酸化防止剤の代わりに栗の花!? ポルトガル社が開発
ポルトガルのTree Flowers Solutionsという会社が、SO2(亜硫酸塩)の代わりに使う栗の花の粉末「Chestwine」を開発しました。
SO2は酸化防止剤と言われるように、ワインの酸化を防ぎ、微生物の増殖を妨げます。ワインの長期保存のためには欠かせない存在ですが、一方で人体に有害だとして嫌われてもいます。確かに大量に摂取すれば悪影響はあるでしょうが、現在ではSO2の利用はかなり抑えられており、実際に健康問題が起こる可能性は非常に低いと思います。とはいえ、人体に有害なものは少しでも摂取したくないという考えの人も少なからずおり、酸化防止剤無添加のワインが作られる動機にもなっています(正確には酸化防止剤としてはビタミンC=アスコルビン酸などもありますが、最も広く使われているのがSO2です。本記事のタイトルに酸化防止剤としているのも本来はSO2あるいは亜硫酸塩としないといけませんが、間違いは承知で敢えて使っています)。
その代替品として白羽の矢が立ったのが栗の雄花で、フェノール酸とタンニンを多く含んでおり、ワインの酸化や微生物の増殖を防ぐのに使えます。スペインのBraganza UniversityとPolytechnic Instituteが2017年に特許を取得しており、その後Philippe Ortegaという人が中心になって特許を買い取ってTree Flowers Solutionsの設立となりました。
Chestwineは粉末になっており、収穫後の移動やブドウの破砕、熟成やボトリングなどSO2と同様、様々な場面で利用できます。有機栽培の認証を取っており、オーガニックなワインに添加が可能です。
価格は最終的なワイン1ボトルあたり50セント以下と見込まれています。既にポルトガルとスペインなどでは初期ユーザーがおり、称賛を得ています。
Bodegas Mazuelaというリオハのワイナリーでは2024年に主要ワインのテンプラニーリョでCheswineを使い、結果に満足しているといいます。
フランスのロワール地方のDomaine Thetでは次のように語っています。「私たちは2つのシュナン・ブランワインを比較しました。1つは6ヘクトリットルの卵形の樽で1ヘクトリットルあたり30グラムのCheswineを使用して作られ、もう1つは同じジュースで1ヘクトリットルあたり2グラムのSO2を使用して作られました。 2つの製品は非常に異なっています。前者はより風味豊かでトロピカルフルーツの香りがより顕著であるのに対し、後者はより伝統的で、リンゴやライムグリーンの香りを想起させます」
このほかシャンパーニュやソーテルヌでもテスト使用が始まっているようです。
米国では食品医薬品局の認証を申請中です。米国では「Organic Wine」とラベルに称するにはSO2を使用しないことが必要となるため、これまでほとんどOrganic Wineはありませんでした。Chestwineを使えば、Organic Wineとしても認可されるので、Organicと銘打ちたい人には朗報となりそうです。