ワイン業界における人種差別問題に、声が上がり始めました(What Racism Looks Like Inside a Napa Valley Tasting Room | VinePairCourt of Master Sommeliers, facing racism charges, to eliminate ‘master’ address - SFChronicle.com)。

テイスティングルームにおける問題はJ'NAI GAITHERというライターが告発しています。この人は、ナパのテイスティングルームで働いていたとき、客との会話でたびたび傷つきました。

例えば、こんなやり取りがあったそうです。
「どうしてワイン好きになったの?」
「2004年ころ、ブルゴーニュにのめり込んで…」
「え!?ほんとに!?」
「そんな変ですか?」
「だってブルゴーニュは価格も高いし、洗練されているじゃない。信じられない…」

こういったやり取りは日常茶飯事で、さらに悪いことには、上司は彼女のこういった悩みをまったく理解しなかったのでした。彼女は結局15カ月でその仕事をやめました。

もう一つ、マスターソムリエについてはTariirah Habibiというアトランタ州に住むワインのプロが経験を報告しています。彼女が、コート・オブ・マスターソムリエの入門試験を受けにいったとき、試験監督が受験者に対して「マスター・~~」と呼ぶように言ったことにショックを受けました。マスターという称号が、奴隷制度を思い出させるものだったからです。

彼女はその試験を通りましたが、それ以上のコースに進むのはやめました。現在は、黒人のワイン・プロフェッショナルをサポートする組織を立ち上げています。

コート・オブ・マスターソムリエは近日彼女と話をして、今後は「マスター+名字」の呼び方を廃して、「マスター・ソムリエ」とフルで呼ぶことに変えるとのことです。

マスターソムリエに関しては先週、著名なマスターソムリエであるリチャード・ベッツがマスターソムリエをやめると表明しています。ベッツはコート・オブ・マスターソムリエが人種問題などへの対応が遅いことに加え、2018年に起こった試験問題の漏洩事件に対する対処に不満があることをその理由に上げています。

日本に住む日本人にとっては人種問題は遠い話のように感じられるかもしれませんが、日本人も有色人種であり、実際には差別される対象にも十分なりえます。もちろん、差別されるから知っておくべきだということではなく、知らず識らずのうちに差別する側に回ることも十分ありえることであり、対岸の火事で済ませていてはいけないと思います。