先日、人工知能による囲碁のプログラムAlphaGoが一流のプロ棋士との対戦で4対1と勝利しました。正直、囲碁についてはまだかかるだろうと思っていたので、最初はかなりびっくりしました。しかし、棋譜を見ては感心するしかないレベルで、特にいつの間にか形勢がよくなっていた第2局はAlphaGoにとっては名局だったのかも、なんてことも思いました。

実は僕もかなり遠い昔の高校生時分には碁に打ち込んでおり、また大学では人工知能の周辺的なところを勉強していました。なので、人工知能にとって囲碁がどれほど難しい課題であるか、ざっくりしたイメージは持っており、かつては「コンピュータに負けたら一生碁は打たない」と思っていたこともありました(碁は実質的に全然打ってませんが)。

それだけに近年の人工知能の急速な進歩には驚くばかりであり、何が起こっているのか知りたいと思って読んだのが『人工知能は人間を超えるか ディープラーニングの先にあるもの』です。

著者は東京大学の気鋭の研究者である松尾豊さん。

とても分かりやすく書かれている本なので、人工知能やプログラミングなどのバックグラウンドがなくても全く問題なく読めます。あえていえばデータ分析について知っていると、ディープラーニングのところの理解がしやすいかもしれませんが、それも必須ではありません。

これまでの人工知能がどういう方法で何がネックになっていたか、ディープラーニングがその中のどういう部分をどのように解決しているのか、といったことが理解できます。

ディープラーニングのすごさも、限界も分かるので、今の人工知能ができることについては概ねイメージできるようになるでしょう。

今は人工知能は大きなブームになりかけていますが、過去のブームと同じように、買いかぶりすぎな部分もあるし、「人工知能の脅威」的な見方も、まだまだ現状では遠い話でしょう。研究が盛んになって、いろいろな成果が出てくるのはすばらしいですが、思ったように成果が出ないときに「使いものにならない」と思われてしまうのも残念です。

ブームに踊らされるのではなく、正しく理解をして期待もするための第一歩として本書が多くの人に読んでもらえるといいと思います。

ちなみに単行本は1500円を超えますが、電子書籍だと500円弱。お薦めです。