ワイン・インスティテュートの日本代表が代わることは「ワイン・インスティテュートの新しい代表に扇谷まどかさん」の記事で紹介していますが、7月からの新体制発足で発表会が開かれ、代表は1人ではなく2人の共同代表になることが判明しました。また、これまで「ワイン・インスティテュート」という名称が日本でも使われていましたが、今後は「カリフォルニアワイン協会」(略称CWI)という名称を使用することになりました。
カリフォルニアワイン協会新体制
新しい代表は既に発表されている扇谷まどかさんに加え、手島孝大(たかひろ)さんが就任します。手島さんは直近まで10年間「ワインオーストラリア」のアジア太平洋地域代表として、オーストラリア・ワインのプロモーションを手がけてきました。

この2人に加え、PR会社の日本アドがデジタル系のプロモーションやコンテンツなどを担っていきます。

新しい代表はどちらも専任ではなく、自分の会社を経営しながらの代表になります。また、手島さんはオーストラリアのシドニーに本拠地を残したままで代表になる形です。専任ではないものの、互いに得意なところを持ち寄るという考えのようです。

今後のプロモーションについても一部が明らかになりました。

毎年春に開催していた「バイザグラス」のキャンペーンは規模を拡大して継続されます。これまでは、覆面審査員による審査を行うため、関東と関西のレストランだけが参加する形でしたが、デジタルツールの活用により、実績の管理を明確にし、全国のレストランが参加できる形にします。また、参加する消費者にも何らかの賞を出していく考えだそうです。SNSを使ったキャンペーンも行います。

毎年秋に東京・大阪で開催していた「グランドテイスティング」は、本年度については東京だけで開催します。ここ数年は夕方から一般消費者も参加できる形でしたが、今年は業界関係者だけの参加で、10月29日に品川の「開東閣」で開かれます。ここは三菱グループの迎賓施設で、一般には非公開のところです。

このほか、SNSでのプロモーションではFacebookのほか、Instagramも活用していく意向だとのこと。SNSでは日本独自のコンテンツも発信していきます。

教育活動としては「カリフォルニアワインの特定テーマにフォーカスしたマニアックなクラス」を開くほか、ソムリエ協会会員への情報提供を行います。また一般消費者向けにはフード・ペアリングなどを学べるようなイベントを各地で開催していきます。フード・ペアリングについては、ナパ・ヴァレー・ヴィントナーズの日本代表である小枝絵麻さんが協力する形になります。

ウェブサイトは、これまで日本独自のものと、米国サイトの翻訳と2つに分かれていたのを一つのサイトに集約します。calwines.jpというドメインを使い、8月に刷新するとのことです。

環太平洋パートナーシップ(TPP)協定から米国が離脱したことにより、関税の面ではカリフォルニアワインは不利な状況になっています。ワインの関税は750mlのボトルに換算すると、最大で93.75円、簡易税率では56.25円と、決して高額ではありませんが、消費量が多い、ボトル1000円未満の領域においては大きな差となります。実際、安ワインで大きくシェアを伸ばしたチリに関しては、既に関税が大きく引き下げられており、それがシェア向上に貢献したことは間違いありません。今後、米国が再加盟を考えているとのことですが、トランプ大統領の通商政策は二転三転しがちであり、どうなるかは予断を許しません。

一方で、中国と米国との関係が悪化することによって、逆に米国にとっての日本の市場の安定性が重要になるという面もあります。おそらく、高級ワインの市場については、一時の中国重視から、また日本重視の流れが出てくるのではないかと想像しています。

新しい体制はこのような、将来が不安定ななか発足することにはなりますが、扇谷さん、手島さん、そして日本アドとそれぞれの強みがありますから、歯車がうまく合えば、これまで以上に効率的なプロモーションが可能になると思います。

まずは新体制をお祝いするとともに、カリフォルニアワインのファン代表として、協力していけるところがあればなあと思っています。