シェーファーが2015年のヴィンテージからメルローをやめ、代わりに「TD-9」というブレンドワインを作り始めました(実は以前「布袋ワインズの試飲会から気になったワイン(2017年秋」にも書いています)。この新しいワインの宣伝のために、オーナーのダグ・シェーファーが来日し、ランチに参加しました。
ダグ・シェーファー
まずは、火事の話から。ダグ・シェーファーの自宅はセント・ヘレナにあるのですが、日曜日の夜10時10分ごろ、息子がスタッグス・リープ方面に火や煙が出ているのを見つけ、急いで車で向かったそうです。ものすごい強風で、火と煙は竜巻のようになっていたそうです。朝7時にはワイナリーぎりぎりまで火が来ましたが、ブドウ畑が自然の防火帯になって、ワイナリーや近くにある父親の家は難を免れたとのこと。レンタルハウスが1つ燃えてしまったのが最大の被害でした。

この日は本当に風が強く、カリストガで発生したタブズ・ファイアーの場合、そこからサンタ・ローザまでわずか3時間で燃え広がってしまったそうです。

シェーファーでは収穫も済んでおり、5日間停電はありましたが、その間は発電機でまかなえたのでワイン作りにも支障はきたさなかったとのこと。

あと、一般論として煙の被害については確かに否定できないのですが、対処法についてのマニュアルもあるので、各ワイナリーのワインメーカーは最善を尽くすでしょうとのこと。そして、ナパは何よりも品質を大事にする地域なので、実際のワインに汚染が認められたら、それをそのまま出荷することはなく、実際に出荷するワインの品質が落ちる心配はさほどないのではないか、とのことでした。例えば近年だと2011年は雨が多く難しい年でした。クオリティーに達しないワインは売ってしまったので、実際に作られたワインの品質は担保されたといいます。

余談ですが、そういえばシェーファーには以前「ファイアーブレーク」(防火帯)というサンジョベーゼ・ブレンドのワインがありました。このワインは、1981年の山火事の際に防火帯となっていたところを畑にしたことから名付けられたのですが、今回は畑そのものが自然の防火帯になったとのことでした。

今回飲んだワイン
ワインは2015年のシャルドネ・レッド・ショルダー・ランチ、2015年のTD-9、2014年のカベルネ・ソーヴィニヨン・ワン・ポイント・ファイブ、そして2013年のカベルネ・ソーヴィニヨン・ヒルサイド・セレクトでした。

まずはシャルドネからです。これがびっくりするくらいおいしい。シェーファーというと赤ワインのイメージが強いですが、これは主役を張れるくらいの実力があります。例えば、オーベールのAVAものと同レベルに感じました。ダグも「おいしいでしょ」っていっていたので、かなり自信あるのでしょう。なお、25%ステンレスのバレルを使っているとのこと。

オレンジやクリーム、はちみつの香り、華やかな果実味にバニラやクリームブリュレのようななめらかな味わい。ホワイトペッパーの風味。フルボディのワインだが、マロラクティック発酵を行っていないので、フレッシュな味わいを強く残しています。

次が新作TD-9。

シェーファーにとってメルローは頭痛の種でした。自社畑はあるのですが、収量が安定せず、購入したブドウも合わせて作られていました。2015年の収穫時期のある日、ワインメーカーのイライアス・フェルナンデスがダグにいいました。「メルローという名前をやめればもっといいワインができるよ」。メルローと名乗るためにはメルローを75%以上使っていないといけないわけですが、その縛りを解きたいというのです。「ならやってみてよ」とダグ。エルナンデスが研究室にこもって1時間。「できたよ」というので行ってみたところグラスが2つ用意されていました。比べてみたところ「右のグラスがいい」と二人の意見が一致。それが、ブレンドになりました。それで、メルローという名前をはずすことにし、代わりに、シェーファー家がナパに来て最初に買ったトラクターの名前をワインに使うことにしました。

TD-9のコンセプトは「一番おいしいブレンドを作る」ことなので、ブレンド比率は毎年変わります。最初のものはメルローが56%になりました。残りはカベルネ・ソーヴィニヨンが28%、マルベックが16%。自社畑のブドウがメインで、メルローは外からの購入を止めたそうですが、マルベックなどは買いブドウも含まれているそうです。

日本ではシェーファーのメルローは昔から人気のワイン。確かに、このサイトを始めた1990年代末期にもシェーファーといえばメルロー、カリフォルニアのメルローといえばシェーファーといっても過言ではないくらいポピュラーなワインでした。それをやめてしまうことについては、素直に「ごめんなさい」とのこと。ただ、メルローは今でも好きだし、メルローを今も育てているし、それをやめる気はさらさらない。ただ、それを使ってもっといいブレンドを作るのだということで理解してほしいと、ダグは言っていました。

さて、実際のワインですが、やわらかさとストラクチャーを併せ持ったワインです。濃いですが重くない。洗練されたタンニン。後述のカベルネ・ソーヴィニヨン主体のワインがストラクチャーを前面に出したような味わいであるのと比べると、TD-9はメルローの比率が多いぶん、ソフトで飲みやすい印象があります。若いときに飲むのならこちらの方がおいしいくらい。いいワインです。

次は2014年のワン・ポイント・ファイブ。ワン・ポイント・ファイブというのは「1.5世代」という意味。シェーファーを作ったジョン・シェーファーと現当主であるダグ。ダグも最初からワイン作りに携わっていたので第2世代というよりも、1.5世代だということだそうです。

ワインはTD-9と比べるとストラクチャーがよりしっかりとし、スパイシーな味わいもあります。カベルネ・ソーヴィニヨンが95%とのこと。

最後は2013年のヒルサイド・セレクト。カベルネ・ソーヴィニヨン100%で作られるシェーファーのフラッグシップです。

カシスやブルーベリーなどの濃厚な果実味。しっかりとしたストラクチャー。ヒルサイド・セレクトを飲むといつも、そのかっちりとした味わいに、いいカベルネ・ソーヴィニヨンだなあと思います。100%のカベルネ・ソーヴィニヨンのお手本といってもいいワインでしょう。杉やなめし革のような複雑な味わいもあるので、熟成してもおいしいのは間違いないでしょう。というか、開くのにある程度時間がかかるので、すぐに飲むなら、これよりもTD-9やワン・ポイント・ファイブの方がおいしく感じられるかもしれません。

最後に、会場となったANAインターコンチネンタルホテル「ステーキハウス」の料理を紹介します。どれも美味でした。
グリーンサラダ
パンプキンスープ
ステーキ
デザート


シャーファーのメルローが懐かしいという人は今のうちに買っておきましょうね。

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シェーファー メルロー ナパヴァレー
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