Marcassin(マーカッサン)は、「ワインの女神」と称された有名なワインメーカーHelen Turley(ヘレン・ターリー)が、夫の John Wetlaufer(ジョン・ウェットローファー)と作ったワイナリです。ジョンが畑の管理を主に担当し、ヘレンがワイン作りを主に担当します。
ヘレンとジョンは1990年代にColgin(コルギン)やBryant Family(ブライアント・ファミリー)、Pahlmeyer(パルメイヤー)などのコンサルタントを引き受けます。そこで作ったワインがこぞって評論家から高い評価を得て、1990年代末に起こったナパ・ヴァレーの「カルト・ワイン」ブームで一躍有名になりました。しかし、2000年以降は大半のワイナリから手を引いて、Marcassinに注力する姿勢を示しています。
2人がSonoma Coastに土地を購入したのは1985年。Sea Ridgeというワイナリのピノ・ノワールを飲んだのがきっかけだといいます。場所は太平洋から3.5マイル(約5.4km)しか離れていない山の上。標高は1200フィート(約365m)のところにあります。太平洋に近いため非常に涼しい地域ですが、山の上で霧が直接かからず、日光が十分に当たるため、ブドウの生育にはいい環境になっています。ここが後のMarcassin Vineyardとなります。
2人はこの畑を切り拓く一方で、1990年からは契約した畑のブドウを使ったワイン作りを始めています。1990年のLorenzo VineyardがWine Advocate誌でいきなり94点を得ました。ロバート・パーカーはKistlerやWilliams-Selyem、Calera、Au Bon Climatなどと並ぶカリフォルニアのトップのシャルドネとしています。
1995年からはMarcassin Vineyardのピノ・ノワールとシャルドネもラインナップに加わりました。1996年のMarcassin Vineyardシャルドネは1997年にロバート・パーカーは96点と評価。その後、試飲を繰り返すごとに点数が上がっていき、2000年には99点、2012年にはついに100点の評価を付けています。
パーカーがMarcassinのワインに100点を付けたのはこれが初めてではなく、2008年のMarcassin Vineayrdシャルドネを2011年に満点評価しています。これがカリフォルニアのシャルドネとして最初の100点であり、ソノマのワインとしても最初の100点でした。なお、パーカーがシャルドネに100点を与えたのは1986年のDRC Montrachet以来のことでした。また、2012年の試飲では前述の1996年のほか1998年、2001年、2002年にも満点評価が与えられています。
ピノ・ノワールではまだ100点は誕生していませんが、2003年のMarcassin Vineyardが99点、2007年が99+点と、こちらも素晴らしい評価を得ています。
Marcassinのワインはほとんどがメーリング・リストで販売されます。Webサイトもなく、連絡先も公開されていません。市場に出回るのはほとんどが「セカンダリ・マーケット」と呼ばれるメーリング・リストの顧客がオークションなどで販売するワインです。したがって価格も非常に高いものになります。
ワインのラベルは文字だけのものと、Marcassinの意である若い猪が描かれたものがあります。猪の方は自社畑のワインに使われています。日本のマニアの間では「赤猪」(Marcassin Vineyardのピノ・ノワール)、「白猪」(Marcassin Vineyardのシャルドネ)と呼ばれることもあります。