カリフォルニアのワインメーカーの中でも、他の追随を許さない独自の道を歩んだショーン・サッカリー(Sean Thackrey)が79歳で亡くなりました。10年に及ぶがんとの闘病の末の旅立ちでした。
ショーン・サッカリー
ショーン・サッカリーはサンフランシスコの北のマリン郡にあるボリナスというヒッピーのコミュニティに住み、アート・ディーラーをしていました。1979年にナパのスタッグス・リープにある銘醸畑Fayのブドウを調達してワイン造りを始めました。

彼は、ワイン造りの古い文献の収集家でもあり、そこで書かれている古くから使われている方法でワインを造りました。例えばギリシャの詩人ヘシオドスが書いたものから、収穫したブドウを1日野ざらしにした後、発酵に移すといった方法を取っていました。科学的にはバクテリアの汚染の可能性があるものですが、彼は古くからやられている方法には意味があるとして、決してそれを変えようとはしませんでした。

その結果、彼のワインは常に「クリーン」だったというわけではないのですが、そこにはある程度寛容だった一方、彼自身が「欠陥がある」と感じたときにはワインを売らない決断をするのもやぶさかではなかったといいます。

彼のワイン造りの姿勢は、現在の「自然派」に多く通じるものがありますが、彼自陣はマーケティング的なレッテルを貼られることを極度に嫌がり、自身を「自然派」とすることはありませんでした。「テロワール」といった言葉も「ゲリマンダーのようなマーケティング的なギミック」だとして嫌っていたといいます。

サッカリーのフラッグシップ・ワイン「オライオン(Orion)」はロバート・パーカーが最高98点、点数の辛いステファン・タンザーも96点を付けたことがあります。セント・ヘレナのロッシ(Rossi)ヴィンヤードの20世紀初頭に植えられたフィールドブレンドのブドウを使ったワインで、プティ・シラーが入っているということ以外、いまだに詳しいことは調べられていません。

孤高のワインを造り続けたショーン・サッカリー、この4月には蔵書をオークションで処分していました(売上は全部で200万ドルに達したといいます)。余命を知ってのことだったのかと思います。

ご冥福をお祈りします。

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