シュレーダーの2023年ヴィンテージ、冷涼ヴィンテージの実力は?
ナパのシュレーダーの2023年ヴィンテージお披露目のマスタークラスに参加してきました。説明はジェイソン・スミスMS。奥さんは日本人で娘さんは日本でアメリカンスクールに通っていたという日本通の方でもあります。実は今回、写真を撮り忘れてしまったので、一昨年の写真を上げておきます。
今回のマスタークラスでの試飲ワインは以下のもの。これ以外に、フリー試飲でいくつか追加で飲んでいます。これについては後述します。
ヴィンテージの差異があまりないと思われているカリフォルニアですが、2020年以降はそういった「常識」が通用しないほどふり幅の大きいヴィンテージが続いています。
2020年は山火事でナパの全域に煙が広がり、多くのワイナリーが赤ワインの醸造を諦めた年です。シュレーダーもその一つでした。2021年は干ばつで非常に凝縮したブドウができた年。とても濃いワインになりました。2022年は9月に熱波がやってきた年。46℃ほどの猛烈な暑さが5日間続きました。ここまで暑くなるとブドウも身の危険を感じて成長を止めて(シャットダウン)しまいます。シャットダウンで色やストラクチャーが抜けてしまうため、生産者にとっては苦労したヴィンテージです。選果を丹念にした結果、収穫量は例年より4割も少なくなってしまったそうです。一方、2023年は非常に涼しい年。例年の3週間遅れというくらい生育が遅れましたが、幸いなことに10月に入っても、雨はほとんど降らず、コンディションを落とさないまま、収穫できたといいます。
シュレーダーのワインは、ナパのオークヴィルのト・カロン・ヴィンヤードのカベルネソーヴィニヨンを使っています。同じコンステレーションブランズ傘下にあるロバート・モンダヴィが入手した銘醸畑中の銘醸畑です。
ト・カロンの名が付く畑はコンステレーションブランズのほか、ベクストファー家が管理するベクストファー・ト・カロンがあり、以前はシュレーダーはそちらのブドウを使っていましたが、2022年以降はモンダヴィの方のト・カロンだけを使っています。また、オーパス・ワンはト・カロンの一部の区画を専用に使っています。
シュレーダーの最初のヴィンテージは1998年ですが、注目を集めるようになったのは2000年に上記のベクストファー・ト・カロン・ヴィンヤードのブドウを入手してからです。また、同年からワインメーカーがトーマス・リヴァース・ブラウンになっています。今やコンサルタント・ワインメーカーとして引く手あまたのトーマスですが、最初にワインメーカーになったのがこのシュレーダー。それまで数年はジンファンデルで有名なターリーで、セラー・ラットと呼ばれるような下働きだったのです。シュレーダー創設者のフレッド・シュレーダーはナパのカフェで彼と知り合い、ワインメーカーに抜擢したのですが、それは慧眼と言わざるを得ません。
2001年には、ベクストファー・ト・カロン・ヴィンヤードのカベルネ・ソーヴィニヨンをさらにカベルネのクローン別にCCS、RBSと違うワインに仕込むことを始めました。そこからうなぎ上りに評価が上がっていったのです。これまでに評論家から得た100点はなんと41回。そのほかに、ダブル・ダイヤモンドでのワイン・スペクテーター「ワインオブザイヤー」などの栄冠があります。
さて、最初の試飲はダブル・ダイヤモンドのカベルネ・ソーヴィニヨン2023です。ダブル・ダイヤモンドはシュレーダーのセカンドの位置づけで、ト・カロン以外に「オークヴィル・ステーション」という畑のブドウを使っています。また、ト・カロンの中でも若木のブドウを使っています。シュレーダーのワインが希望小売価格9万円もするのに対して、こちらは1万4800円と6分の1以下の価格です。
醸造では52%新樽を使っています。残りの樽は前年にシュレーダーで使ったものです。開けたてから美味しいワインに仕上げているといいます。一方、シュレーダーは100%新樽。ダナジューとタランソーという高級樽メーカーのものを使っていますが、なかでもダナジューは自社で輸入しているそうです。
