オーヴィッド、プリチャード・ヒルの雄 カベルネも美味しいがフランが格別
オーヴィッド(Ovid)はナパの中でも超一流のワイナリーや畑が少数精鋭で並ぶプリチャード・ヒルにあるワイナリーです。現在この地域にあるワイナリーは20程度。その中にコルギンやブライアント・ファミリー、シャペレー、コンティニュアム、デビッド・アーサーといった超有名ワイナリーがあります。先日「ワイン会でオーパス・ワン2012など」の記事で紹介したメランソンの畑はトアー・ケンワードや、プリド・ウォーカーといったこれも一流のワイナリーにブドウを卸しています。
オーヴィッドはその中で、もしかしたら若干地味な存在に見えるかもしれませんが、ワイン・アドヴォケイトでは最高99点を取っており、実績は十分(下の表参照)。今回は、そこの共同オーナーであるジャック・ビットナー氏が来日したのに合わせたセミナーに参加してきました。
ちなみに、オーヴィッドには2年前にナパ・ヴァレー・ヴィントナーズのツアーで訪問しています(ナパ2日め(1)――プリチャードヒルに初めて行く)。このときのオーナーだったパガーノ夫妻はその後、シルバーオークのオーナーであるデビッド・ダンカンにワイナリーを売却。その際に今回来日したジャック・ビットナー氏も共同オーナーになっています。
セミナーではまずプリチャードヒルの解説から。
プリチャードヒルは地質的には火山系の地質が中心で、鉄分が多く、赤い土壌になっています。表土は極めて薄く、5cmほども掘ると下は岩という厳しいところ。下はオーヴィッドで畑を作っていたときの写真ですが、岩が大きいのでダイナマイトで崩しながら取り除くという大変な作業だったようです。同様の話は近隣にあるコルギンの開発でも聞いたことがあります。この地質のために、ブドウの樹にはかなりのストレスがかかり、いいブドウができると言われています。
下は私がオーヴィッドの畑で拾った石。その赤さがわかるでしょうか。
また、オーヴィッドは、ナパ・ヴァレー側から見るとダラ・ヴァッレ(Dalla Valle)の上になるそうです。ダラ・ヴァッレといえば有名なのはカベルネ・フランを多く含んだマヤ(Maya)。そことの共通性があるため、オーヴィッドではカベルネ・フランにかなり力を入れています。実際、私がオーヴィッドに行ったときに試飲のワインとして供されたのもカベルネ・フランを中心とした「ヘクサメーター」でしたし、ワイン・アドヴォケイトで99点を取っているのもヘクサメーターです。
ワインメーカーは生え抜きのオースティン・ピーターソン。有名なアンディ・エリクソンがコンサルタントに入っていましたが、オースティン・ピーターソンの成長により、今年からは完全にアンディ・エリクソンの手は離れたとのことでした。また著名コンサルタントのミシェル・ロランは年に3回、主としてブレンド決めのために訪問するそうです。
ワインの醸造では、コンクリートの発酵槽を使用しているのが特徴です。四角いものが大小合わせて16個、丸いものが4個と、わずか1000ケースのワイナリーにしてはかなりの数を持っています。
ここはすべて天然酵母を使って発酵させています。コンクリートの発酵槽では発酵がゆっくり進み、タンニンが落ち着いてワインに緊張感が出るとのことでした。
樽は14社とかなり多くのものを使っています。通常の225リットルのものだけでなく300リットルや500リットルの樽も使っています。後述しますが、さまざまな実験を行っているのもここの特徴です。新樽率は60~65%。かつては新樽率100%だったこともあるそうですが、現在はこの程度に落ち着いています。
さて、ワインの試飲に移りましょう。試飲は白1種と赤5種。
白は唯一自社畑以外のブドウを使ったワイン。オーヴィッドで作っている唯一の白ワインでもあります。アマドールの南にあるキャラベラス郡からのソーヴィニヨン・ブランとアルバリーニョ、ヴィオニエ、ルーサンヌ。シエラフットヒルズからのグルナッシュ・ブラン、ヴェルメンティーノをブレンドしたというユニークなもの「2016 Experiment W3.6」というワイン名が付いていますが、このようにここのワイナリーではさまざまな実験的ワインを毎年作っておりExperimentというシリーズになっています。同じ手法のExperimentは作らないという徹底さ。このワインの生産量は4樽わずか90ケース(他のExperimentも同様です)。
香り豊か、花の香り、はちみつ、マーマレード。酸は柔らかく、旨味がしっかりあります。かなり面白くおいしいワイン。
次もExperimentで2012年の「V6.2」これはプティ・ヴェルドを中心にしたものでVはプティ・ヴェルドのV。その次の6は6ヴィンテージ目。最後の2は2012年を表しているとのこと。
