ワシントン州最大手のワイナリー「シャトー・サン・ミシェル」が投資会社の「シカモア・パートナーズ」に売却されました。これまでの親会社はフィリップ・モリスなどで知られるタバコ会社のアルトリア・グループでした。

ワシントンのワイン業界においてサン・ミシェルの影響力は莫大です。なんと、ワシントンのワイン生産の約2/3がサン・ミシェル傘下のワイナリーによるものです。
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上の図はワシントン・オレゴンにおけるブランドですが、コロンビア・クレストや14ハンズなど20を超えるブランドを保有しています。

ワシントンのワイン業界は2020年、出荷量が8%減と非常に厳しい状況になりました。実はこの中でもシャトー・サン・ミシェルを除いた残りの1/3のワインで見ると出荷は増えています。サン・ミシェルの一人負けという格好だったのです。

シャトー・サン・ミシェルが得意とするのは10ドル以下の低価格帯のワイン。しかしこの価格帯のワインは米国では減少傾向にあります。コンステレーション・ブランズがカリフォルニアで多くのブランドをガロに売却したのも高価格帯にシフトするためでした。

シカモア傘下に入ることでどう変わるのかはわかりませんが低価格帯に何らかのテコ入れをしていく可能性は高いでしょう。この買収を扱った記事の中には、低価格帯でワシントン州のブドウを使い続けるかどうかという疑問を呈しているものもありました。

そうでなくてもワシントン州全体としてはブドウ余り、ワイン余りという状態ですから、サン・ミシェルがブドウ畑を手放すといったことになると業界全体にも影響が及ぶことになるかもしれません。

ちなみにサン・ミシェルはカリフォルニアにもいくつかのワイナリーを持っています。有名なところではスタッグス・リープ・ワイン・セラーズ、パッツ・アンド・ホールなどがあります。そちらは高級価格帯が多く、事業状況も悪くないので、そのまま変わらないだろうと見られています。