ちょっと時間がたってしまいましたが、12月初旬にあったサシ・ムーアマンのセミナー報告です。
今回は、中川ワインとワイン・イン・スタイルの共同セミナーという非常に珍しい形式。中川ではサシ・ムーアマンのワインの中でサンタ・バーバラで自社畑のワインを作るドメーヌ・ド・ラ・コートと、サシ・ムーアマン個人プロジェクトでシラーなどを手掛けるピエドラサッシを輸入しており、ワイン・イン・スタイルはサンタ・バーバラで購入したブドウでワインを作るサンディと、オレゴンのイヴニング・ランドを取り扱っています。

まずはドメーヌ・ド・ラ・コートから2種類。ピノ・ノワールの「ピュア2018」(6000円)と「ラ・コート2017」(1万5000円)。ピュアはその名の通り、ピュアな味わいを身上とするワイン。醸造する前に普通はブドウを破砕するのですが、それを行わず、また発酵時にはSO2を加えないというワイン。さらに発酵中のパンチダウンもしなければ、酵母も加えない。ユニークな作りです。味わいはベリー系に花の香り、かすかにバニラ。味はしっかりしていますが、複雑さはそれほどないので、熟成させるというよりも若いピュアな味わいを楽しむワインです。

ラ・コートはベリー系にブラックペッパーなどのスパイスやナッツの風味。複雑な味わいです。酸もかなりしっかりしており、タンニンも強いです。余韻長く、レベルの高いワイン。熟成を楽しみたいワインです。ブドウをワイナリーに運んだ時点で酸化防止にSO2を加えるのが普通ですが、ここはそれを行わず、また低温ですごく時間をかけて発酵をしているとのこと。

次はサンディのピノ・ノワール「サンフォード&ベネディクト2015」(6900円)。ホールクラスターで発酵。発酵中はポンプオーバーだけでパンチダウンはなし。ピノ・ノワールでは珍しい気がしますが、パンチダウンをすると、ホールクラスターの茎のカリウムと果汁が接触することで酸が落ちてしまうとのこと。酸が1/4も落ちてしまうこともあるそうです。初めて聞いたことで勉強になりました。やや薄めの色合いで、ベリーの風味に、ホールクラスターによるものか草の風味を感じます。

ピノ・ノワールの最後はイヴニング・ランドのセヴン・スプリングス「ラ・スルス2015」(1万2000円)。オレゴンは夏が短く、その代わり日照時間がながく、夏は気温も高くなります。カリフォルニアではフレッシュさは酸が大事ですが、オレゴンではタンニンのしっかりした味わいがフレッシュにつながります。かなり酸が強く、ベリーの風味に加え、柑橘系や土、花のかおりもあります。

次はシャルドネ2本。普通は白ワインから試飲しますが、非常に酸が強いシャルドネなので、先に試飲すると舌がマスクされてしまい、後で飲んだワインの酸がわからなくなるとのことでピノ・ノワールの後での試飲です。

最初のシャルドネはイヴニング・ランドのセヴン・スプリングス「ラ・スルス2016」(1万2000円)。このワイン、少し還元香があるのですが、わざとそういったスタイルにしているとのこと。レモンやグレープフルーツに燻製やスパイスの風味があり、確かに複雑さは素晴らしいものがあります。

2本目のシャルドネはサンディの「サンフォード&ベネディクト2016」(6900円)。こちらはカリフォルニアらしい果実にの強さがあるワイン。パイナップルやレモンの風味にナッティな味わいもあります。余韻も長く美味しい。

最後はサシ・ムーアマン自身のワイナリーであるピエドラサッシから2本。最初は「PS シラー 2017」(4000円)。入門的ワインで若木のブドウを中心に作っているそうですが、カシスやブルーベリーの果実味に、胡椒などのスパイスや土の風味、ドライフルーツなど複雑味は十分。早めの収穫でアロマを出しているとのこと。

次は「シラー リムリック・ヴィンヤード2016」(7600円)。非常に余韻も長くすばらしいシラー。

所用で途中で退席してしまったので最後はちょっと消化不良ですみません。それでもサシ・ムーアマンのワイン造りへのこだわりの強さと、手間暇を惜しまないことはとてもよくわかりました。また、カリフォルニアとオレゴンの違いも、カリフォルニアでワインを作っている経験を元に説明してもらうと、すごく腑に落ちます。オレゴンとカリフォルニアはすぐとなりではありますが、その違いはかなり大きく、それを味わえたのも興味深かったです。

ドメーヌ・ド・ラ・コートの単一畑やイヴニング・ランドの「ラ・スルス」は1万円を超えますが、サンディのワインやドメーヌ・ド・ラ・コートの「ピュア」、そして今回は試飲なかったですがイヴニング・ランドのレギュラーの単一畑などは比較的手を出しやすい価格です。それらもレベル高いので、ぜひ試していただきたいワインです。