Randall Grahm - the way back is the way forward - part II | Dr Vino」という非常に興味深いブログの記事が出ていました。Bonny DoonのRandall Grahmといえば,ワイン業界ではトリックスター的な存在。ユニークな言動やラベルデザイン,ワイン名で知られていましたが,2007年に売れ筋ブランドを売却してからはビオデナミ(バイオ・ダイナミクス)に熱心に取り組み,むしろ求道的な姿勢を強めています。例えば,オークの小樽を使って熟成する代わりに「パンチョン」と呼ぶ大き目の樽の古いものを使うようになっています。大きい樽を使うことで酸素との接触がさらに減り,ワインが長熟になると同時に,樽の風味がへってよりブドウと土地を表現しやすくなるという目的だそうです。

Randall Grahm
そのあたりの変化については,子供を持ったことや病気をしたことが影響しているとのこと(詳しくはこちらのインタビューを,これもかなり面白いです)ですが,今回のDr Vinoのインタビューは,コルクの話が中心です。

Bonny Doonは反コルクの急先鋒でもあり,2002年には「コルクの葬式」を開催。以降同ワイナリでは一切コルクを使っていません。インタビューではスクリューキャップを「an incredibly powerful tool for enhancing both the complexity of a wine as well as its longevity」と賞賛しています。

スクリューキャップについては「還元臭」を起こしやすいという指摘がありますが,Randallはそれについてコルクからでる「ケルサチン」が「チオール/ジスルフィド」から電子がでにくくしているのかもしれないという研究結果を紹介しています。つまり,そうなりやすいという事実はあるのですが,それでスクリューキャップがダメというわけではなく,SO2のレベルを下げたり,セラーにおける熟成期間を長くしたり,瓶詰めしてから出荷までの時間を延ばすことなどでコントロール可能だと考えています。

この問題を減らすためには酸素との接触を増やすといった方法もありえるということですが,今のRandallにとっては「Anything that slows down the maturation in wine in my belief is probably to the good」ということで,酸素とのふれあいはその考えに逆行しているということです。

世界が温暖化する中,よりよいピノの畑を求めてイギリス南部への展開を模索するなど,固定観念にとらわれない点は今までと変わっていませんが,長熟型のワインへの指向は過去のBonny Doonでは見られなかったもの。今や過去のBonny Doonとは別物と考えた方がいいのかもしれません。