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Date: 2022/0531 Category: テイスティング・ノート
Posted by: Andy
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ワインセラーに入り切らないワインが一向に減らないため、その消費を兼ねてワイン会を開きました。せっかくなのでセラーにずっといた熟成ワインを中心に飲みました。



ワインのラインアップはこの6本。
Bevan Cellars Sauvignon Blanc Dry Stack Vineyard 2019
Patz&Hall Chardonnay Alder Springs Vineyad 2000
Saint Joseph Lou Dumont lea Selection AOC Saint Joseph 1999
Saintsbury Syrah Rogers Creek Vineyard 2007
Patz&Hall Pinot Noir Pisoni Vineyard 2000
Spottswoode Cabernet Sauvignon 2005

3本目だけローヌのシラーです。ブルゴーニュ「ルー・デュモン」の仲田晃司さんが蔵出し古酒を厳選した「レア・セレクション」として販売されたもの。元々、これとカリフォルニアの熟成シラーを比べてみたいというのも、会の目的の一つでした。

お店は赤坂の「あじる亭Annesso」です。あじる亭は赤坂に2店舗ありますが、こちらに来るのは初めてです。



酸化したワインばっかりだときついなあと1本目は古酒でないソーヴィニョン・ブランです。

Bevan Cellars Sauvignon Blanc Dry Stack Vineyard 2019

ビーヴァン・セラーズのオーナー・ワインメーカーであるラッセル・ビーヴァンは、ワインマニアからワイン造りに転向した中でも稀有の成功例といわれています。ナパとソノマの様々な畑からワインを作っており、ナパのワインでは「パーカー100点」を10回以上取得しています。

このソーヴィニョン・ブランはソノマのベネット・ヴァレーのドライ・スタック・ヴィンヤードのもの。イタリア由来のクローンを使っているとのことです。カリフォルニアでもトップクラスのソーヴィニョン・ブランに名を連ねようとしているワイン。

無濾過で作られているため、ワインに濁りが見られます。ソーヴィニョン・ブランではかなり珍しい。青っぽい要素や、グレープフルーツ的な軽い苦味を伴う酸味もありません。はちみつやメロンの香り、パッションフルーツ、白い花。非常に香り豊かです。甘ったるいわけでもなくほどよい酸味でバランスもいい。とてもレベルの高いソーヴィニョン・ブランです。前の週に飲んだシェアード・ノーツとは全く違ってそれもまた面白い。


暑い日に嬉しいガスパチョ。ソーヴィニョン・ブランにもよく合いました。

Patz&Hall Chardonnay Alder Springs Vineyad 2000

2番めのワインは一番心配だった2000年のシャルドネです。
パッツ&ホールはドナルド・パッツ、ジェームス・ホール(ワインメーカー)と二人のパートナーであるヘザー・パッツ、アン・モーゼスが1988年に設立したワイナリー。当時は珍しかった「ネゴシアン」タイプのワイナリーで、ソノマを中心に優れた畑と契約してシャルドネとピノ・ノワールを造っています。現在はドナルド・パッツ夫妻はパッツ&ホールを離れて別のワイナリーを始めています。アルダー・スプリングス・ヴィンヤードはメンドシーノの畑で、有名なアンダーソン・ヴァレーよりもまだだいぶ北の人里離れたところにある畑です。海から18km程度、標高600~900m、急斜面という厳しい環境でブドウを栽培しています。この畑のワインは、カリフォルニアワインにしては珍しいほど果実味よりもミネラル感などを感じられるもの。2000年のこのワインについてはロバート・パーカーは「バタール・モンラッシェを彷彿とさせる」と書いています。


琥珀から、やや褐色になりかかった色合い。味はまだかろうじて生きています。シャルドネであるのはわかりますが、さすがに熟成のピークは過ぎてしまっています。杏やちょっと紹興酒っぽさもでています。


前菜のお皿はいろいろ乗っていて楽しい。マヨネーズを使っていないポテトサラダがお気に入りでした。

さて次はシラー仏米対決?です。
Saint Joseph Lou Dumont lea Selection AOC Saint Joseph 1999

グラスの写真を取り忘れましたが、茶褐色でかなり熟成は進んでいます。シラーのスパイス感や獣っぽさなどはほとんどなく、赤ワインとしかいいようのない状態。これはこれで美味しくいただきましたが、シラーとして期待するものとはちょっと違うところに行ってしまった感じはありました。


魚介の煮込みです。

Saintsbury Syrah Rogers Creek Vineyard 2007
さて、一方カリフォルニアのシラーはセインツベリーのもの。セインツベリーというとピノ・ノワールが有名ですが、実はシラーも作っています。このワインはインポーターの布袋ワインズがワイナリーの在庫から発掘してきたもの。現在は別の畑の熟成シラーが売られています。

こちらも写真を取り忘れましたが、まだ赤紫色がかなり残っており、若々しさもあります。スパイスやグラファイト、鉛筆の芯、ブルーベリーなどまだまだ元気。本当に15年経っているの? と思うほどでしたが、ボトルには大量の澱が残っておりそこに熟成感を感じました。まだ10年くらいは全然大丈夫そうな雰囲気です。シラー好きとしてはやっぱりこれくらいシラーらしさがある方が美味しく感じます。

