明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

年をまたいでしまいましたがトップ10企画の第3弾として2009年に読んだ本からトップ10を挙げていきます。このブログで紹介している本はわずかですが,なんだかんだで年間200冊くらいは読んでいる計算になります。大部分は小説なので,小説が多くなりますが,特に分野は分けずに紹介します。また,2009年に読んだというだけであって,発行はもっと古いものがほとんどです。

で,いきなりなのですが10個に絞れませんでした…トップ15に急遽変更。

15位●あたりまえのこと/倉橋 由美子
敬愛する作家倉橋由美子の最初で最後の文学論。文学論ではないが著者の好む作品を詳しく取り上げた「偏愛文学館」と合わせて読むと,その主張がよりよく分かると思う。

本書は1977年から1979年にかけて雑誌に連載した「小説論ノート」と,1996年から1998年にかけて発表した「小説を楽しむための小説読本」からなりますが,特に面白いのは前半の「小説論ノート」。作者特有の毒を吐きまくっている。抱腹絶倒。

後半は,年を取ってまるくなったのか,あるいは病気で先行きが長くないことを見越してのものか(後書きには「残された飛行時間は予測不能、恐らくはいくばくもないと思われる以上、小説以外の文章を書くことも発表することも、これをもって最後にいたします」と書いている),つまらないものへの言及はやや少なくなる(それでも村上春樹を切って捨てるところなど痛快だが)。

タイトルの「あたりまえのこと」というのは,おそらく「こんな簡単なことも分からないで小説を書いているのですか,あなたたちは」というような他の小説家への痛烈な皮肉なのであろう。


14位●イノベーションのジレンマ―技術革新が巨大企業を滅ぼすとき/クレイトン・クリステンセン
エスタブリッシュされた大企業がなぜ滅びるのか。顧客の声を聞くことが新しい技術への移行をかえって妨げてしまうという恐るべき事実を分析している。13位の本と合わせて読むことで,インターネット社会でこれまでの企業が全くもって安泰とは程遠いところにいることがわかるだろう。8年前の本だが今でも読む価値がある。


13位●フリー~〈無料〉からお金を生みだす新戦略/クリス・アンダーソン
現在の社会では様々なものの値段が無料か,限りなく無料に近い状態で供されるようになってきている。その代表がインターネットにおける様々な情報や楽曲のデータといったものだ。これらによって,これまでのビジネスモデルが成り立たなくなり,新しいモデルが必要になるさまを分析している。これらの動きは必然であり,多くの企業がその荒波にさらされる。そこから逃げようとしてもその分野で無料で提供する企業が登場した時点で,パラダイムは一変するので,自らそこに挑戦する以外に方法はない。
筆者は無料時代におけるさまざまな儲けの方法を書いているが,昨今の経済状況ではそれも難しくなっている面が大きい。あらゆる意味で今後を考えさせられる。



12位●テンペスト/池上 永一
舞台は幕末のころの琉球王国。孫家の長男として生まれるはずだった子は女の子だった。ショックの父親は名前さえ付けず,その子は3歳のときに自分で真鶴という名を付ける。養子の兄は勉学に不出来で失踪したあと真鶴は自らを宦官だといつわり男として生きることを決意する。それが本書の主人公「孫寧温(そんねいおん)」。

島津と清という強国の狭間で危ういバランスを取りながら生きる道を探す琉球王国。その史実をなぞりながらも破天荒な池上ワールドが展開する大娯楽作。池上永一作品はハチャメチャの度合いが過ぎてしまうところが難点だが,本書は歴史小説的な部分があるためか比較的おとなしめ。一方,本物の男性としても女性としても生きられない主人公の切なさを描くところは涙を誘う。 とにかく退屈することはないので一読あれ。



11位●博士の折り紙夢BOOK/川崎 敏和
2009年は折り紙をずいぶん折った。折り紙というと子供の遊びと思ってしまいがちだが,その奥深さに目覚めた本がこれ。このあと,前川さんの「本格折り紙」などもいろいろ折ったが,川崎さんの本は「どうやって折るか」をものすごく丁寧に解説しているので(中にはある折り紙を折るための練習作品を折る必要があるものも),本格折り紙入門としては最適では。「川崎ローズ」にこだわりたい人には新作の「究極の夢折り紙」もおすすめ。



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