Hirsch(ハーシュ)はソノマ・コーストで最も古い畑の1つです。1978年にDavid Hirschが土地を購入。1980年に、約3エーカーのピノ・ノワールとリースリングの畑を作りました。
その後、1990年代に44エーカー、2000年代に25エーカーの畑を切り開き、ピノ・ノワールと少量のシャルドネを植えています。Hirschが購入した土地は1100エーカーにも及んでおり、ブドウ畑はその1割にも達していないことになります。
太平洋からわずか5km程度しか離れていない尾根の上で、10月から4月にかけては2000mmを超える雨量があるという地域。周囲はレッドウッドなどの林が中心で、人里からも離れています。サンフランシスコからなら2時間以上、Healdsburgからでも1時間半はかかるという僻地の畑です。
1980年代は、まだブドウ作りもお遊びのようなものだったようですが、1994年にWilliams-SelyemのBurt Williams、KistlerのSteve Kistler、LittoraiのTed Lemonといった大物が相次いでブドウの買い付けに来て、一気に地域を代表する畑になりました。その後もFailla、Siduriといった著名ワイナリにブドウを売るようになりました。有名な評論家のマット・クレイマーは、カリフォルニアで「グラン・クリュ」と呼ばれるような畑が出てくるかどうかという記事の中で、HirschとMartinelliの持つBlue Slide Ridge、FlowersのCamp Meeting Ridgeの3つの畑をその資格ありとして取り上げています。
2002年に、自社でのワイン作りを開始。2009年からはエレガントなワイン作りで定評のあるRoss Cobbをワインメーカーに迎えています。2013年現在の生産量は約5000ケースで、ブドウの半分強を自社ワインに使っています。
ワインはピノ・ノワールを6種程度と、シャルドネ。いずれも100%自社畑です。一番生産量が多いのが「San Andreas Fault」のピノ・ノワールで3000ケースあまり、次いで「Bohan Dillon」のピノ・ノワールが1000ケースあまり。後はいずれも300ケース前後です。
2009年の「East Ridge」ピノ・ノワールがWine Advocate誌で95点を付けるなど、近年はワインの評価も上がっています。これまでは知る人ぞ知るといったところもありましたが、今後は地域を代表するワイナリの1つになっていくかもしれません。
また、近年ワイナリに加わったDavidの娘Jasmineがスポークス・パーソンとしての存在感を増しています。バランスの取れたピノ・ノワールを作ろうというIn Pursuit of Balance(IPOB)という業界団体を立ち上げるなど対外的にも活躍しており、今後が期待されます。