Patz&Hall Pinot Noir Pisoni Vineyard 2000
ピゾーニですよ、ピゾーニ! サンタ・ルシア・ハイランズをピノ・ノワールの銘醸産地として世界に認めさせたその立役者といっていいでしょう。パッツ&ホールは1990年代からピゾーニのピノ・ノワールを作っています。私自身ピゾーニの畑のことを最初に知ったのはパッツ&ホールのメーリングリストでのことでした。なかなかこれくらい熟成したピゾーニを飲む機会はないので、私自身この日一番楽しみにしていたワインです。


写真でみてもわかるように、22年経っているとは思えないほどの若々しさ(ちなみに右のグラスがセインツベリーですね)。フランボワーズやザクロなどの赤系果実の風味もしっかりのこっています。熟成によるマッシュルームのような要素もあります。さすがにリリースしたてのような爆発感はないですが、非常にきれいに熟成しつつ、若さも保っておりとても美味しい。ここまで元気とは予想しませんでした。素晴らしい。


料理は赤ワイン煮込みで、この後の稚鮎のパスタは写真撮り忘れました。どちらかというと稚鮎にピノ・ノワールをあわせたほうがよかったかも。

Spottswoode Cabernet Sauvignon 2005
最後はスポッツウッドのカベルネ・ソーヴィニヨンです。

これは、まだまだ行けるに決まっているだろうと思って出しましたが、その通り。もう10年くらいしたほうが良かったかもしれません。パワフルでしなやか。素晴らしいカベルネ・ソーヴィニヨンです。



デザートも美味しゅうございました。店長兼ソムリエの野村美紀子さんには古いワインの抜栓ばかりでだいぶ苦労をおかけしてしまいましたが、気持ちよくサービスしていただきました。

うちのセラーには、これくらいのもう飲んであげたほうがいいだろうなというワインがまだいくらかありますから、お暇な方はお付き合いください。

セインツベリーの熟成シラー。むちゃくちゃお買い得だと思いますよ。

Date: 2022/0523 Category: テイスティング・ノート
Posted by: Andy
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ネット上では20年来の知り合いであり、でもリアルで合ったのは半年前が初めてという安ワイン道場師範のサイト25周年パーティに参加してきました。場所は豪徳寺駅近くのワインステーションさん。南アフリカワインとオレンジワインを主体とするワインバーです。

ワインは各自の持ち寄り。総勢17名でワインも17種です。
会の詳しいことは「2022年5月:稽古日誌」に記されているので省きますが、私が持って行ったのがシェアード・ノーツ(Shared Notes)の「レ・ルッソン・デ・メートル(Les leçons des maîtres) 2019」です。記事の中でのNaotakaさんのコメントは「カリフォルニアの美味しい白ワイン」。そりゃそうですが、あまりにも情報量がないので、自分の感想を書いておきます。

このワインを選んだのはワインの名前が「師匠(師範)の教え」という意味だからですが、カリフォルニアの中でも素晴らしいソーヴィニヨン・ブランだと思っているからでもあります。

このワインはソーヴィニヨン・ブランとセミヨンを使ったいわゆるボルドー系のブレンドです。シェアード・ノーツではこれとソーヴィニヨン・ブラン100%のロワール系の2つのソーヴィニヨン・ブランだけを作っています。

ワインメーカーは元ウェイフェアラー(Wayfarer)のビビアナ・ゴンザレス・レーヴと、ピゾーニ(Pisoni)のジェフ・ピゾーニという超一流ワインメーカー夫婦。ビビアナはボルドーのシャトー・オー・ブリオンで修行していたことがあり、そのためにこの「師匠の教え」という名前を付けたそうです。

自分の持って行ったワインなので、ちょっとだけ真面目に飲みました。華やかな香りですが、トロピカルというよりは道端の白い花のイメージ。いきいきとした酸味、熟し切る手前の桃、セージのようなハーブ。うっすらと木の香り。

このワイン、新樽100%なのですが、いわゆる樽香ムンムンではありません。ローストをかなり軽くしているそうで、どちらかというと新しい家のようなすがすがしい木の香りに近い感じがします。また、マロラクティック発酵をしていないので酸もフレッシュな感じを保っています。ちなみに、このワインを最初に作るとき、マロラクティック発酵をするかどうかで夫婦げんかがあったそうです。ビビアナは「師匠の教え」通りにマロラクティック発酵をするつもりだったのですが、ジェフがしない方がいいといい、結局はなしにしました。今ではビビアナもしなくて良かったと言っています。

近年増えているソーヴィニヨン・ムスケを使った香りむんむんのソーヴィニヨン・ブランも好きですが、これはこれでとてもスタイルを持っていて好きなワインです。持って行ってよかったと自画自賛。


Date: 2022/0517 Category: テイスティング・ノート
Posted by: Andy
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どうしてもピノ・ノワールが飲みたくなったのですが、手頃なワインが見当たらず、ちょっといいワインを開けてしまいました。

桃井隆弘さんが作るアーサー・セラーズのピノ・ノワール、2019年のKR Ranchです。KR Ranchは以前はKeefer Ranchと呼んでいましたが、コスタブラウンが畑を買って、その名前が付けられなくなったため変更したのでした。それだけの銘醸畑です。

味わいは赤系のベリーにかつお節系の旨味がたっぷり。酸も強すぎず、癒やし系のワインです。カリフォルニアワインというとガツンとした味わいのものばかりというイメージもありますが、こんな優しくて美味しいワインもあります。

2020年は火事の煙の影響でワイン作れず、今年のリリースはないそうですが、毎年楽しみなワインの一つです。