プティ・ヴェルドというものの実はプティ・ヴェルド自体は20%弱で、70%近くはカベルネ・フラン、残りがカベルネ・ソーヴィニヨンという構成です。プティ・ヴェルドのタニックさはあるものの。それ以上にカベルネ・フランのやわらかな味わいが印象的です。スパイシーさや鉱物的味わいなどがプティ・ヴェルドらしいところでしょうか。面白いワインです。
次もExperimentで「R8.3」。Rはルートストックで3309という台木のブドウを使っています。この台木を使うと受精は低く、小さな実で果実味が強いのが特徴だそうです。品種はカベルネ・ソーヴィニヨンが66.71%。カベルネ・フランが28.86%、プティ・ヴェルドが4.43%。
カシスやブラックベリーの風味。緻密なタンニンときれいな酸があり、ストラクチャーがしっかりしています。非常にレベルの高いワイン。おいしいです。
4つめは最後のExperimentで「P5.5」。Pは500リットルの樽「Puncheon」の名前から。品種構成はカベルネ・ソーヴィニヨンが46.23%。カベルネ・フラン33.99%。メルロー13.87%。プティ・ヴェルド5.91%。
タニック。ブルーベリーの風味。2015年という新しいヴィンテージでもあり、まだこの先どうなるのか判断するのは難しく感じました。
残り2種はレギュラーのワイン。ヘクサメーター2014はカベルネ・フラン51%。カベルネ・ソーヴィニヨン37%。メルロー12%。
香りよく、余韻長く、かろやかさを感じます。力強さもあるのですがそれ以上にエレガントさとピュアな味わいが印象的。個人的にカベルネ・フランが好きというのもありますが、この味わいはカベルネ・フランを使ったワインの中でも間違いなくトップクラスだと思いますし、カベルネ・ソーヴィニヨンと異なる魅力を発揮しているという意味でもすばらしいワインです。
最後はレッド・ワイン2014。カベルネ・ソーヴィニヨン60%。カベルネ・フラン35%。メルロー5%。
緻密でタニック、ストラクチャーがあり、すばらしい余韻。これもカベルネ・ソーヴィニヨン系のワインとしてはトップクラスの一つだと思います。
個人的にはまずお薦めはR8.3。レッドワインと同程度のクオリティながら価格は2万円ほど安くなっています。オーヴィッドの入門としてもいいワインだと思います。
次にはヘクサメーター。フラン好きなら迷わず最初からこれに行ってほしいですし、フラン好きでない人にもぜひ飲んでみてほしいワイン。
最後にレッドワインは王道ですね。文句の出ないワインです。
オーヴィッドはその中で、もしかしたら若干地味な存在に見えるかもしれませんが、ワイン・アドヴォケイトでは最高99点を取っており、実績は十分(下の表参照)。今回は、そこの共同オーナーであるジャック・ビットナー氏が来日したのに合わせたセミナーに参加してきました。
ちなみに、オーヴィッドには2年前にナパ・ヴァレー・ヴィントナーズのツアーで訪問しています(ナパ2日め(1)――プリチャードヒルに初めて行く)。このときのオーナーだったパガーノ夫妻はその後、シルバーオークのオーナーであるデビッド・ダンカンにワイナリーを売却。その際に今回来日したジャック・ビットナー氏も共同オーナーになっています。
セミナーではまずプリチャードヒルの解説から。
プリチャードヒルは地質的には火山系の地質が中心で、鉄分が多く、赤い土壌になっています。表土は極めて薄く、5cmほども掘ると下は岩という厳しいところ。下はオーヴィッドで畑を作っていたときの写真ですが、岩が大きいのでダイナマイトで崩しながら取り除くという大変な作業だったようです。同様の話は近隣にあるコルギンの開発でも聞いたことがあります。この地質のために、ブドウの樹にはかなりのストレスがかかり、いいブドウができると言われています。
下は私がオーヴィッドの畑で拾った石。その赤さがわかるでしょうか。
また、オーヴィッドは、ナパ・ヴァレー側から見るとダラ・ヴァッレ(Dalla Valle)の上になるそうです。ダラ・ヴァッレといえば有名なのはカベルネ・フランを多く含んだマヤ(Maya)。そことの共通性があるため、オーヴィッドではカベルネ・フランにかなり力を入れています。実際、私がオーヴィッドに行ったときに試飲のワインとして供されたのもカベルネ・フランを中心とした「ヘクサメーター」でしたし、ワイン・アドヴォケイトで99点を取っているのもヘクサメーターです。
ワインメーカーは生え抜きのオースティン・ピーターソン。有名なアンディ・エリクソンがコンサルタントに入っていましたが、オースティン・ピーターソンの成長により、今年からは完全にアンディ・エリクソンの手は離れたとのことでした。また著名コンサルタントのミシェル・ロランは年に3回、主としてブレンド決めのために訪問するそうです。
