先日の「ニュー・カリフォルニア」試飲会で、非常に珍しいヴァラエタルのワインがありました。ブロック・セラーズの「ミッション」 “サマーズ・ヴィンヤード”です。

ミッション種というのは、スペインの宣教師がキリスト教の布教のために伝道所「ミッション」をカリフォルニアに次々と建てていったのですが(南はサンディエゴ、北はソノマまで21のミッションが作られ、それをつなぐ道が「エルカミノ・リアル」でした)、そこでワインを作るために植えられた品種が「ミッション」です。

いわば、カリフォルニアで一番古いワイン用ブドウの品種ともいえるわけですが、現在ではミッションはほとんど残っていません。このサマーズ・ヴィンヤードのブドウもいつ植えられたものだかはっきりしないのですが、最低でも60年は経っているものとみなされています。

ミッション種は赤ワインようのブドウですが、色がさほど濃くならないため、このワインではボージョレ・ヌーボーと同じマセラシオン・カルボニックで色を抽出しています。比較的淡い味わいで、一般的なカリフォルニアワインとは大きく異なりますが、カリフォルニアワインの歴史を感じられるワインとなっています。

で、タイトルに戻りますが、このミッション種はチリでも同様に布教とともに広がり(カリフォルニアより古く16世紀のことです)、「パイス」と呼ばれています。パイスは庶民用のワイン(酸化した味わいで決しておいしいものではないらしいです)を作るために使われたため、今でも広く作られていますが、近年ではより洗練されたワインを作るために使う生産者も増えています。

カリフォルニアワインのインポーターである布袋ワインズもそういった歴史に共鳴してパイスのワインを輸入しています。これも軽い味わいでおいしいワインです。Wine Advocate誌で92点。濃いワインに高い点を付けると言われている同誌ですが、こういったワインもちゃんと評価しているのはさすがだなあと思います。

このほか、色が濃くないことをいかしてロゼのスパークリングを作っている生産者もいます。エノテカが輸入しているミゲル・トーレス・チリのものは試飲したことがありますが、チャーミングで予想以上においしいスパークリングでした。

古くて新しいワイン、パッションとパイス。ある意味、「ネオクラシカル」などといわれる流行の最先端のワインです。