20年前のカベルネはどう熟成したか、Cask23、モンテベッロ、ピーター・マイケル、シルバーオークで検証
Date: 2017/07/16
Category: テイスティング・ノート
Posted by: Andy
1997年のカベルネ・ソーヴィニョンを比較して飲んでみましょうという会に参加させていただきました。
一番左がボルドーのワイン(シャトー・オー・ベルジェイ)で、後は左からスタッグス・リープ・ワイン・セラーズ(Stag's Leap Wine Cellars)のCask23、リッジ(Ridge)のモンテベッロ(Monte Bello)、シルバーオーク(Silver Oak)のアレキサンダー・ヴァレー(Alexander Valley)、ピーター・マイケル(Peter Michael)のレ・パヴォ(Les Pavots)とそうそうたるワインばかりです。
なお、ワインをご提供いただいたのはリッジで醸造家を務める大塚食品ワイン部の黒川さん。そのほかの方々も布袋ワインズの川上社長など、こちらもそうそうたるメンバーでした。
レストランは南麻布の「ルエ ヴェル ロール」。千葉和外ソムリエのレストランです。料理長が代わってからは初めての訪問。
今回のテーマとなった1997年のカベルネ・ソーヴィニョンですが、2000年ころ、このヴィンテージのワインが出てきたころには大変な評判の高さでした。例えば、ロバート・パーカーはスクリーミング・イーグルやハーラン・エステート、ブライアント・ファミリーなどに100点を付けており、満点のワインがまだまだ珍しかった当時としては大変な大盤振る舞いでした。2000年前後のいわゆる「カルト・ワイン」のブームが最高潮だったのもこのころと言っていいでしょう。
ただ、この年は非常に温暖で収穫量も多く、果実味豊かな半面、酸が少なく、熟成力は意外と低めだったことがだんだんと判明してきました。近年ではむしろ、難しい年として評価が低かった1998年の方が、おいしく熟成するという意見の人がかなり多くなっているようです。
そういうわけで、期待が高い一方で、ちょっと心配な面もあるのが1997年のワインです。
普通のワイン会であれば、まず泡で乾杯したり、最初1杯は白を飲んだりするものですが、今回はいきなりカベルネ・ソーヴィニョンで開始です。しかも5本のうち3本を一気に比較です。
グラスの順番は上のボトルと違います。
最初にこの3本を選んだのは、スタイルが共通するから。ボルドーのワインはもちろん、Cask23やモンテベッロはクラシカルなスタイルで果実味に頼らないワイン作りを信条としています。それが故に評論家の評価は低めに出ることも多くなっています(例えばCask23の1997年はWSで88点、モンテベッロ1997年はパーカーが90-91点)。
ただ、ソムリエの千葉さんによると、ワインの風味のうち果実味による部分と果実味以外による部分を分けると、果実味は年数が経つと次第に落ちていくのに対して、果実味以外のタバコやスパイスなどの風味は逆に増していくとのこと。これらクラシカルなスタイルのワインは果実味以外の要素がしっかりとあるので、1997年のワインであってもしっかりと熟成するはずだ(上記のような1997年は熟成しないという意見には当てはまらない)とのこと。
では、Cask23から飲んでみましょう(Facebookで川上さんの的確で詳しいコメントを見てしまったのでものすごく書きにくいですが、素人ということで許してください)。
インクや鉛筆の芯のフレーバー、カシスなどの果実味も少し感じます。酸はそれほど強くなく、ふくよかさとやわらかさもあります。
Cask23は、スタッグス・リープ・ワイン・セラーズの有名な2つの畑「FAY」と「SLV」をブレンドしていますが、FAYは比較的やわらなかな味わいで、SLVは骨格がしっかりした味だとのこと。Cask23は、若いときはSLVと比べてややぼんやりした味にも思われるときがあるそうですが、熟成すると非常にバランスがいいワインであることがよくわかります。実はこれまでほとんど飲む機会がなかったワインであり、今回やっとその実力を味わえました。
