが興味深いところでした。
シェーファーについては、シカゴの出版社からの転身ということは知っており、何となく実業界で成功した金持ちの道楽で、ダグも2世のボンボンなのか、といった勝手なイメージを持っていましたが、本書を読むと想像していた以上に真摯にワイン作りに取り組んできたことがよくわかります。ダグにしても、当初はシェーファーで働く気は全くなく、他のワイナリで仕事をしていましたし、ワインメーカーに就任した直後には、衛生上の問題が生じて、すべてのワインをバルクで売り払わなければいけないような状況にも陥りました。苦労知らずでもなく、ワインメーカーというハードな仕事を背負う責任感をしっかり持った人であることがわかりました。
シェーファーのファンはもちろんのこと、ナパやカリフォルニアワイン好きであれば、きっと興味深く読める本だと思います。400ページ近い本ですが、面白くてあっという間に読み終わってしまいました。なお、電子書籍もあり、大分安くなっています(気付かずに紙の本を買ってしまって後悔してます)。
最後に、訳者の野澤玲子さん、本書の上梓後に亡くなられたとのこと。お悔やみ申し上げます。
Amazon
Kindle版
楽天ブックス
シェーファーのすごいところは、ヒルサイド・セレクトだけでなく、スタンダードなカベルネ・ソーヴィニヨンや、シラー、メルロー、シャルドネといった品種でも一級品のワインを作り続けていることです。
このワイナリーの足跡を、創設者ジョン・シェーファーの息子であり、現社長(以前はワインメーカーも務めました)のダグ・シェーファーが綴った本が『ナパ奇跡のぶどう畑 第二の人生で世界最高のワイナリーを造りあげた<シェーファー>の軌跡』です。
本書の読みどころは大きく分けて2つあります。1つは1970年代から90年代前半の、ナパが成長しながらも模索を続けていた時代の雰囲気がよくわかること。もう1つは、シェーファー・ヴィンヤーズというビジネスを発展させていくビジネス書としても興味深く面白いものであることです。
シェーファーが移住してきたころはまだスタッグス・リープという地域は確立しておらず、ナパでも「はずれ」の方でした。それがパリ・テイスティングなどを経て、注目されるようになり、AVAとしても認定されました。このAVAの線引きのかけひきややり取りなどは、現在でもさまざまなAVAで繰り広げられているものと共通しており、興味深いものでした。
また、1980年代にはナパのカベルネが「フードワイン」の時代となり、軽くアルコール度数が低いものを目指していました。これも現在のIPOBと共通するところがあり、時代は繰り返すのだなあと思いました。
ビジネス面では、ワインメーカーのイライアスへの権限譲渡や、2000年に立てた10年計画、などが興味深いところでした。
シェーファーについては、シカゴの出版社からの転身ということは知っており、何となく実業界で成功した金持ちの道楽で、ダグも2世のボンボンなのか、といった勝手なイメージを持っていましたが、本書を読むと想像していた以上に真摯にワイン作りに取り組んできたことがよくわかります。ダグにしても、当初はシェーファーで働く気は全くなく、他のワイナリで仕事をしていましたし、ワインメーカーに就任した直後には、衛生上の問題が生じて、すべてのワインをバルクで売り払わなければいけないような状況にも陥りました。苦労知らずでもなく、ワインメーカーというハードな仕事を背負う責任感をしっかり持った人であることがわかりました。
シェーファーのファンはもちろんのこと、ナパやカリフォルニアワイン好きであれば、きっと興味深く読める本だと思います。400ページ近い本ですが、面白くてあっという間に読み終わってしまいました。なお、電子書籍もあり、大分安くなっています(気付かずに紙の本を買ってしまって後悔してます)。
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対象書籍のうち文芸書は、有川浩さんの「阪急電車」があるくらいで、あまり面白くなかったのですが、意外と充実していたのがビジネス書。しかも、よくあるような自己啓発ものだったり、つまらないハウツーものだったりではなく、すごくきちんとした人が書いた、その道のバイブル的な本があります。(僕がいきなりビジネス書のことを書くと、違和感があるでしょうが、実は仕事ではこのあたりのことを見ているので、決していきあたりばったりで書いているわけではありません)
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まつもとゆきひろ コードの世界 | Rubyの開発者として名高いまつもとさんの本です。雑誌連載をまとめたもの。 |
スティーブ・ジョブズ 驚異のイノベーション | スティーブ・ジョブズのイノベーションを解説した本です |
世界のマーケットで戦ってきた僕が米国株を勧めるこれだけの理由 | 最後はおまけ。大江麻理子アナと結婚した松本大さんの本です。 |
昨年秋に出版された『The New California Wine』。米国では数多く出ているカリフォルニアワインの本の中でも注目の1冊です。
