ワイン・ブログの老舗で、現在はジャンシス・ロビンソンのサイトのライターとしても活躍するVinography(のアルダー・ヤロー)。そこに興味深い記事が載っていたので紹介します(Carved From the Mountain: The Wines of WeatherEye Vineyard)。

この記事で取り上げているのはウェザーアイ(Weathereye)という畑。ワシントン州のレッド・マウンテンAVAにあります。アルダーはここがワシントン州で最も素晴らしいワインを作る畑になる可能性があり、この畑のワインはワシントン州だけでなく米国のなかでも一番血眼になって探されるようなワインになるかも、としています。

プロジェクトを立ち上げたのはネイサン・ミアボルドの弟のキャメロン・ミアボルド。ネイサン・ミアボルドは知らない人もいるかもしれませんが、マイクロソフトで初のCTOになったすごい人。1999年にマイクロソフトをやめてからはベンチャーキャピタルを経営し、900を超えるパテントを持っています。さらに料理界でも有名で「モダニスト・キュイジーヌ」という本で、料理を科学的にひもとき、今ではバイブル的な扱いになっています。



弟のキャメロンもマイクロソフトに勤めていましたが、兄ほどの有名人ではありません。その彼が、レッド・マウンテンの頂上近くにブドウ畑を開拓できないかと考えたことからこのプロジェクトは始まっています。レッド・マウンテンはワシントンのヤキマ・ヴァレーの中にあるサブAVAでその名の通り、赤い山があります。ヤキマ・ヴァレーはミズーラ洪水による堆積物が基本ですが、ここは火山性の土壌です。その頂上近くはそれほど標高が高いわけではありませんが、非常に強い風が吹き抜ける過酷な環境。そこでキャメロンはワシントンの畑のコンサルタントとして有名なライアン・ジョンソンを雇い、そこに畑の開発が可能か、調べてもらうことにしました。

その結果、冒険をいとわないのであれば25エーカーは開発できる、となり、開発が始まりました。

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畑の大部分では写真のような「エシャラ仕立て」を採用しています。ブドウの木ごとに支柱となる棒を立てています。ブドウの木の間隔は1m✕1mとかなり狭くなっています。このほか一部の畑ではゴブレットと呼ばれるような仕立ても使っていますし、とりわけ風の強いエリアでは、岩を砕いた石で、ブドウの木1本ずつに石垣を作って風から守る、といったことまで行っています。スペインのカナリア諸島で似たような石垣がありますが、そこ以外では見たこともないような畑です。

ブドウはシラーを中心にグルナッシュやマルサンヌ、ヴィオニエなどローヌ系の品種が中心。いくつかのワイナリーにブドウを売るほか、自身のワイナリーも始めています。ブドウの供給を受けるワイナリーの中には「Kobayashi Winery」という日本人の奥さんと米国人の夫によるワイナリーもあります。

Vinousでは既に95点などの高得点ワインが続出しています。日本に入ってくるワインがあるかどうかはわかりませんが、要注目です。