Harlan Estateといえば、いわゆるカルトワインの中でも人気実力トップクラスをずっと続けているワインです。Wine Advocate誌で100点を5回取っているというのは、世界でもほとんどありません。このHarlan EstateのオーナーであるBill Harlan氏が1990年代末に始めたのがBondです。2007年はHarlan EstateとBondのVecinaの2つでWine Advocate誌100点に輝いています。醸造設備はHarlanとは別ですが、すぐ近くにあり、同じチームが醸造に当たっています。
Harlanは自社の畑のブドウだけから作られているのに対し、Bondはすべて契約している畑。Bill Harlan氏は1980年代からナパ中の100もの畑を調べて、ワインを醸造しており、その中から厳選した「Grand Cru」の畑のブドウを使っています。すべてカベルネ・ソヴィニョン 100%であり、それによってテロワールを表現することを目標としています。
畑は全部で5つ。最終的には6つまで拡張する意向だといいます。
Vecina(ヴェチーナ、ヴェシーナ)はスペイン語で「近所」の意味。ここはBondワイナリのすぐ南東にあります。火山性の土壌とつきだした斜面にあるこの畑はOakvilleの西側の麓にあり、11エーカーの広さで、東に面しているため、涼しい朝の太陽をよく受けるといいます。パワフルで凝縮され、香り高いワイン。ブラックベリー、林の地面、香り高いミネラルの要素も特徴だといいます。前述のように2007年はWAで100点を取っています。
St. Eden(セイント・イーデン)は同じOakvilleですが、Silverado Trail側の赤土の地帯にあります。Screaming EagleやDalla Valleといった「カルト」ワイナリに近いところ。クレーム・ド・カシスや様々なハーブなどの味わい。きめ細かいタンニンも特徴です。
Merbury(メルベリー)はRutherford(ラザフォード)の東側、Lake Hennessey(レイク・ヘネシー)の北側の斜面にある畑。特徴は干しぶどうやアメリカンチェリーの芳醇な赤い果実と、スパイスやスミレの香りを思わせること。南側にLake Hennessyを望むので、朝の日の光を浴び、午後の気温はおだやかだそうです。
2006年に追加されたQuella(クエラ)はナパを見下ろすSt.Helenaの東の斜面にある畑。それまでおよそ10年も栽培をしていたといいます。畑は南西向きの急斜面で、元々は川底だったところ。丸い石や岩に混じって火山灰が積もっています。青系の果実、黒鉛、鮮やかで繊細なフィニッシュ。非常に複雑で、かつバランスがいいワイン。
Pluribus(プルリバス)はSpring Mountainの斜面の畑。標高300m以上のところにあります。名前はラテン語で「多くのために」。素晴らしいワインを作るために含まれる様々な様相を表すものです。例えば、太陽、土壌、寄稿、ワインを作る人々。息を飲むような山にある7エーカーの畑で、北・東・南東が開けています。地盤は火山性の岩盤。デビューは2003年。肉太でリッチ、凝縮されたワインであり、熟したプラム、煎ったコーヒー、杉の香りがどのヴィンテージにも共通の特徴です。森に囲まれているせいか、杉の木のような香り。ブルーベリーやミルキーのような甘さも一方で感じます。
このほか、これら5つの畑のブレンドであるMatriarch(メイトリアーク)というワインもあります。単一畑のものが2万円を軽く超えるのに対し、Matriarchは1万円程度と格安です。
既に専門家の評価などでは本家のHarlanに迫るレベルに達しているBond。どちらがいいとか悪いとかではなく、HarlanはHarlanという強い個性を持っているのに対し、こちらは様々なテロワールを表現することに重きを置いているのだと思います。それだけに、Bondの場合は一つのワインだけを飲むよりも、複数飲んでみることで、真価が現れそうに感じます。