ナパのメリーヴェール(Merryvale)から社長のレネ・シュラッターさんが来日し、セミナーに参加しました。
メリーヴェールのセミナーは2024年5月以来です。
モンダヴィとハーランの故郷、メリーヴェールの現在地


右はお嬢さん。レネさんは家では奥さんと3人の娘の4人の女性に囲まれているとか。

ロバート・モンダヴィの最初のワイナリーであるサニー・セント・ヘレナに端を発したメリーヴェール。ハーラン・エステートのビル・ハーランの最初のワイナリーでもありました。1996年からはシュラッター家が単独オーナーとして家族経営を続けています。輸入元である中川ワインの中川誠一郎社長によると「家族経営のワイナリーがどんどん減っていく中で貴重なワイナリー」だと言います。

ワインメーカーは前回来日したジェフ・クロフォードで、このほかコンサルタントとしてジャン・ホーフリガーが参加しています。ジャン・ホーフリガーはレネさんと同じスイスの出身で長年の友人。以前はフィリップ・メルカがコンサルタントをしていましたが、メルカは多くの顧客を抱え、メリーヴェールではフラッグシップのプロファール・シリーズしか見られなかったため、全体を見てもらえるコンサルタントを依頼したとのことでした。

醸造では複数の発酵容器を組み合わせて使っています。Rieger社製の小型のステンレスタンク、オープントップのコンクリート、樽などを使用しています。

メリーヴェールのワイナリーはセント・ヘレナの中心地にあり、プロファイルの畑はワイナリーから東側の斜面にあります。標高300m以上と霧のかからない高さです。2021年から2023年にかけては、マウント・ヴィーダーに二つの畑、クームズヴィルに一つの畑と畑を拡充しています。山の畑は昼間の気温が上がりにくいことと、夜間は逆に温度があまり下がらず穏やかな気候になります。クームズヴィルもナパではカーネロスの次くらいに海に近く比較的冷涼です。気候変動への対応として、こういった涼しいところの畑を開拓しているとのことです。
サスティナビリティの取り組みとして、醸造設備では「ナパ・グリーン・サーティファイド・ワイナリー」を、また4つの畑全部でで「フィッシュ・フレンドリー・ファーミング」を取得しています。

また、ピノ・ノワールはこれまでナパのカーネロスのスタンリー・ランチとブラウン・ランチを使ってきましたが、2022年からはソノマ・コースト(ペタルマ・ギャップ)の畑に変えます。カーネロスは冷涼ですが、暑い日もあり、皮が薄いピノ・ノワールはその影響を受けやすいので、さらに涼しいところを探したました。メリーヴェールでは、ワインのフレッシュな味わいを大事にしているので、涼しい地域の畑は重視しているとのころです。

試飲に移ります。ポイントは私の主観です。


最初はソーヴィニヨン・ブラン2023。ポープヴァレーやヨントヴィル、ソノマのブドウ(10%未満)を使っています。発酵槽はシガーバレル、コンクリート、ステンレススティールの樽を併用しています。シガーバレルは澱との接触を増やすのが目的です。
黄金色で柑橘や熟したリンゴを感じます。クリアで伸びる酸、スイカズラ、蜜っぽさもあり美味しいソーヴィニヨン・ブラン。92pt

2本目はシャルドネのシルエット2022
カーネロス スタンレーランチのブロック2Aのブドウを使っています。バニラの香り、蜜、グアバ、カモミール、柔らかいがしっかりした酸、さすがレベルの高いシャルドネです。92pt


2021 カーネロス ピノ・ノワール
カーネロスの銘醸畑スタンリーランチとブラウンランチのピノ・ノワールを使っています。スタンリーランチに植わっているクローンはディジョン667で赤系果実やハーブの風味が特徴、ブラウンランチはポマール・クローンでより濃く、凝縮感があり、アーシーな風味が特徴となります。
赤系果実の風味がありますが、ラズベリーのような軽やかな味ではなく、ザクロのような少し重量感のある味わい。シナモンや紅茶、五香粉など、スパイス系の風味も特徴。89pt

2023 メルロー ナパ・ヴァレー
この年は100%ナパのクームズヴィルの畑のメルローを使っています。一つは前述のクームズヴィルの畑で、もう一つはFaustの畑です。50%新樽で15カ月熟成しています。新樽は樽の風味を付けるためというよりも、タンニンを和らげる効果のためだとのこと。2023年は涼しい年だったので冷涼感のあるメルローに仕上がっているといいます。
ナパのメルローというとちょっと甘やかさを感じるものが多いですが、このワインはハーブの香りなど「セイバリー」な風味が比較的前面に出ています。少しピラジンを感じ、レッド・チェリーなどの赤果実もあります。タンニンは柔らかく、優しい味わい。88pt

2021 カベルネ・ソーヴィニヨン ナパ・ヴァレー
プロファイル・エステートとオークノールにあるHardman Vineyardという畑のブドウを使っています。メルローの柔らかさと比べると、こちらはタンニンと堅さを感じる味わい。少しピラジンの風味もあります。ミントやディルのようなハーブや、グラファイトといった果実味以外の要素が多く感じられます。現時点の評価としては88ptとしますが、熟成するとすごく良くなりそうなカベルネ・ソーヴィニヨンです。2021年は干ばつの年で、ブドウの実が小さくなったことが、味わいの堅さにつながっているようです。

最後にフラッグシップであるプロファイルの2018年と2010年(蔵出し)です。2018年は国内での現行のヴィンテージです。プロファイルの畑は認証は取っていませんがオーガニックで栽培。前述のようにフィッシュ・フレンドリー・ファーミングの認証は得ています。

2018 Profile
カベルネ・ソーヴィニヨン82%でカベルネ・フランが17%、プティ・ヴェルドが1%。比較的カベルネ・フランが多い年となっています。
カシスなどの熟した果実に黒鉛、リッチでフルボディで酸も豊かです。しなやかなタンニンでバランスよく素晴らしいワイン。94pt

2010 Profile
プロファイルは従来は買いブドウで造っていましたが、この年からすべて自社畑になっています。
黒系果実にマッシュルームや腐葉土といった熟成による香り。ハーブも感じます。素晴らしくきれいに熟成しています。96pt

セミナーはここまでですが、それ以外のワインも試飲ができました。セカンド的な位置付けになるスターモントはラベルを新しくしています。星座の模様をあしらっていますが、品種ごとに最初にリリースされた年の星空の配置をなぞったものになっています。ソーヴィニヨン・ブランは2024年から、シャルドネとピノ・ノワール、カベルネ・ソーヴィニヨンは2023年から変わっています。

2024 スターモント ソーヴィニヨン・ブラン
青リンゴやハーブの風味。穏やかな酸味 86pt

2022 スターモント シャルドネ
柔らかくバランスのいい味わい 88pt

2020 スターモント・ロゼ・ピノ・ノワール
チャーミングな味わい 88pt

2021 スターモント ピノ・ノワール
ピノ・ノワールとしてはややしっかりした系統。青果実の風味もあります 87pt

2019 スターモント カベルネ・ソーヴィニヨン
少し堅さがありますが、フレッシュでバランスの良さは秀逸 90pt

2022 メリーヴェール シャルドネ・ソノマ・コースト
ソノマ・コーストに変わった最初のヴィンテージです。酸がきれいでバランスがいい 91pt

NV  アンティグア
酒精強化によるデザートワインです。リッチで甘く、焦がし麦の風味があります。 89pt