ペイ・ヴィンヤーズのニック・ペイからは、個々の質問に答えるのではなく、総括的にご返事いただきました。

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ニック・ペイ、ヴァネッサ・ウォン夫妻

一言でまとめるならば、IPOBは素晴らしいタイミングだった。ワイン通の間に議論を巻き起こしたと言ったらちょっと言い過ぎかもしれないが。

日本におけるイベントが日本人の意見を変えたのだとしたら、さらに重要だっただろう。米国においては評論家のレビューは以前より影響力がなくなっており、代わってソムリエが影響力を持つようになってきている。一般的にはソムリエはバランスが取れたワインを探している。そのレストランの料理に合うワインを提供するのが仕事だからだ。ソムリエの台頭と、ソーシャルメディアによって、専門性がより広範に分散するようになった。

このように、米国ではシフトが起こっている。そして、IPOBはそのシフトの一部だった。もし、IPOBを失敗と位置付けるのであれば、それはIPOBが変化を主張し、その変化が起こらなかったからだろう。

試飲会はワイン好きの皆さんにとっては重要なサービスなのだと思う。一か所で、トップクオリティのワインをまとめて飲めるのだから。IPOBがそれを続けるべきだったかと言えばそうだろう。しかし、このようなロードショーはかなりお金がかかる、特に日本やロンドンのような遠い地では。私の想像では、IPOBのコア・メンバーにとってはお金がかかり過ぎだったのかもしれない。

ワイン通の好みは明らかにエレガントさと微妙な味わいに寄っている。彼らは偉大なワインは熟成によっておいしくなると昔から考えており、評論家の評価が高い熟し過ぎのワインを買ってみても、結局はうまく熟成しないという結果に終わってしまう。最初は魅惑的で豊かな味わいだが食事には合わせ辛く、熟成すると、シロップのようになり、味わいがバラバラで刺々しく、まとめて言えば美味しくないのだ。

私たちはピノ・ノワールに興味を持つ人が少なかった1994年に始めたときから、スタイルについてのビジョンがあった。サイドウェイでピノ・ノワールの人気が高まり、過熟的なスタイルが人気になっても、理想を変えなかった。高級ワインはワイン全体の消費の中ではごく一部であり、わたしたちを含め、うまくいっている会社は自分たちのスタイルを好んでくれるニッチなファンを見つける必要がある。IPOBはそのためのメッセージ発信としてとてもいいときに一緒にできた。今は、熱狂はピノを超えていってしまったように思える。といっても「次にホットなもの」を私に聞かれても答えられないが。

確かに、ブランドに対する消費者の認知を上げるのに役立つ業界のグループを持つことは常にいいことではある。そして、私たちはこの地域、ファー・ソノマ・コースト(Far Sonoma Coast)をプロモートしている。私の弟アンディとリトライのテッド・レモン、レッド・カーのキャロル・ケンプは4、5年前にウエスト・ソノマ・コースト・ヴィントナーズを始めた。そこには、この地域のIPOBメンバーは全員入っており(ハーシュ、コブ、ファイラ、セリタスなど)、それ以外のメンバーもいる。このグループは米国のいくつかの大都市では試飲会を開いているが、残念ながらまだ日本で試飲会を開く予定は聞いたことがない。

日本のIPOB試飲会でペイ・ヴィンヤーズへの評価が変わったのかどうかは、インポーター(中川ワイン)に聞いてもらうのがいいだろう。私の受けた感じでは、とてもよく受け入れられたし、印象も変わったと思う。

日本旅行はとても楽しく、また行って多くの人に私たちのワインを知ってほしいと思っていた。鶏と卵になってしまうが、もっとワインが売れれば、行く機会も増えるだろうし、行けば、もっとワインも売れるだろう。

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昨年のインタビューのときも思いましたが、ニック・ペイさん、とてもいい人です。ワインの味にもそれが現れている(ワインメーカーは奥さんのヴァネッサ・ウォンさんですが)気がします。また、日本に来る機会がありますように(中川ワインさん、がんばって!)。