次にモンテベッロ。
香りがとても特徴的です。よく熟成したワインで湿った土とか枯葉の香りといいますが、僕の印象だと枯葉というよりも、牧草や芝がちょっと発酵しているときのような、ちょっともわっとした懐かしい香りに感じました。
Cask23よりも酸が強く、筋が通った印象。果実味はCask23よりも少なめですが、骨格のしっかりとした味わい。個性は違いますがCask23と甲乙つけがたいレベルです。
3つめはシャトー・オー・ベルジェイ。
なめし革のような獣っぽい香りが特徴。これもしっかりと熟成しており、おいしいです。
残り2本はモダンなスタイル。千葉ソムリエによると、こういったモダンなスタイルは元々フルーツ以外の要素がほとんどないので、熟成しても新たにそれが出てくるということはあまりないとのこと。
シルバーオークは今でもフルーツの香りがあります。ソフトな味わい。元々アレキサンダー・ヴァレーのカベルネ・ソーヴィニョン自体、ソフトさが身上なので、そのスタイルは残っているといっていいでしょう。もっと落ちちゃっているのではないかとちょっと心配だったワインですが、意外と今でも美味しく飲めます。アルコール度数は13%台なので、最近のワインと比べるとまだ低め。過熟感がなかったのが幸いしたのかもしれません。
ピーター・マイケルもカシスやブルーベリーなど果実の味わいがいまだ優勢。この日のワインの中ではちょっとアルコールの高さによると思われる熱っぽさがありますが、個人的には全然許容範囲です。千葉さんによると、おいしく飲むためであればもっと温度を低く提供するとのこと。今回は比較のために温度も同じにしてあるので、ピーター・マイケルとしてはちょっと不利だったかもしれません。
同じヴィンテージのワインでもスタイルによってこれだけ熟成が違うというのは、実際に味わうと驚きがありました。モンテベッロやCask23の真の実力を改めて感じました。
最後に料理を紹介します。個人的には「鮎のコンフィ カダイフを纏わせて」がすごく好きでした。ガスパチョに水なすを入れて「味変」させるのも面白い。
ちなみに、カベルネ5種飲んだあと、最後はシャンパーニュで締め。このパターンは初めてでした。
ご一緒いただいた方々、ありがとうございました。
一番左がボルドーのワイン(シャトー・オー・ベルジェイ)で、後は左からスタッグス・リープ・ワイン・セラーズ(Stag's Leap Wine Cellars)のCask23、リッジ(Ridge)のモンテベッロ(Monte Bello)、シルバーオーク(Silver Oak)のアレキサンダー・ヴァレー(Alexander Valley)、ピーター・マイケル(Peter Michael)のレ・パヴォ(Les Pavots)とそうそうたるワインばかりです。
なお、ワインをご提供いただいたのはリッジで醸造家を務める大塚食品ワイン部の黒川さん。そのほかの方々も布袋ワインズの川上社長など、こちらもそうそうたるメンバーでした。
レストランは南麻布の「ルエ ヴェル ロール」。千葉和外ソムリエのレストランです。料理長が代わってからは初めての訪問。
今回のテーマとなった1997年のカベルネ・ソーヴィニョンですが、2000年ころ、このヴィンテージのワインが出てきたころには大変な評判の高さでした。例えば、ロバート・パーカーはスクリーミング・イーグルやハーラン・エステート、ブライアント・ファミリーなどに100点を付けており、満点のワインがまだまだ珍しかった当時としては大変な大盤振る舞いでした。2000年前後のいわゆる「カルト・ワイン」のブームが最高潮だったのもこのころと言っていいでしょう。
ただ、この年は非常に温暖で収穫量も多く、果実味豊かな半面、酸が少なく、熟成力は意外と低めだったことがだんだんと判明してきました。近年ではむしろ、難しい年として評価が低かった1998年の方が、おいしく熟成するという意見の人がかなり多くなっているようです。
そういうわけで、期待が高い一方で、ちょっと心配な面もあるのが1997年のワインです。
