ト・カロンは地名ではなく商標、米国地名委員会が決定
米国地名委員会(US Board of Geographic Names=BGN)は2017年に認めた「To Kalon Creek」の名称を撤回する旨、8月14日に決定しました。

写真はMcDonaldのインスタグラムから
世界最高のカベルネ・ソーヴィニョンの畑といっても過言ではないほどの銘醸畑であるト・カロン・ヴィンヤード、その歴史をさかのぼると1868年にハミルトン・クラブという人が土地を購入してブドウ畑を作り、その名前として名付けたものでした。ギリシャ語で「最高の美しさ」という意味があります。
ハミルトン・クラブの死後は、マーティン・ステリングという人が所有し、その後イタリアン・スイス・コロニー、チャールズ・クリュッグを経てロバート・モンダヴィがその大部分を所有することになりました。ロバート・モンダヴィは1987年に「ト・カロン」の名前を商標登録し、現在はコンステレーション・ブランズがその権利を持っています。また、その一部はオーパス・ワン(コンステレーションとシャトー・ムートンの合弁)が所有する形になっています。
ただ、元々のト・カロンの全体をコンステレーションが持っているわけではありません。一部はボーリュー・ヴィンヤード(BV)を経て、アンディ・ベクストファーが購入しました。
シュレーダーはこの畑から2002年に「Beckstoffer Original To Kalon Vineyard」とラベルに銘打ったワインを出し、2003年にロバート・モンダヴィがそれを提訴、ベクストファー側もモンダヴィの商標は無効として反訴するということがありました。両社はその後和解し、ベクストファーはベクストファー・ト・カロンを畑の名前として使えることになりました。
このほか、マーティン・ステリング未亡人から一部を購入したヘドウィグ・デタートという人がおり、現在はその子孫が畑を二つに分け、デタート(Detert)およびマクドナルド(MacDonald)というワイナリーを興しています(ほかにもありますがここでは省略)。
この二つのワイナリーはト・カロンの名称を使えないのですが、マクドナルドのグレアム・マクドナルド(この人は現在若手の凄腕ワインメーカーとして知られています)が、ト・カロンは土地の名前であったはずなのにおかしいと考え、2017年にここを通る小川にト・カロン・クリークという名前を申請して許可されたのです。そのほとりに立つのが冒頭の写真です。

畑と小川の位置関係を示しました。
これに対して、ト・カロンが地名であるということになると困ると考えてコンステレーションが米国地名委員会に撤回の要望を出し、その決定が冒頭に挙げた結論になります。
ワイン・スペクテーターの記事によると、グレアム・マクドナルドは「危機に瀕しているのは、ト・カロンの遺産だけでなく、アメリカワインにおける土地の概念です。私たちのワインコミュニティは、その遺産の真正性を守らなければなりません。そうして初めて、私たちは土地に対する真の、何世代にもわたる敬意を築くことができるのです」と語っています。
また、アンディ・ベクストファーは「ト・カロン・クリークは存続すべきであり、利害関係のある関係者は皆、ト・カロン・ヴィンヤードを歴史的な場所として保存・保護することに注力すべきだ」と語っています。
裁判ではなく、控訴審があるわけではないので、今回の決定をこの後くつがえすのは難しいと思いますが、今後どうなっていくのでしょうか。

写真はMcDonaldのインスタグラムから
世界最高のカベルネ・ソーヴィニョンの畑といっても過言ではないほどの銘醸畑であるト・カロン・ヴィンヤード、その歴史をさかのぼると1868年にハミルトン・クラブという人が土地を購入してブドウ畑を作り、その名前として名付けたものでした。ギリシャ語で「最高の美しさ」という意味があります。
ハミルトン・クラブの死後は、マーティン・ステリングという人が所有し、その後イタリアン・スイス・コロニー、チャールズ・クリュッグを経てロバート・モンダヴィがその大部分を所有することになりました。ロバート・モンダヴィは1987年に「ト・カロン」の名前を商標登録し、現在はコンステレーション・ブランズがその権利を持っています。また、その一部はオーパス・ワン(コンステレーションとシャトー・ムートンの合弁)が所有する形になっています。
ただ、元々のト・カロンの全体をコンステレーションが持っているわけではありません。一部はボーリュー・ヴィンヤード(BV)を経て、アンディ・ベクストファーが購入しました。
シュレーダーはこの畑から2002年に「Beckstoffer Original To Kalon Vineyard」とラベルに銘打ったワインを出し、2003年にロバート・モンダヴィがそれを提訴、ベクストファー側もモンダヴィの商標は無効として反訴するということがありました。両社はその後和解し、ベクストファーはベクストファー・ト・カロンを畑の名前として使えることになりました。
このほか、マーティン・ステリング未亡人から一部を購入したヘドウィグ・デタートという人がおり、現在はその子孫が畑を二つに分け、デタート(Detert)およびマクドナルド(MacDonald)というワイナリーを興しています(ほかにもありますがここでは省略)。
この二つのワイナリーはト・カロンの名称を使えないのですが、マクドナルドのグレアム・マクドナルド(この人は現在若手の凄腕ワインメーカーとして知られています)が、ト・カロンは土地の名前であったはずなのにおかしいと考え、2017年にここを通る小川にト・カロン・クリークという名前を申請して許可されたのです。そのほとりに立つのが冒頭の写真です。

畑と小川の位置関係を示しました。
これに対して、ト・カロンが地名であるということになると困ると考えてコンステレーションが米国地名委員会に撤回の要望を出し、その決定が冒頭に挙げた結論になります。
ワイン・スペクテーターの記事によると、グレアム・マクドナルドは「危機に瀕しているのは、ト・カロンの遺産だけでなく、アメリカワインにおける土地の概念です。私たちのワインコミュニティは、その遺産の真正性を守らなければなりません。そうして初めて、私たちは土地に対する真の、何世代にもわたる敬意を築くことができるのです」と語っています。
また、アンディ・ベクストファーは「ト・カロン・クリークは存続すべきであり、利害関係のある関係者は皆、ト・カロン・ヴィンヤードを歴史的な場所として保存・保護することに注力すべきだ」と語っています。
裁判ではなく、控訴審があるわけではないので、今回の決定をこの後くつがえすのは難しいと思いますが、今後どうなっていくのでしょうか。