シャトー・イガイタカハで知られている杉本隆英さんの本を読みました(レビュー用に事前に原稿をいただいています)。

古くからの本ブログの読者はご存知だと思いますが、杉本さんとはもう20年近い付き合いがあります。

「カリフォルニアワインの玄関口」を開設したのが1999年8月15日(この日を選んだことには特に意味はありません)だったのですが、それから1週間くらいたったときに、初めて読者からのメールをもらいました。それが杉本さんでした。

そのメールには、「僕もこういうサイトをやりたかった。先を越されてしまった」といった話が書いてあったのですが、その年の年末には「カリフォルニアワインのファンクラブ」(CWFC)を立ち上げ、またたくまに人気サイトになってしまいました。当時は杉本さんのハンドル名が「ナパ」だったので、今でも僕にとっては杉本さんと呼ぶよりナパさんと呼ぶ方がしっくりします。

私も、CWFFCでは「副会長」という名誉をいただき、掲示板やワイン会などで、みなさんと楽しく付き合わせていただきました。中にはワインマニアの方もいれば、マニアでなくちょっとワインが好きくらいの方も大勢いらっしゃいましたし、ワインに関する仕事をされている方もかなりいらっしゃいました。僕にとってもこのころ知り合った方々は、いろいろな意味でベースになっていると思います。今から考えれば、CWFCを始めたころの私の知識や経験は、全然浅いもので、もっと詳しい方々もたくさんいたと思うます。それでも副会長としてやらせていただけたのは、皆さんいい人ばかりだったのだなあと改めて感じます。そういう人たちが集まったのも、人を大事にする杉本さんの人柄によるのでしょう。

本書には、このあたりのエピソードがかなり詳しく書かれています(私は登場しませんが)。当時のCWFC会員だったり、CWFCを見ていた方にとってはとても懐かしく読めるのではないかと思います。

CWFCは2010年ころに解散しました。私はその後も10年1日のごとく、このサイトを続けていますが、杉本さんは次のステップとしてワイン作りの方に行きました。そして、グレッグ・ブリュワーやポール・ラトーといった超一流のワインメーカーと親交を持ち、ワインを作ってもらうようになり、今にいたるわけです。

もちろん本書にはこのあたりのエピソードも詳しく書かれています。私が知らなかった話もいろいろあり、私も読んでいてどきどきしたり、ワクワクしたりしました。

進む道はわかれてしまったナパさんと私ですが、「カリフォルニアワインが好き」で「カリフォルニアワインのことをもっと多くの人に知ってほしい」と思う気持ちは共通で、道は離れても、目標としてはつながっているようにいつも感じます。

そして、もう1つ大事なのは「人」。ナパさんはCWFCのころからワイン会の冒頭に必ず、主役はワインではなく人なんだという話をしていました。ワインは人と人とのつながりを活性化する触媒みたいなものだと考えているわけです。

杉本さんが、多くのワインメーカーの知己を得たのもそのためだと思いますし、今、シャトー・イガイタカハで全国各地でワイン会を開催していますが、それも人とのつながりを大事にした結果なのだと思います。

本書のタイトルである「幸せになりたければワインを飲みなさい」というのも、ただワインを飲めばいいということではなく、ワインを飲むことで人とのつきあいをよりよくし、それが幸せにつながっていくのだということを伝えたいのだと思います。

CWFCが終了して以降、実際にお会いすることは大分減ってしまいましたが、それでも道はつながっているし、気持ちの奥底で「盟友」なのではないかと私としては勝手に思わせていただいています。

本書を読んだ方も、ワインを媒介にして人とのつながりを今よりももっともっと良くしていただけたら、それが幸せになっていくのではないかと思います。よかったらぜひ読んでみてください。