以前のダブル・ダイヤモンドはちょっと甘やかさが前面に出る感じがありましたが、2023年は涼しい年だったせいか酸が高くこれまでよりもバランスがいいワインに仕上がっています。タンニンは柔らかく、スムーズな飲み心地。プラムにレッド・チェリー、トーストや焼き栗の風味。コスパはかなり高いと思います。
2本目からはシュレーダーのワイン。カベルネ・ソーヴィニヨン ト・カロン・ヴィンヤード 2023です。通称「シュレーダー シュレーダー」。スタンダード的な位置付けですが、他のワインと価格は同じです(90000円)。シュレーダーの中では一番軽い味わいで赤果実の風味が出ます。
ダブル・ダイヤモンドとの一番の違いは香りの強さで、グラスに顔を近づけなくても果実の香りが漂ってきます。レッド・チェリーにブルーベリー、プラムなどの熟した果実、芳醇で少し甘やか、ダブル・ダイヤモンドよりタンニンの強さはしっかりと感じますが柔らかさもあり、今でも美味しいワインです。
3本目と4本目は、ト・カロンの中でも山裾に近く、水はけがよくて高品質のブドウが採れるというモネステリ―・ブロックの2023年と2022年です。名前の由来は隣に修道院があることから。
シュレーダー カベルネ・ソーヴィニヨン モナステリー・ブロック 2023
シュレーダー シュレーダーが香りから柔らかさを感じるのに対し、こちらはやや固さを感じる香り。青い果実。タンニンかなり強く、飲み頃までは数年かかりそう。開いている感じではないですがそれでも爆発的な果実味があり、余韻も長い。非常にポテンシャルの高いワイン。
シュレーダー カベルネ・ソーヴィニヨン モナステリー・ブロック 2022
2023年と比べると果実味は少し低い。ストラクチャー強く、かなりタニックでとがっています。こちらも柔らかくなるのにまだ数年かかりそうです。非常に余韻も長く超熟型であることをうかがわせます。クオリティは23年の方が上ですが、長期間の熟成にはこちらが向いているかもしれません。
5本目と6本目は「ヘリテージ・クローン」の2023年と2022年です。ヘリテージ・クローンはブドウの房が握りこぶしの半分くらいしかない、レアなクローンを使ったワインです。あまりにもブドウが小さいので1アーカーあたり1トン程度しか収穫できません(通常2トンを下回ると極めて少ないと言われます)。
シュレーダー カベルネ・ソーヴィニヨン ヘリテージ・クローン 2023
モナステリー・ブロックの青果実に対して、こちらは赤果実の香りが強く、素晴らしい酸がありしなやかなテクスチャーがあります。タンニン強くパワフルで、もしかしたら飲み頃はモナステリー・ブロックよりも先かもしれません。
シュレーダー カベルネ・ソーヴィニヨン ヘリテージ・クローン 2022
こちらも赤果実の香りが強く、パワフルなワイン。2023年と比べると、こちらの方が飲み頃は早く来そうで、今でも十分美味しく飲めます。ヘリテージ・クローンとモナステリー・ブロックはかなり個性が違うので好みが分かれそうですが、個人的にはヘリテージ・クローンを高く評価します。
最後のワインは、2021年のオールド・スパーキー。オールド・スパーキーはシュレーダーのトップ・キュベで素晴らしい樽だけを集めて作るワイン。マグナムボトルだけというワインです。価格は20万円。2021年はベクストファー・ト・カロン・ヴィンヤードのブドウを使った最後のヴィンテージです。
シュレーダー カベルネ・ソーヴィニヨン オールド・スパーキー 2021
とにかく濃密な果実味に圧倒されます。バランスよく、むちゃくちゃ美味しい。30年は熟成するだろうとのこと。
なお、2023年はシュレーダー25周年でオールド・スパーキーのスペシャル・ボトルが作られます。全世界で250本。専用のケースに入れられ、価格は40万円超とのこと。
