ボルドーのシャトー・ペトリュスのオーナーとして知られるムエックス家がカリフォルニアに持つワイナリがDominus(ドミナス)です。1982年に旧InglenookのオーナーだったJohn Daniel Jr.の娘であるRobin Lailとその妹Marcia Smithとの共同プロジェクトとしてスタートし、1995年以降はムエックス家の単独所有になっています。
Yountville(ヨントヴィル)にあるNapanook(ナパヌック)という自社畑のブドウだけを使ってワインを作っています。この畑は19世紀からブドウが植えられており、1943年以降はJohn Daniel Jr.が所有していました。Johnの死後、畑を引き継いだRobin LailにRobert MondaviがChristian Moeixを引きあわせたことで、プロジェクトがスタートしました。
Dominusの最初のヴィンテージは1983年。1990年まではChristianの肖像が描かれたラベルでしたが、1991年以降、現在の文字だけのものになりました。また、セカンドラベルのNapanookは1996年から作られています。作っているのはいずれもボルドーブレンドのこの2種類だけです。どちらもカベルネ・ソヴィニョン主体でありながら、メルローを中心とするペトリュスに似た味だと言われています。
Dominusが最初の絶頂期を迎えたのが1990年代前半。Wine Advocate誌の評価で見ると1990年の95点から91年が98点、1992年が95点、不作で作られなかった1993年を飛ばして1994年が99点。100点のワインがほとんどなかった当時としては最高の評価のワインが続きました。1990年代前半はOpus OneやRidgeのMonte Bello、CaymusのSpecial Selection、Joseph PhelpsのInsigniaなどと並んで、カリフォルニアのボルドー系最高峰の一つとして知られていました。
ところが1998年~2000年にかけて、あまり評価の良くない年が続き、折からの「カルト・ワイン」ブームに隠れてやや目立たない存在になってしまいました。
2004年以降は94点、95+、96、98、99点(2008年)と評価はうなぎ登りですが、比較的値段も落ち着いていて、歴史があって、評価も高いワインの割には非常にお買い得になっています。時代が、エレガントなワインに向かっていることもあり、今後は再び注目が高まる可能性が高いのではないかと思っています。
ワイナリは環境に配慮しており、モダンなデザインになっています。非公開なのが残念なところ。