【読書感想】東京ワイン会ピープル/樹林伸
マンガ『神の雫』の原作者である樹林伸さんが、初めてワインの小説を書きました。題して『東京ワイン会ピープル』。
第1会 DRCエシュゾー2009年
第2会 シャトー・マルゴー1981年
第3会 ドン・ペリニヨン・ロゼ2004年
第4会 シャトー・ディケム1910年
第5会 ドメーヌ・不ルーロ・ラローズ ル・モンラッシュ1991年
という5話の構成で、タイトル通り、東京で開かれるワイン会での人間模様を描いています。
主人公は26歳で不動産会社に勤めるOLの桜木紫乃(しの)。紫という字を使ったのはワインの色にかけているのか、それとも源氏物語の紫の上とイメージを重ねているのか。というのは、彼女は第1会で、同僚の雨宮千秋に初めてワイン会に連れられていき、そこでIT会社社長の織田一志と知り合いになるのです。織田はワインに詳しく、毎週のようにワイン会を主催しているのですが、事情があってしばらくそれに出られなくなります。そこで紫乃に代わりにそれに出て報告を送ってもらうというそういう契約をするのです。この、織田が紫乃をワインマニアとして育てていく感じが、ちょっと源氏物語チックに感じられたのですが、それは穿ち過ぎでしょうか。
ともかく、こうしてワイン会に参加するようになった紫乃ですが、彼女は『神の雫』ばりにイマジネーション豊かなテイスティング・コメントをつぶやくのです。織田もその才能に惚れ込んだということなのでしょう。ただ、神の雫のテイスティング・コメントは、いきなり情景の中に飛び込んでしまうのに対し、この小説ではもっと普通の、アロマや味わいを表現する言葉も使われています。その分、こちらの方が実際の味は想像しやすい感じがします。
このように、味覚・嗅覚、そしてそれを言葉にすることは天才的な紫乃ですが、ワインについては素人ですから、一生懸命勉強して知識を身に着けていきます。本書はそういったワインの教科書的な部分もあります。ワインを知らない人が、これを読んで「ワインっておいしそう」「このワインの世界に触れてみたい」と思えば、作者にとっては願ったりかなったりだと思います。正直、僕もここに出てくるワインを飲みたくなりました。
ちなみに、カリフォルニアワインで登場するのは第1会の初めてのワイン会で「ザ・プリズナー」が出てきたのと、第3会でオーパス・ワンの2013年が出てきただけでした。どちらも、否定的には書かれていなかったのでよかったです。
小説の中での取り上げやすさを考えると、やはりボルドーやブルゴーニュ、シャンパーニュになってしまうだろうな、というのはわかります。それでも1話くらいニューワールド系を主役にしてほしかったとも思います。フランスのワインへのあこがれでワインを飲み始めた人は、どうしてもニューワールドを下に見てしまいがちですから(そういえば、第1会の最初のワイン会はニューワールドが中心で、織田さんはそれをちょっと否定的なニュアンスで使っていました。そこは気になったところ)。
という愚痴は置いておいて、気軽に読めて、ワインを飲みたくなる、そんな小説です。
第1会 DRCエシュゾー2009年
第2会 シャトー・マルゴー1981年
第3会 ドン・ペリニヨン・ロゼ2004年
第4会 シャトー・ディケム1910年
第5会 ドメーヌ・不ルーロ・ラローズ ル・モンラッシュ1991年
という5話の構成で、タイトル通り、東京で開かれるワイン会での人間模様を描いています。
主人公は26歳で不動産会社に勤めるOLの桜木紫乃(しの)。紫という字を使ったのはワインの色にかけているのか、それとも源氏物語の紫の上とイメージを重ねているのか。というのは、彼女は第1会で、同僚の雨宮千秋に初めてワイン会に連れられていき、そこでIT会社社長の織田一志と知り合いになるのです。織田はワインに詳しく、毎週のようにワイン会を主催しているのですが、事情があってしばらくそれに出られなくなります。そこで紫乃に代わりにそれに出て報告を送ってもらうというそういう契約をするのです。この、織田が紫乃をワインマニアとして育てていく感じが、ちょっと源氏物語チックに感じられたのですが、それは穿ち過ぎでしょうか。
ともかく、こうしてワイン会に参加するようになった紫乃ですが、彼女は『神の雫』ばりにイマジネーション豊かなテイスティング・コメントをつぶやくのです。織田もその才能に惚れ込んだということなのでしょう。ただ、神の雫のテイスティング・コメントは、いきなり情景の中に飛び込んでしまうのに対し、この小説ではもっと普通の、アロマや味わいを表現する言葉も使われています。その分、こちらの方が実際の味は想像しやすい感じがします。
このように、味覚・嗅覚、そしてそれを言葉にすることは天才的な紫乃ですが、ワインについては素人ですから、一生懸命勉強して知識を身に着けていきます。本書はそういったワインの教科書的な部分もあります。ワインを知らない人が、これを読んで「ワインっておいしそう」「このワインの世界に触れてみたい」と思えば、作者にとっては願ったりかなったりだと思います。正直、僕もここに出てくるワインを飲みたくなりました。
ちなみに、カリフォルニアワインで登場するのは第1会の初めてのワイン会で「ザ・プリズナー」が出てきたのと、第3会でオーパス・ワンの2013年が出てきただけでした。どちらも、否定的には書かれていなかったのでよかったです。
小説の中での取り上げやすさを考えると、やはりボルドーやブルゴーニュ、シャンパーニュになってしまうだろうな、というのはわかります。それでも1話くらいニューワールド系を主役にしてほしかったとも思います。フランスのワインへのあこがれでワインを飲み始めた人は、どうしてもニューワールドを下に見てしまいがちですから(そういえば、第1会の最初のワイン会はニューワールドが中心で、織田さんはそれをちょっと否定的なニュアンスで使っていました。そこは気になったところ)。
という愚痴は置いておいて、気軽に読めて、ワインを飲みたくなる、そんな小説です。