なお、コンステレーションブランズ傘下のマウント・ヴィーダーやト・カロン・ヴィンヤード・カンパニーの試飲も別途ありましたが、そちらは別記事で。
今回のマスタークラスでの試飲ワインは以下のもの。これ以外に、フリー試飲でいくつか追加で飲んでいます。これについては後述します。
ヴィンテージの差異があまりないと思われているカリフォルニアですが、2020年以降はそういった「常識」が通用しないほどふり幅の大きいヴィンテージが続いています。
2020年は山火事でナパの全域に煙が広がり、多くのワイナリーが赤ワインの醸造を諦めた年です。シュレーダーもその一つでした。2021年は干ばつで非常に凝縮したブドウができた年。とても濃いワインになりました。2022年は9月に熱波がやってきた年。46℃ほどの猛烈な暑さが5日間続きました。ここまで暑くなるとブドウも身の危険を感じて成長を止めて(シャットダウン)しまいます。シャットダウンで色やストラクチャーが抜けてしまうため、生産者にとっては苦労したヴィンテージです。選果を丹念にした結果、収穫量は例年より4割も少なくなってしまったそうです。一方、2023年は非常に涼しい年。例年の3週間遅れというくらい生育が遅れましたが、幸いなことに10月に入っても、雨はほとんど降らず、コンディションを落とさないまま、収穫できたといいます。
シュレーダーのワインは、ナパのオークヴィルのト・カロン・ヴィンヤードのカベルネソーヴィニヨンを使っています。同じコンステレーションブランズ傘下にあるロバート・モンダヴィが入手した銘醸畑中の銘醸畑です。
ト・カロンの名が付く畑はコンステレーションブランズのほか、ベクストファー家が管理するベクストファー・ト・カロンがあり、以前はシュレーダーはそちらのブドウを使っていましたが、2022年以降はモンダヴィの方のト・カロンだけを使っています。また、オーパス・ワンはト・カロンの一部の区画を専用に使っています。
シュレーダーの最初のヴィンテージは1998年ですが、注目を集めるようになったのは2000年に上記のベクストファー・ト・カロン・ヴィンヤードのブドウを入手してからです。また、同年からワインメーカーがトーマス・リヴァース・ブラウンになっています。今やコンサルタント・ワインメーカーとして引く手あまたのトーマスですが、最初にワインメーカーになったのがこのシュレーダー。それまで数年はジンファンデルで有名なターリーで、セラー・ラットと呼ばれるような下働きだったのです。シュレーダー創設者のフレッド・シュレーダーはナパのカフェで彼と知り合い、ワインメーカーに抜擢したのですが、それは慧眼と言わざるを得ません。
2001年には、ベクストファー・ト・カロン・ヴィンヤードのカベルネ・ソーヴィニヨンをさらにカベルネのクローン別にCCS、RBSと違うワインに仕込むことを始めました。そこからうなぎ上りに評価が上がっていったのです。これまでに評論家から得た100点はなんと41回。そのほかに、ダブル・ダイヤモンドでのワイン・スペクテーター「ワインオブザイヤー」などの栄冠があります。
さて、最初の試飲はダブル・ダイヤモンドのカベルネ・ソーヴィニヨン2023です。ダブル・ダイヤモンドはシュレーダーのセカンドの位置づけで、ト・カロン以外に「オークヴィル・ステーション」という畑のブドウを使っています。また、ト・カロンの中でも若木のブドウを使っています。シュレーダーのワインが希望小売価格9万円もするのに対して、こちらは1万4800円と6分の1以下の価格です。
醸造では52%新樽を使っています。残りの樽は前年にシュレーダーで使ったものです。開けたてから美味しいワインに仕上げているといいます。一方、シュレーダーは100%新樽。ダナジューとタランソーという高級樽メーカーのものを使っていますが、なかでもダナジューは自社で輸入しているそうです。
