以前に記事を書いたPatz & HallのDonald Patzさんを迎えたワイン会に行ってきました。このワイン会,Donald Patzさんが旧知のKanaさんのために,ということで帰国を1日ずらして開いてもらったとのことでした。

ワインリストは
Argyle Brut 2006 Oregon
Patz & Hall Chardonnay ZioTony Ranch 2005*1
Patz & Hall Chardonnay Dutton Ranch 2008
(Patz & Hall Pinot Noir Alder Springs 2005)
Patz & Hall Chardonnay Hyde Vineyard
Patz & Hall Pinot Noir Jenkins Ranch 2005*1
Patz & Hall Pinot Noir Jenkins Ranch 2008
Patz & Hall Pinot Noir Pisoni Vineyard 2007
*1 Donald Patzさんの個人セラーから持ってきていただいたもの。

(前の記事も長かったので,以下は続きに)



最初のArgyleは爽やかなスパークリング。まだ暑い季節ということで,Donaldさんが好きなスパークリングを選んでくれたとのこと。

シャルドネのZioTony RanchはMartinelli Familyの畑。ZioTonyとはイタリア語でTonyおじさんという意味です。以前はPatz & HallではMartinelliのWoolsey Roadという畑を使っていましたが,それが使えなくなって,ここに変わったという記憶があります。品のいいシャルドネ。

次のDutton Ranch 2008はいかにもカリフォルニア的なメリハリの効いたシャルドネ。分かりやすい味わいです。

ここで余興。Donaldさんにブラインドテイスティングしてもらい,ぴったり当てたら次のワインはKanaさん持ち,はずれたらDonaldさん持ちで出すというのです。

僕もテイスティングさせてもらったのですが,比較的酸が低く,骨太の味わいのピノだったのでPisoniかなあと想像。

答えはPatz & Hall Pinot Noir Alder Springs 2005でDonaldさんは見事正解でした。後であてた理由を聞いてみたところ「Alder Springsの特徴は香りにフルーツ系がないこと。このワインを嗅いだときにスパイスを感じてフルーツぽさがなかった。それでAlder Springsだと分かった」とのこと。ヴィンテージの方は「2004でもないし,2006でもなさそうだし」といったあたりでやや当てずっぽうだったようです。

さて,そんなこんなででてきたHyde Vineyard(ヴィンテージ失念)。これは3つのシャルドネの中では一番よかったです。色はやや薄めですが,酸とトロピカル・フルーツ系のバランスがよく,格のようなものを感じました。

後半に入り,ピノの最初はJenkins Ranch 2005。Sonoma CoastのPetaluma Gapにある畑です。Petaluma Gapというのはソノマ・コーストの海沿いに走る山と山の間にある谷あいの地域。Gapを日本語にそのまま訳すと「渓谷」などとなりますが,実際には風が吹きぬける隙間といった感じのところです。ここはSonoma Coastの中でも朝夕の霧に包まれている時間が長い冷涼な地域で,近年注目が高まっています。ワインはやや強めのスパイスを感じました。2005年と2008年が出ましたが,個人的には2005年が好み。

最後はPisoniの2007。エキゾチックな味わいでさすがPisoniといったところ。ただ,ほかのワイナリのPisoniと比べると,それほど強烈な味わいではなく,バランスを重視した作り。

後半はDonaldさんとのQ&Aで,会場からの質問も含めていろいろなことをうかがいました。いくつか覚えていることを記しておきます。

Q ワイナリはどこにあるか?
A ワイナリはソノマだが,そこは醸造設備だけで,ナパにテイスティングができるサロンがある。

Q 多くのワイナリは「テイスティング・ルーム」を持っているが「サロン」と呼ぶのはなぜ?
A テイスティング・ルームというとバーカウンターがあってそこにお客さんがたむろしている印象がある。我々のサロンでは着席して1時間くらいかけてゆっくりとテイスティングできるようにしている。だからサロンと呼んでいる。

Q 一番最初のワインはナパのシャルドネだということだったが,畑はどこ?
A Hyde,Atlas Peak,Hudson。Napa Valley Chardonnayは1988年から2007年まで作り,そこで終了した。2008年からはその代わりにSonoma CoastのAVAのシャルドネを作っている。

Q Pisoniを使い始めたワイナリでは早い方だったと思うが,どうやって見つけたのか?
A 自分は知り合いのところでPisoniのブドウで作ったワインを飲ませてもらい,これはいいと思った。パートナーのJames Hallは知り合いから「いい畑がある」と聞いてそこがPisoniだった。互いに別のルートから名前を知って,「契約したらよさそうな畑があるんだ」と同時に言ったのがPisoniだった。

Q Pisoniのワインは特別だとよく言うがどこが特別なのか?
A 畑を見に行ったら,列の間隔は広く,割と普通に見えた。ところがいざブドウがワイナリにやってきて醸造を始めると,次の日の朝にはワイナリ全体がPisoniの香りになってしまった。さらにジュースは澄み切っていてとてもきれいで驚いた。

Q これから契約したい畑はあるか?
A 我々は,畑の持ち主と緊密な関係を築いてやっている。そのため,畑も年中見回る必要がある。例えばSanta Rita HillsはいいPinot Noirを作る地域だが,今使っている一番南のPisoniよりもさらに6時間近くかかってしまう。だから今増やそうとしているところは特にない。

Q 自分で畑を持ちたいと思わないのか?
A 思わない。いい畑の地域は限られており,そこで土地を買うことを選ぶより,既にそこで畑を持っている人を探した方が早い。また,農夫の生活は大変だ(笑)

Q 樽はどういうのを使っている? オーク・チップとかは?
樽は全部フランス産の樫の木を使っている。当初買っていた樽の品質に不満があったため,今では樫の木をフランスから輸入し,3年間乾燥させて樽を作っている。アメリカン・オークは風味が大きく異なるので使わない。アメリカン・オークがどういう味になるのかはジャック・ダニエルを思いだしてほしい。

ゲストとして呼ばれて行っているのに,いきなり10分近く遅刻してしまうという失態を演じてしまい,さらに最初のうちは英語もうまくしゃべれず(やっぱり英語をしゃべる筋肉は普段使ってないとだめですね),恥ずかしい限りでしたが,最後の方はちょっとがんばったつもりです。

いい機会を与えてくれてありがとうございました>kanaさん
個人的にもPatz & Hallは最初にメーリング・リスト・メンバーになったワイナリなので思い出深く,いろいろと話が聞けてよかったです。
Donald Patzさんと