カリフォルニアのカベルネ・ソヴィニョンやボルドー系ブレンドの中で実力トップといっても誰も文句を言わないでしょう。いわゆるカルトワインの中でも人気と実力を兼ね備えていることではナンバーワンです。世界一と呼んでもいいくらいです。
どれくらいすごいかというと、Wine Advocate誌で100点を5回。ボルドーでこれを超えるのはPetrusの6回くらい。ただ、Petrusは52ヴィンテージあるのに対し、Harlanはわずか18ヴィンテージ。平均点でも約97点と、ほとんど完璧に近い点です。満点をまだ出したことがないWine Spectatorでも96点以上が9ヴィンテージあります。市場価格も7万円~10万円以上とボルドーの1級に匹敵しています。
オーナーのBill Harlanはカリフォルニア大学バークレー校の学生時代にナパでワインのテイスティングをしたのがきっかけでワイン好きになったそうです。卒業後、不動産業で成功し、リゾート開発でナパに来ました。そこでRobert Mondaviと親交を深め、1979年にはRobertと共に欧州の銘醸畑を視察に行きます。また、Meadowood Resortを作ってNapa Valley Auctionを始めたりもしました。
最高のワインはすべて斜面の畑で作られていることに気付いたHarlanはOakvilleのベンチと呼ばれる西側の山沿い斜面の森を購入。そこを切り開いて畑を作りました。
ただ、そこからすぐにワインを作るのではなく1982年以降、他の畑からブドウを買い付けて醸造して、テストをするといった努力を積み重ねました。買い付け先は最終的には70にもわたり、これがBondにつながりました。
Harlanの畑のブドウでも1987年からワインを作り始めましたが、実際の最初のヴィンテージは1990年。これほどまでに水面下の努力を積み重ねてきたことが、今につながっているのでしょう。少なくとも、売らないワインをこれほどまでに何年も作り続けた例というのは聞いたことがありません。
ワイン作りも妥協を許さないものです。
Harlanの畑は約40エーカーですが、これを斜面の向きや品種、ルートストックなどで分類して40の区画に分け、それぞれ最適な収穫時期に収穫します。半日ずれただけでも味が変わってしまうとのことです。収穫したブドウは、一粒ずつよりわけてワインの質を落とすものを排除します。そうやってできたものがHarlanなのです。また、複雑さがやや少ないものなどは「セカンド・セレクション」のMaidenに回されます。Maidenは同じ畑ですが、より早く飲め、分かりやすいおいしさを目指しているとのことでした。
Harlanの味わいの特徴は、とにかくシルキーなこと。カベルネ・ソヴィニョンでこれほどきめの細かいワインはそうそうないでしょう。クリームブリュレを食べているかのような、ヴァニラの味わいとテクスチャも感じます。そういった「らしさ」があることも、ここの魅力を際立たせているのだろうと思います。