Harlan Estateのマネージング・ディレクターであるDon Weaver(ドン・ウィーバー)氏が来日、ハーラン・エステートのワインを一度に4ヴィンテージも試飲できるセミナーが開かれました。
Don Weaver

以前、HarlanとBondのセミナーに参加したことがありましたが、このときのHarlanは2ヴィンテージ。4ヴィンテージを同時にというのは米国でも開かれたことがないそうです。
ワイン


前回のセミナーでは土地を選び、畑を作り、ワインを試作し、Harlan Estateとして世に出すまで、信じられないほどの努力と辛抱を重ねてきたことが印象的でした。今回もその印象はさらに強化されました。

Bill Harlan氏がOakvilleの西側の斜面に土地を購入したのは1984年。山の麓からやや登り始めたところであり、当時はそこは畑でもなんでもなく、ただの森でした。そこを切り開いてブドウを植えられるようにするまでは、まさに汗水たらして作業する必要がありました。Don Weaver氏は、ワインはおしゃれなものに考えられているが、実際にはこういった地道な労働に支えられているのだと言っていました。

セミナーではそのころの写真が数多く映しだされました。映されたものを撮ったので画質は悪いですが、一部を紹介します。

畑1
畑2
トラクタ

また、Opus OneやInsigniaといった、比較的生産量の多い、複数の畑のブドウをブレンドするワインでは、年ごとの味わいがあまり変わらないようにブレンドしていますが、単一畑のHarlan Estateではヴィンテージによって「ワインのムード(雰囲気)」が変わるとBill Harlanは言っているそうです。毎年共通する畑の個性と、こういったヴィンテージによる違い、それらを試飲で見ていきます。

さて、試飲は「続き」で。

新しいヴィンテージから試飲です。

2009年はあと1カ月くらいで市場に出始めるところだそうです。Don Weaver氏も最終ボトリングの後は、昨日初めて試飲したとのことでした。

さすがに若いです。色も一番濃い。スミレやバラの花の香りやブルーベリーなど青系の果実を強く感じます。凄まじいまでの果実味。若いのでタンニンもかなりあるのですが、とげとげせず、全体に丸い印象を与えるところがさすがハーランです。香りも重層的。

ほかのヴィンテージのを飲んでから、2009年に戻ると、特にその果実味の強烈さに改めて驚きます。まるでブルーベリー・ジュースを飲んでいるかのよう。今のままでも極めて個性的であり、おいしいのですが、少し落ち着いてきたらすごく美味しくなるような気がしました。なお、Wine Advocate誌では97点の評価です。なお、このヴィンテージはワイナリ設立25周年としてラベルに文字が入るそうです。

次は2005年。これは涼しい年としてDon Weaver氏が選んだもの。基本的な構成要素は2009年と似ていますが、果実の甘みはそれほど強くなく、今回の4ヴィンテージの中では酸を一番感じました。バランスが素晴らしくよく、個人的にはこれが一番美味しく感じたヴィンテージです。濃いのですが、重さを感じないところがすごいです。これもWine Advocateでは97点。

2003年は温暖な年。Don Weaver氏は「ワインは作ってから6~8年くらいに1回閉じてしまうことがある。それから辛抱して待つとまた良くなってくる。同じワインでもどんどん味わいが変わる」と言っていましたが、今回のこのヴィンテージは、その閉じた状態だったのかもしれません。これだけ香りの要素がちょっと異なり、湿ったきのこのようなニュアンスを感じました。

最後は1999年。Don Weaver氏によると10年を過ぎると、それまでの果実味などを楽しむ段階から熟成を楽しむ段階に変わっていくとのこと。色も、エッジにわずかにオレンジ色が見え、他のヴィンテージと比べると確かに熟成を感じます。一番するする飲めてしまう危険なワイン(笑)。香りは少し弱く感じました。

4ヴィンテージを試飲してみると、きめの細かいタンニンや、濃いのだけど重さを感じないところなど、共通する要素が数多くある一方で、やはりヴィンテージによる個性もあり、とても興味深いものでした。

前回のセミナーでも感じたことですが、Harlanに関しては「パーカーが高得点を付けたから」といったことよりも、Harlan Estateとしての個性に惹かれるものが強くあります。高嶺の花ではありますが、それだけ惹かれる人が多いというのも理解出来ます。