ジェイソン・ウイルソンというワイン評論家が「ヴィナス(Vinous)」などのワイン・メディアがスポンサーを優遇していることを暴露する記事を書いており、話題になっています(Wine Media Is Broken: A Case Study - by Jason Wilson)。彼自身、以前何回かヴィナスにレポートを書いたことがあります。

これにいち早く反応したのが、以前ワイン・アドヴォケイトのレビュアーだったジェブ・ダナック(Jeb Dunnuck)。以下のツイートから9つのツイートで意見を述べています。


今回、告発したのは大手ブランドやワイン産地の広報を行っている会社が、あるワイン・メディア(ヴィナスと特定はしていません)に年間2万5000ドル(約350万円)を払っているという話。ただ、これでレビューの点を上げているではありません。レビューが公開される2日前にレビューを見ることができるという権利と、点数が低いワインは掲載を取り下げてもらうという権利を得ているとのことです。また、ある別のワイン雑誌は、広告を購入しないと、その地域のワインはレビューしないと広告主に伝えているとも。

このほか、ジェイソン・ウイルソン氏自身の体験として、彼が書いたレビューの地域のワインをアントニオ・ガッローニが再レビューして高い点を付けたことがありました。その高い点が付いたレビューを調べるといずれも同じ広告主のワインだったことがわかりました。これも、高いレビューのワインだけを残しているのではないかと疑いをかけています。

そもそも、ワインレビューの草分けであるロバート・パーカーのワイン・アドヴォケイトは、広告を入れない独立したレビューであることを売り物に人気を伸ばしました。それでも2011年にはジェイ・ミラーというレビュアーがあるワイナリーに行くのに金銭を要求したというスキャンダルが発覚して大きな問題になったことがあります。

ヴィナスはこれまで清廉潔白なイメージがあったので、ちょっと今回の告発は驚きました。なかなか有料購読者からのフィーだけではやっていけないということなのでしょうか。

チャールズ・クリュッグのモンダヴィ家の女性姉妹も以下のようなツイートをしています。


また、ジェイソン・ウイルソンはヴィナスにレポートを書いたときの原稿料が1本3000ドルだったと公表しています。これで産地までの交通費や滞在費もカバーしないといけないということで、これが本当であればレビュアーも厳しい商売だと思います。

一方で、近年ではそもそも評論家のレビューやそのレイティングを重視する人はかなり減っているという話もあります。VivinoのようなCGMを重視する人や、インスタグラムのインフルエンサー、あるいは知り合いからのお薦めを中心にワインを買う人も多くなっているともいいます。レイティングの神通力が下がるなかでの今回の告発。ワイン評論家の時代の終わりの始まりなのかもしれません。