カリフォルニアのシラーについての歴史的な考察を、Wブレイク・グレイ氏がまとめています(Whatever Happened to California Syrah? | Wine News & Features)。話の内容は、ローヌ・レンジャーのイベントで、「American Rhone」の著者であるパトリック・コミスキー氏が語ったものだとのこと。

1995年にわずか1331エーカーしかなかったシラーの畑は2000年には12699エーカーたと、約10倍に急拡大しました。主に、暑いセントラル・ヴァレーや、沿岸では比較的温暖なパソ・ロブレスがその中心でした。2005年には、さらにその1.5倍にまでシラーの畑は広がり、「next big thing」と言われていました。

しかし、シラーはそのまま花開かずに今まで来ています。

理由は二つあるといいます。一つは、シラーが植えられた地域が温暖すぎて、素晴らしいシラーが少なかったこと。もう一つは、「next big thing」をピノ・ノワールに持っていかれてしまったこと。コンシューマーの興味は完全にピノ・ノワールに行ってしまい、シラーはあまり見向きされなくなってしまいました。

ただ、シラーはミレニアル世代に人気が高い、まろやかな味の「レッド・ブレンド」にジンファンデルなどとともに主要なブレンド品種として使われています。そういった「シラー」という名を表に出さない形ではある程度普及したとも言えます。

ちなみに今後のシラーの普及に重要な街はバークレーだとのこと。レストラン「シェ・パニース」など、美食の街であり、カーミット・リンチなどの輸入業者もあります。そこが、中心になって、シラーの普及を期待しているようです。

ただ、シラーは以前から評論家の評価は高いんですよね。ローヌ好きとしても知られているロバート・パーカーはシネ・クア・ノンなどカリフォルニアのシラーにも高い点を付けていますし、ナパでカベルネ以外で初の満点を取ったのもコルギンのシラーでした。コングスガードやシェーファーといった超一流ワイナリーも素晴らしいシラーを作っています。パソロブレスのサクサムも素晴らしいシラーを作っており、入手もかなり困難です。

そういった高品質でマニアにも引く手数多なシラーがある一方で、普及価格帯のシラーというとこれというのを思いつかないのが、残念なところ。ニーズがないから作られないのか、作られないから売れないのか難しい問題です。