ワインの醸造では、コンクリートの発酵槽を使用しているのが特徴です。四角いものが大小合わせて16個、丸いものが4個と、わずか1000ケースのワイナリーにしてはかなりの数を持っています。
ここはすべて天然酵母を使って発酵させています。コンクリートの発酵槽では発酵がゆっくり進み、タンニンが落ち着いてワインに緊張感が出るとのことでした。
樽は14社とかなり多くのものを使っています。通常の225リットルのものだけでなく300リットルや500リットルの樽も使っています。後述しますが、さまざまな実験を行っているのもここの特徴です。新樽率は60~65%。かつては新樽率100%だったこともあるそうですが、現在はこの程度に落ち着いています。
さて、ワインの試飲に移りましょう。試飲は白1種と赤5種。
白は唯一自社畑以外のブドウを使ったワイン。オーヴィッドで作っている唯一の白ワインでもあります。アマドールの南にあるキャラベラス郡からのソーヴィニヨン・ブランとアルバリーニョ、ヴィオニエ、ルーサンヌ。シエラフットヒルズからのグルナッシュ・ブラン、ヴェルメンティーノをブレンドしたというユニークなもの「2016 Experiment W3.6」というワイン名が付いていますが、このようにここのワイナリーではさまざまな実験的ワインを毎年作っておりExperimentというシリーズになっています。同じ手法のExperimentは作らないという徹底さ。このワインの生産量は4樽わずか90ケース(他のExperimentも同様です)。
香り豊か、花の香り、はちみつ、マーマレード。酸は柔らかく、旨味がしっかりあります。かなり面白くおいしいワイン。
次もExperimentで2012年の「V6.2」これはプティ・ヴェルドを中心にしたものでVはプティ・ヴェルドのV。その次の6は6ヴィンテージ目。最後の2は2012年を表しているとのこと。
プティ・ヴェルドというものの実はプティ・ヴェルド自体は20%弱で、70%近くはカベルネ・フラン、残りがカベルネ・ソーヴィニヨンという構成です。プティ・ヴェルドのタニックさはあるものの。それ以上にカベルネ・フランのやわらかな味わいが印象的です。スパイシーさや鉱物的味わいなどがプティ・ヴェルドらしいところでしょうか。面白いワインです。
次もExperimentで「R8.3」。Rはルートストックで3309という台木のブドウを使っています。この台木を使うと受精は低く、小さな実で果実味が強いのが特徴だそうです。品種はカベルネ・ソーヴィニヨンが66.71%。カベルネ・フランが28.86%、プティ・ヴェルドが4.43%。
カシスやブラックベリーの風味。緻密なタンニンときれいな酸があり、ストラクチャーがしっかりしています。非常にレベルの高いワイン。おいしいです。
4つめは最後のExperimentで「P5.5」。Pは500リットルの樽「Puncheon」の名前から。品種構成はカベルネ・ソーヴィニヨンが46.23%。カベルネ・フラン33.99%。メルロー13.87%。プティ・ヴェルド5.91%。
タニック。ブルーベリーの風味。2015年という新しいヴィンテージでもあり、まだこの先どうなるのか判断するのは難しく感じました。
残り2種はレギュラーのワイン。ヘクサメーター2014はカベルネ・フラン51%。カベルネ・ソーヴィニヨン37%。メルロー12%。
香りよく、余韻長く、かろやかさを感じます。力強さもあるのですがそれ以上にエレガントさとピュアな味わいが印象的。個人的にカベルネ・フランが好きというのもありますが、この味わいはカベルネ・フランを使ったワインの中でも間違いなくトップクラスだと思いますし、カベルネ・ソーヴィニヨンと異なる魅力を発揮しているという意味でもすばらしいワインです。
最後はレッド・ワイン2014。カベルネ・ソーヴィニヨン60%。カベルネ・フラン35%。メルロー5%。
緻密でタニック、ストラクチャーがあり、すばらしい余韻。これもカベルネ・ソーヴィニヨン系のワインとしてはトップクラスの一つだと思います。
個人的にはまずお薦めはR8.3。レッドワインと同程度のクオリティながら価格は2万円ほど安くなっています。オーヴィッドの入門としてもいいワインだと思います。
次にはヘクサメーター。フラン好きなら迷わず最初からこれに行ってほしいですし、フラン好きでない人にもぜひ飲んでみてほしいワイン。
最後にレッドワインは王道ですね。文句の出ないワインです。
オーヴィッド エクスペリメント アール8.3.[2013] Ovid Experiment R8.3.[2013] |
オーヴィッド ヘクサメーター レッドワイン ナパヴァレー[2014] (750ml)赤 Ovid Hexameter Red Wine NapaValley[2014] |
オーヴィッド レッドワイン ナパヴァレー[2014] |