普通のワイン会であれば、まず泡で乾杯したり、最初1杯は白を飲んだりするものですが、今回はいきなりカベルネ・ソーヴィニョンで開始です。しかも5本のうち3本を一気に比較です。
グラスの順番は上のボトルと違います。
最初にこの3本を選んだのは、スタイルが共通するから。ボルドーのワインはもちろん、Cask23やモンテベッロはクラシカルなスタイルで果実味に頼らないワイン作りを信条としています。それが故に評論家の評価は低めに出ることも多くなっています(例えばCask23の1997年はWSで88点、モンテベッロ1997年はパーカーが90-91点)。
ただ、ソムリエの千葉さんによると、ワインの風味のうち果実味による部分と果実味以外による部分を分けると、果実味は年数が経つと次第に落ちていくのに対して、果実味以外のタバコやスパイスなどの風味は逆に増していくとのこと。これらクラシカルなスタイルのワインは果実味以外の要素がしっかりとあるので、1997年のワインであってもしっかりと熟成するはずだ(上記のような1997年は熟成しないという意見には当てはまらない)とのこと。
では、Cask23から飲んでみましょう(Facebookで川上さんの的確で詳しいコメントを見てしまったのでものすごく書きにくいですが、素人ということで許してください)。
インクや鉛筆の芯のフレーバー、カシスなどの果実味も少し感じます。酸はそれほど強くなく、ふくよかさとやわらかさもあります。
Cask23は、スタッグス・リープ・ワイン・セラーズの有名な2つの畑「FAY」と「SLV」をブレンドしていますが、FAYは比較的やわらなかな味わいで、SLVは骨格がしっかりした味だとのこと。Cask23は、若いときはSLVと比べてややぼんやりした味にも思われるときがあるそうですが、熟成すると非常にバランスがいいワインであることがよくわかります。実はこれまでほとんど飲む機会がなかったワインであり、今回やっとその実力を味わえました。
次にモンテベッロ。
香りがとても特徴的です。よく熟成したワインで湿った土とか枯葉の香りといいますが、僕の印象だと枯葉というよりも、牧草や芝がちょっと発酵しているときのような、ちょっともわっとした懐かしい香りに感じました。
Cask23よりも酸が強く、筋が通った印象。果実味はCask23よりも少なめですが、骨格のしっかりとした味わい。個性は違いますがCask23と甲乙つけがたいレベルです。
3つめはシャトー・オー・ベルジェイ。
なめし革のような獣っぽい香りが特徴。これもしっかりと熟成しており、おいしいです。
残り2本はモダンなスタイル。千葉ソムリエによると、こういったモダンなスタイルは元々フルーツ以外の要素がほとんどないので、熟成しても新たにそれが出てくるということはあまりないとのこと。
シルバーオークは今でもフルーツの香りがあります。ソフトな味わい。元々アレキサンダー・ヴァレーのカベルネ・ソーヴィニョン自体、ソフトさが身上なので、そのスタイルは残っているといっていいでしょう。もっと落ちちゃっているのではないかとちょっと心配だったワインですが、意外と今でも美味しく飲めます。アルコール度数は13%台なので、最近のワインと比べるとまだ低め。過熟感がなかったのが幸いしたのかもしれません。
ピーター・マイケルもカシスやブルーベリーなど果実の味わいがいまだ優勢。この日のワインの中ではちょっとアルコールの高さによると思われる熱っぽさがありますが、個人的には全然許容範囲です。千葉さんによると、おいしく飲むためであればもっと温度を低く提供するとのこと。今回は比較のために温度も同じにしてあるので、ピーター・マイケルとしてはちょっと不利だったかもしれません。
同じヴィンテージのワインでもスタイルによってこれだけ熟成が違うというのは、実際に味わうと驚きがありました。モンテベッロやCask23の真の実力を改めて感じました。
最後に料理を紹介します。個人的には「鮎のコンフィ カダイフを纏わせて」がすごく好きでした。ガスパチョに水なすを入れて「味変」させるのも面白い。
ちなみに、カベルネ5種飲んだあと、最後はシャンパーニュで締め。このパターンは初めてでした。
ご一緒いただいた方々、ありがとうございました。