総務省の「光の道」構想にソフトバンクの孫社長が賛成し,それにITジャーナリストの佐々木俊尚が反論したことから,二人の対談を開催し,Ustreamで中継するという話がまとまったそうです。

これ自体は画期的なことで面白いのですが,この対談のあり方をめぐって,当初この対談を企画したそらのさんは後半でツイッターからの質問や観覧者からの質問を受けるつもりだったのが,孫社長からの希望を入れて,佐々木さんとの討論だけになったそうです。

この討論会を「巌流島」に例える向きもあるようですが,それに倣えば,この変更は「小次郎(佐々木)敗れたり」という感じがしないでもありません。

僕の想像では二人の討論はあまり噛みあわないでしょう。噛みあわないながらも,後述するように実は佐々木さんの「反論」は孫さんの主張とあまり矛盾しないので,共通するところを引き出されてなんとなく孫さんの主張が正しいような雰囲気に持ち込まれる,そういう展開になりそうな気がします。その状況を打破する可能性として外部からの質問に期待したいところだったのですが…(ただ,モデレータがそらのさんというのは正直荷が重いでしょう。通信業界に詳しい人がモデレータになる必要があると思います)。

実はそもそも,佐々木さんの「反論」自体,今回の問題と噛みあっていないところがあります。今回は元々総務省が今後の通信インフラをどうしていくかという話から来ているもので,孫さんが「光の道」を推すというのは光ファイバーのインフラをNTTから切り離して国家事業とし,どの通信事業者でも利用出来るようにするということと一体化しています。また,現在は銅線による電話サービスが全国あまねく利用できないといけない「ユニバーサル・サービス」であると定義されていますが,このユニバーサル・サービスを今後どうして行くかという議論も離れて考えられないものです。

それに対して佐々木さんは,今はインフラの整備が重要なのではなく,その上のサービスが大事で,そちらを推進する政策をすすめないと行けないと主張しています。

佐々木さんの主張は全くもって正しいとは思うのですが,問題は今回はインフラについて話をする場なのであるということです。インフラについて話をする話で「インフラの話をしてもしょうがない」と言っても,持っていく先がちょっと違うのでは,ということになってしまいそうな気がするのです。

また,「光の道」を進めるということは,光ファイバーの競争を従来の「設備競争」(光ファイバーの敷設自体の競争)と「サービス競争」の両面で進めるという施策から,「サービス競争」一本に変えるという意味でもあります。孫さんはこのあたりから,「光の道」が「サービス競争」への道なのだと佐々木さんを誘導していくのではないかと想像しています。

せっかくの対談なので実りあるものになってほしいのですが,ちょっと心配です。