ナパのカリストガでソーヴィニヨン・ブランを得意とするユニークなワイナリー「コクレル(Coquerel)」のオーナーやワインメーカーなどが来日し、セミナーを開きました。東京の吉兆など和食の店で採用されているワインです。
Coquerel

春に開催されるプルミエ・ナパヴァレー・オークションはプロ向けで、このオークション専用に作った選りすぐりのワインを各ワイナリーが出展します。ほとんどがカベルネ・ソーヴィニヨンなど赤ワインを出展する中で、白、しかもソーヴィニヨン・ブランを出展するワインは全体の1~2%しかありません。そんなワイナリーの一つがコクレルで、中川ワインではこれまで3回コクレルのワインを落札しています。

これは中川ワインが2022年の同オークションで落札したワインの一覧。コクレルは上から2番目です。


右からオーナーのクレイ・コクレルさん、娘のリリー・コクレルさん(テキサス担当)、オーナーのブレンダ・コクレルさん、ワインメーカーのクリスティーヌ・バーブさん、営業部長のステイシー・ピトルースキーさん。

オーナー夫妻は元々ワインのコレクターで、2005年にカリストガでWalnut Washヴィンヤードを購入し、ワイナリーを始めました。ここはカリストガの中でも北西部でソノマに近いところに位置しています。太平洋からの風が入ってくる場所なので、カリストガの中では涼しい場所になります。粘土にごろごろとした石が混じった土壌で25エーカーのうち17エーカーに植樹しています。植えている品種はソーヴィニヨン・ブランのほかヴェルデホ、プティ・シラー、テンプラニーリョ、カベルネ・ソーヴィニヨン、カベルネ・フラン。ソーヴィニヨン・ブランが4割を占め、次に多いのはカベルネ・ソーヴィニヨンの27%だそうです。

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ワインメーカーのクリスティーンはボルドーの出身で、ソーヴィニヨン・ブランを得意とするシャトー・カルボーニュなどで働いた経験を持ちます。ボルドー大学で化学と醸造の博士号を取られたという優秀な方です。1996年にナパに来て、ガロやトリンチェロ、モンダヴィなど大きなワイナリーで働いた後、コクレルでワインメーカーになりました。コクレルではラボや畑の管理も自ら行っています。

メインとなるソーヴィニヨン・ブランは夜間に収穫。一晩マセレーションしてからプレスして発酵に移ります。酸化を防ぐためにマセレーションやプレス時にはドライアイスを使っています。 

最初のワインは生産量の半分を占めるというスタンダードのソーヴィニヨン・ブラン「Le Petit Coquerel(ル・プティ・コクレル) Sauvignon Blan 2023」です。
香り高くリッチ。ボリューム感あり酸も豊か。グレープフルーツや草のニュアンスといったソーヴィニヨン・ブランらしさに、グアバなどのトロピカルなフルーツの味わい。ちょっと塩味を感じます。樽の風味を感じたように思ったのですが、熟成もステンレスタンク。シュールリーで週1回バトナージュをしているということで、風味のリッチさが出ているようです。スタンダードといってもレベルが高いソーヴィニヨン・ブランです。

次は上級版のソーヴィニョン・ブラン「Terroir Coquerel(テロワール・コクレル)Sauvignon Blanc 2022」です。こちらは樽発酵樽熟成しています。クローン1というクローンを使っているとのこと。
色濃く、深みがある香り。味わいも深みと複雑さを感じます。ヴァニラやグアバなどリッチ系の味わいですが、ぐいぐい出てくるような味わいではなく、柔らかさを感じます。クリーミーなテクスチャ。76ケースという貴重なワイン。

3つめのワインは「Terroir Coquerel Cabernet Sauvignon Estate 2021」。
杉や森の下草といったフルーツ以外の要素が第一印象。それからカシスなどの青黒果実が出てきます。タンニンはかなりしっかりしていますが溶け込んでいます。酸も比較的あり、ナパのカベルネというよりもボルドー的なイメージが近いかもしれません。

ソーヴィニヨン・ブランとカベルネ・ソーヴィニヨンでは畑の樹の間隔を変えています。ソーヴィニヨン・ブランは果実が大きくても良く、カベルネ・ソーヴィニヨンは小さい果実にしたいため、カベルネ・ソーヴィニヨンは3フィートと5フィート間隔とソーヴィニヨン・ブランの5フィートと8フィート間隔よりもだいぶ狭くしています。抑制されたスタイルを目指していて、9月末には収穫。新樽25%で20カ月熟成しています。エステートのカベルネ・ソーヴィニヨンで希望小売価格が1万円を切る(税抜き9000円)はいまどき貴重かもしれません。

4本目と5本目は今回の来日のために特別に輸入したワインです。

4本目はクームズヴィルにあるBennett's Vineyardのカベルネ・フラン。ヴィンテージは2021年。
カベルネ・フランは意外にパワフルでスパイシー。第一印象に胡椒を感じます。赤系果実の味わいはカベルネ・フランらしいところですが、黒系果実に杉や血液なども感じ、タンニンもカベルネ・ソーヴィニヨン以上に感じます。ブラインドで飲んだらカベルネ・フランと思わないかもしれません。

最後のワインはデザートワインでLa Douce Revanche Late Harvest Sauvignon Blanc 2012。
デザートワインは2008年が最初のヴィンテージで2012年が2回目。これ以降は作っていませんが、また在庫がなくなったら作るかもしれないとのこと。
残糖4gでそれほど甘さは強くありません。ナッツや蜜、花、複雑な香り、エレガントなデザートワインです。

コクレルのワイン、特に二つの対照的なソーヴィニヨン・ブランが印象に残りました。