2013年ころからIPOB(In Pursuit of Balance)というグループが注目を集め始めているのは、このブログでも何回も紹介しています。最近ではLioco、Sandhiといったワイナリが来日してセミナーを開いたのにも参加しています(全カリフォルニアが注目するIPOB、創設者ラジャ・パーが語る、IPOBのLiocoとSandhi、Domane de la Côteを試飲)。
このグループの推進役の一人であり、強力なスポークスパーソンでもあるのが本書の著者であるJon Bonne(ジョン・ボネ)氏です。SFクロニクル紙のワインライターで、2006年にW. Blake Gray氏の後を継いでクロニクルのライターになった人です。
ニューヨークから来たボネ氏は、カリフォルニアワインにはあまり馴染みがなく、その力強いスタイルにもあまり好感を持たなかったようです。それが取材を進めるうちに、発見していったのが、濃い一辺倒ではないスタイルを模索する新しいワイナリで、最初は仲間内のグループだったIPOBを広報・宣伝するようになってきたと見られます。
本書は、前半ではカリフォルニアワインの通常は書かれない裏側の世界が描かれています。ワイン版の「不都合な真実」と言ってもいいかもしれません。といってもネガティブなことばかりではありません。例えば、このところの水不足でテーマに上る灌漑についていえば、どうしてカリフォルニアの大部分のワイナリでは灌漑をするのかなどについて、歴史的な事情などを含めて詳しく説明しています。また、灌漑をしないというワイナリのことについても書かれています。カリフォルニアの安ワインを支えるセントラル・ヴァレーの畑の話なども、なかなか面白かったです。いろいろな面から、これまでのマジョリティと新しい動きを解説していると言っていいでしょう。マニアックなカリフォルニアワインファンにお薦めの内容です。
後半は主にワインの紹介。当然ながらIPOBのワイナリが多数紹介されています。実は『無敵のカリフォルニアワイン講座《ソノマ編》』にも、これを見て追加したワイナリがいくつかあります。後半は普通のカリフォルニアワインファンにも読みやすい内容です。
実は、IPOBには既存のワイン評論家、例えばロバート・パーカーやWine Spectator誌のジェームズ・ローブはやや否定的な見解を示しています。
実際、これがカリフォルニアワインのマジョリティになるかどうかというと難しいところはあるでしょう。それでも、これまでよりもカリフォルニアワインの世界が広がるのではないかと、個人的には期待しています。
本書を読むには、書いてあることをすべて真に受けるのではなく、いろいろな視点の1つとして読むリテラシーも必要なように思いました。
なお、本書を単行本で日本で買うと3500円以上しますが(米国でも35ドル)、電子書籍版だと1000円台。Kindleだけでなく、Kobo版もあります。僕はKoboで3割引クーポン使って買いました。かなりお得です。
楽天ブックス(電子書籍)はこちら
2013年ころからIPOB(In Pursuit of Balance)というグループが注目を集め始めているのは、このブログでも何回も紹介しています。最近ではLioco、Sandhiといったワイナリが来日してセミナーを開いたのにも参加しています(全カリフォルニアが注目するIPOB、創設者ラジャ・パーが語る、IPOBのLiocoとSandhi、Domane de la Côteを試飲)。
このグループの推進役の一人であり、強力なスポークスパーソンでもあるのが本書の著者であるJon Bonne(ジョン・ボネ)氏です。SFクロニクル紙のワインライターで、2006年にW. Blake Gray氏の後を継いでクロニクルのライターになった人です。
ニューヨークから来たボネ氏は、カリフォルニアワインにはあまり馴染みがなく、その力強いスタイルにもあまり好感を持たなかったようです。それが取材を進めるうちに、発見していったのが、濃い一辺倒ではないスタイルを模索する新しいワイナリで、最初は仲間内のグループだったIPOBを広報・宣伝するようになってきたと見られます。
本書は、前半ではカリフォルニアワインの通常は書かれない裏側の世界が描かれています。ワイン版の「不都合な真実」と言ってもいいかもしれません。といってもネガティブなことばかりではありません。例えば、このところの水不足でテーマに上る灌漑についていえば、どうしてカリフォルニアの大部分のワイナリでは灌漑をするのかなどについて、歴史的な事情などを含めて詳しく説明しています。また、灌漑をしないというワイナリのことについても書かれています。カリフォルニアの安ワインを支えるセントラル・ヴァレーの畑の話なども、なかなか面白かったです。いろいろな面から、これまでのマジョリティと新しい動きを解説していると言っていいでしょう。マニアックなカリフォルニアワインファンにお薦めの内容です。
後半は主にワインの紹介。当然ながらIPOBのワイナリが多数紹介されています。実は『無敵のカリフォルニアワイン講座《ソノマ編》』にも、これを見て追加したワイナリがいくつかあります。後半は普通のカリフォルニアワインファンにも読みやすい内容です。
実は、IPOBには既存のワイン評論家、例えばロバート・パーカーやWine Spectator誌のジェームズ・ローブはやや否定的な見解を示しています。
