Wine Advocate誌で過去4回も100点を取っているHarlan Estate(ハーラン・エステート)。ここのオーナーのBill Harlan氏がワイン業界に身をおくようになってからの初来日を果たしており、記念のセミナーが開かれました。

Bill Harlan

今回は兄弟プロジェクトのBondの責任者であるPaul Roberts氏も来日しており、HarlanとBondの両方が試飲に登場しました。これも初のことだそうです。

セミナーの内容は、かなり濃いものでしたが、強引にまとめてしまうと、とにかく「選別が重要」ということと「忍耐が必要」ということです。

選別と一口に言っても、レベルがたくさんあり、まずはHarlanの畑を選ぶまでの選別がありました。ワイナリを作る前にボルドーなどの超一流のワイナリを見学し、すばらしいワインはどこも斜面の畑でできていることを知ってOakbilleのBenchと呼ばれる山に近い斜面の土地を選んだそうです。特に、日照の多いナパでは、ボルドーなどと異なり、日差しが強すぎないことが、よいワインを作る条件になります。斜面は空気の流れを確保し、ミネラルやフレッシュさを出すのに役立つそうです。

選別の二つ目は畑の選別。自社畑のワインを作る前に1982年以降、70もの畑と契約してブドウを購入してワインを作っていたそうです(Harlanの最初のヴィンテージは1990年です)。ここから選びに選び抜いた5つの畑が現在Bondで使っている畑だとのこと。

3つ目の選別は収穫したブドウの選別。収穫したブドウは、一粒ずつよりわけてワインの質を落とすものを排除します。また、Harlanの畑は約40エーカーですが、これを斜面の向きや品種、ルートストックなどで分類して40の区画に分け、それぞれ最適な収穫時期に収穫します。半日ずれただけでも味が変わってしまうとのことでした。

一方の、忍耐というのは、このように畑を選ぶところから、売り物になるワインを作れるようになるまでの長さです。Harlanの畑のブドウでワインを作り始めたのは1987年でしたが、実際に販売したのは90年のものからですし、購入したブドウで作るワインにいたってはBondができるまで12年間はお金にならなかったといいます。元々Bill Harlan氏は不動産業で稼いでいたので、こういった我慢ができたわけですが、普通ではなかなかできないことです。

さて、肝心の試飲については、続きで。


試飲

試飲は左端のMaiden 2006からです。MaidenはHarlanのセカンド・ラベルと言われていますが、「セカンド・セレクション」と呼んでほしいとのことでした。基本的にHarlanと同じ畑のブドウを使っており、緻密さや複雑さが少し落ちるものをMaidenに使っているとのこと。また、スムーズで分かりやすいことも重視しているとのことでした。BondのMatriarchも同じような考えに基づいているそうです。

すみれのような香り、ブルーベリーなど紫系の果実、さらにはちょっとチョコレートっぽさも感じました。おいしいです。WA誌では91点とやや低めの評価ですが、もっとポテンシャルがあるように感じました。

次はHarlan Estate 2008。実は私にとっては初めてのHarlanです。しかも、これは2012年5月になるまで出荷しないもの。まだ、少し閉じているそうです。

さすがにタンニンはやや強いです。ですが、キメが細かいので決して飲みにくくはありません。なんといっても特徴的なのはクリームブリュレを食べているかのような、ヴァニラの味わいとテクスチャです。ハーブっぽさもあります。

Harlan Estate 2006は2008をさらにスムーズにしたような感じ。Maidenの方がむしろ濃く感じたのは、このテクスチャのせいでしょうか。複雑さは数段Harlanが優っていると思いました。

残り2本はBondの2007年から。Bondの2007年は単一畑の5本がすべてWA誌で97点以上を取るなど非常に評価が高い年。WAの点だけでいえば、Harlan 2006の96点より上です。

QuellaはSt. Helenaの東側の裾野にある畑。このワインは一口で言うととにかくバランスがいい。いろいろな要素があるのですが、何かが突出しているというよりも、すごくまとまったワインでした。タンニンも結構あるのですが、一口目ではあまり感じず、後から余韻としてじわっとくる感じ。Harlanよりも全体に明るい印象。敢えて順位を付けるなら、これが個人的なこの日のベスト。

PluribusはSpring Mountainの標高1000フィートを超えるところにある畑。目を閉じて香りを嗅いでいると、森の中にいるような感じがしたのですが、実際この畑はRedwoodに囲まれているそうです。ブルーベリーやミルキーっぽさもあり、非常に複雑でおいしいワイン。


ボンドは世界中どこよりも、日本国内の価格が安くなっています。お勧め。