国内未輸入のナパのワイナリー「INNOVATUS(イノヴェータス)」のセミナーに参加してきました。
INNOVATUS
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INNOVATUSの創設者でワインメーカーのセシル・パークさんは韓国・ソウルの出身。大学を出て2001年に米国に来るまではワインを口にしたこともなかったといいます。そこからUC Davisでワイン造りを勉強し、2007年に韓国人としてはナパ初のワインメーカーになりました。カスタム・クラッシュとして有名なNapa Wine Co.のラボで働き、様々な有名なワイナリーやハイジ・バレットなどのワインメーカーとの経験や試飲を積み重ねました。また、ナパとソノマで40を超える畑を見てきており、有機栽培やサスティナブルの栽培についてもエキスパートです。
innovatus
ワイナリー名は「イノベーション(変革)」のラテン語。ラベルにはグリフィン(上半身が鷲または鷹で、下半身がライオンという伝説上の生き物)が描かれています。これはナパの起業家精神やセシルのこれまでの歩みの象徴です。韓国出身の女性ワインメーカーとして、日本におけるアキコ・フリーマンさんのようになりたいとのことでした。

変革の意味を持つワイナリー名とマッチする、このワイナリーらしいワインがCuvee(キュヴェ)という赤ワイン。2020年のものを試飲しましたが、57%ピノ・ノワール、37%シラー、6%カベルネ・フランというユニークな構成です。

ピノ・ノワールとシラーのブレンドというと、2000年代前半のピノ・ノワール・ブームで濃いピノ・ノワールがはやったころには、少量のシラーをブレンドしたピノ・ノワールというのが時折見られましたが、ここのように4割近くもシラーを入れるのを見たことがありません。ピノ・ノワールはカーネロス、シラーはカリストガ、カベルネ・フランはオークヴィルと、ナパの有名産地のブドウを使っています。

第一印象は甘草やプルーンの甘い香りでブラック・ペッパーなどのスパイシーさもありシラーらしさが感じられます。ストラクチャーもありますが、重厚なワインではなく、軽やかさが感じられます。美味しいし、面白い。ジェームズ・サックリングが92点を付けています。

白ワインではヴィオニエを作っているのがユニークです。ヴィオニエはナパでは2%にも満たない品種。ヨントヴィルの畑のブドウを使っています。2023年のヴィオニエはサックリング93点。

白い花の香りや白桃など、ヴィオニエらしさがムンムンとしています。アロマティックでバランスよく魅力的。ヴィオニエとして、特別感はありませんが、ナパのヴィオニエという希少価値はあります。

もう一つユニークなのがヴィオニエでスパークリングも作っていることです。100%カーネロスのヴィオニエを使い、瓶内二次発酵による本格的なスパークリング・ワイン。ドサージュは1%以下とドライな造りです。元々スチルワインのヴィオニエにするつもりで造っていたのですが、一次発酵が終わったところで、ピュアさと酸の強さから、スパークリングに向くのではないかと思って作ったワインだそうです。


イースト感少しあり、香りも豊かでフレッシュ。シャルドネベースのスパークリングと比べるとちょっとリッチな感じはあるかなあと思いますが、ヴィオニエらしい香りはあまり感じられませんでした。ユニークなワインだけに、味わい的にももう少しユニークさが欲しい感じはします。ある参加者は、瓶内二次発酵でなく炭酸ガス注入とかで、ヴィオニエのスパークリングにしてみた方が面白いのではないかという意見を言っており、確かにその方が味わいのユニークさは出るかもしれないと思いました。

あとの2本は品種的には珍しいものではありません。
2021年のジンファンデルはソノマヴァレーの86歳の樹齢の畑から。5%カベルネ・ソーヴィニョンを加えて味を引き締めています。

ザクロやレッドチェリーの赤果実の香り。口に含むとブルーベリーっぽさもあります。酸高くタンニンもあり、美味しいジンファンデルです。全房25%使用。

最後は2018年のカベルネ・ソーヴィニヨン。ラザフォードのブドウを使っています。
スパイシー、タニックで華やかなカベルネ・ソーヴィニヨン。美味しいですが、群雄割拠のナパのカベルネの中で特別感を出すのは難しいところに感じました。

キュヴェなどまた飲みたいと思わせてくれるワインもあり、輸入元が出てくることを期待しております。