実際、これがカリフォルニアワインのマジョリティになるかどうかというと難しいところはあるでしょう。それでも、これまでよりもカリフォルニアワインの世界が広がるのではないかと、個人的には期待しています。
本書を読むには、書いてあることをすべて真に受けるのではなく、いろいろな視点の1つとして読むリテラシーも必要なように思いました。
なお、本書を単行本で日本で買うと3500円以上しますが(米国でも35ドル)、電子書籍版だと1000円台。Kindleだけでなく、Kobo版もあります。僕はKoboで3割引クーポン使って買いました。かなりお得です。
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米Amazon.comの誕生する前から2013年前半までをたどったノンフィクションである。ジェフ・ベゾスだけにフォーカスしているわけではなく、登場人物はかなり多い。正直だれがだれだかわからなくなるくらいに多い。
その中で、最終的に際立つのはやはりジェフ・ベゾス本人の個性とカリスマ性である。スティーブ・ジョブズの本を読んだ時にも思ったが、この人と仕事をしたいかどうかと聞かれたら、一緒に仕事をするのは我慢できないと思う。
ただ、ジョブズとは大きくタイプが異なる。ジョブズは理不尽で気まぐれであり独善的でもあるが、ベゾスは合理的で酷薄である。社員に対して優しい面を見せるときはあっても、基本は酷薄に感じる。さらに競争相手はもちろん、味方であるべき提携先に対しても酷薄である。ベゾスの考える未来を実現するためには手段を問わないのがAmazon.comなのだ。
それが端的に現れたのがKindle用の電子書籍を増やすための出版社との交渉だ。チーターが弱った動物を捕らえる方法になぞらえ「ガゼル・プロジェクト」と名付けたところから既に普通では考えられない(このプロジェクト名は法務室によって変更された)。何をやるかというと、電子書籍に協力的でない出版社の書籍はAmazon.comの上で推奨アルゴリズムから外してしまう。これをAmazon.comへの依存度が高い中小の出版社から脅しをかけるようにやっていったのだ。言わば兵糧攻めである。
僕は自分でも電子書籍を作って販売しているし、自分が買う本も、既に大半は電子書籍に移行している。電子書籍推進派ではあるのだが、正直このくだりを始め、Amazon.comが強大なパワーを持つようになってからの終盤のエピソードには辟易する部分が多かった。
それにしても500ページ近い分量で、それでもまだ駆け足に感じてしまうほど、この20年弱ですべてが大きく変わった。巨大ネット企業の誕生と成長に関心があるならば、絶対に読んでおくべき本である。
「イノベーションのジレンマ」「日の名残り」は本書の巻末に載っているベゾスお薦めの本から抜粋。「イノベーションのジレンマ」はビジネス書を読むのが好きでない自分も面白かった本。「日の名残り」は英国の失われつつある執事を主人公とする小説だが、ベゾスは「ノンフィクションより小説から得るものが多い」と言っているそうだ。ベゾスはこの本から何を得たのだろうか。
その中で、最終的に際立つのはやはりジェフ・ベゾス本人の個性とカリスマ性である。スティーブ・ジョブズの本を読んだ時にも思ったが、この人と仕事をしたいかどうかと聞かれたら、一緒に仕事をするのは我慢できないと思う。
ただ、ジョブズとは大きくタイプが異なる。ジョブズは理不尽で気まぐれであり独善的でもあるが、ベゾスは合理的で酷薄である。社員に対して優しい面を見せるときはあっても、基本は酷薄に感じる。さらに競争相手はもちろん、味方であるべき提携先に対しても酷薄である。ベゾスの考える未来を実現するためには手段を問わないのがAmazon.comなのだ。
それが端的に現れたのがKindle用の電子書籍を増やすための出版社との交渉だ。チーターが弱った動物を捕らえる方法になぞらえ「ガゼル・プロジェクト」と名付けたところから既に普通では考えられない(このプロジェクト名は法務室によって変更された)。何をやるかというと、電子書籍に協力的でない出版社の書籍はAmazon.comの上で推奨アルゴリズムから外してしまう。これをAmazon.comへの依存度が高い中小の出版社から脅しをかけるようにやっていったのだ。言わば兵糧攻めである。
僕は自分でも電子書籍を作って販売しているし、自分が買う本も、既に大半は電子書籍に移行している。電子書籍推進派ではあるのだが、正直このくだりを始め、Amazon.comが強大なパワーを持つようになってからの終盤のエピソードには辟易する部分が多かった。
それにしても500ページ近い分量で、それでもまだ駆け足に感じてしまうほど、この20年弱ですべてが大きく変わった。巨大ネット企業の誕生と成長に関心があるならば、絶対に読んでおくべき本である。
「イノベーションのジレンマ」「日の名残り」は本書の巻末に載っているベゾスお薦めの本から抜粋。「イノベーションのジレンマ」はビジネス書を読むのが好きでない自分も面白かった本。「日の名残り」は英国の失われつつある執事を主人公とする小説だが、ベゾスは「ノンフィクションより小説から得るものが多い」と言っているそうだ。ベゾスはこの本から何を得たのだろうか。