以前のダブル・ダイヤモンドはちょっと甘やかさが前面に出る感じがありましたが、2023年は涼しい年だったせいか酸が高くこれまでよりもバランスがいいワインに仕上がっています。タンニンは柔らかく、スムーズな飲み心地。プラムにレッド・チェリー、トーストや焼き栗の風味。コスパはかなり高いと思います。
2本目からはシュレーダーのワイン。カベルネ・ソーヴィニヨン ト・カロン・ヴィンヤード 2023です。通称「シュレーダー シュレーダー」。スタンダード的な位置付けですが、他のワインと価格は同じです(90000円)。シュレーダーの中では一番軽い味わいで赤果実の風味が出ます。
ダブル・ダイヤモンドとの一番の違いは香りの強さで、グラスに顔を近づけなくても果実の香りが漂ってきます。レッド・チェリーにブルーベリー、プラムなどの熟した果実、芳醇で少し甘やか、ダブル・ダイヤモンドよりタンニンの強さはしっかりと感じますが柔らかさもあり、今でも美味しいワインです。
3本目と4本目は、ト・カロンの中でも山裾に近く、水はけがよくて高品質のブドウが採れるというモネステリ―・ブロックの2023年と2022年です。名前の由来は隣に修道院があることから。
シュレーダー カベルネ・ソーヴィニヨン モナステリー・ブロック 2023
シュレーダー シュレーダーが香りから柔らかさを感じるのに対し、こちらはやや固さを感じる香り。青い果実。タンニンかなり強く、飲み頃までは数年かかりそう。開いている感じではないですがそれでも爆発的な果実味があり、余韻も長い。非常にポテンシャルの高いワイン。
シュレーダー カベルネ・ソーヴィニヨン モナステリー・ブロック 2022
2023年と比べると果実味は少し低い。ストラクチャー強く、かなりタニックでとがっています。こちらも柔らかくなるのにまだ数年かかりそうです。非常に余韻も長く超熟型であることをうかがわせます。クオリティは23年の方が上ですが、長期間の熟成にはこちらが向いているかもしれません。
5本目と6本目は「ヘリテージ・クローン」の2023年と2022年です。ヘリテージ・クローンはブドウの房が握りこぶしの半分くらいしかない、レアなクローンを使ったワインです。あまりにもブドウが小さいので1アーカーあたり1トン程度しか収穫できません(通常2トンを下回ると極めて少ないと言われます)。
シュレーダー カベルネ・ソーヴィニヨン ヘリテージ・クローン 2023
モナステリー・ブロックの青果実に対して、こちらは赤果実の香りが強く、素晴らしい酸がありしなやかなテクスチャーがあります。タンニン強くパワフルで、もしかしたら飲み頃はモナステリー・ブロックよりも先かもしれません。
シュレーダー カベルネ・ソーヴィニヨン ヘリテージ・クローン 2022
こちらも赤果実の香りが強く、パワフルなワイン。2023年と比べると、こちらの方が飲み頃は早く来そうで、今でも十分美味しく飲めます。ヘリテージ・クローンとモナステリー・ブロックはかなり個性が違うので好みが分かれそうですが、個人的にはヘリテージ・クローンを高く評価します。
最後のワインは、2021年のオールド・スパーキー。オールド・スパーキーはシュレーダーのトップ・キュベで素晴らしい樽だけを集めて作るワイン。マグナムボトルだけというワインです。価格は20万円。2021年はベクストファー・ト・カロン・ヴィンヤードのブドウを使った最後のヴィンテージです。
シュレーダー カベルネ・ソーヴィニヨン オールド・スパーキー 2021
とにかく濃密な果実味に圧倒されます。バランスよく、むちゃくちゃ美味しい。30年は熟成するだろうとのこと。
なお、2023年はシュレーダー25周年でオールド・スパーキーのスペシャル・ボトルが作られます。全世界で250本。専用のケースに入れられ、価格は40万円超とのこと。
なお、コンステレーションブランズ傘下のマウント・ヴィーダーやト・カロン・ヴィンヤード・カンパニーの試飲も別途ありましたが、そちらは別記事で。