カリフォルニアワイン協会が2022年の収穫レポートを公表しています。収穫は10月下旬にほぼ終了しました。例年は最後の収穫は11月までずれ込むことが多いのですが、今年はほぼ10月中に終了。「ワインメーカーもハロウィンを楽しめた」といったジョークも出ていました。

干ばつが続き、山火事の危険性が懸念されていましたが、幸いなことにほとんどの山火事はワイン産地への影響がなかったようです。多くの地域で品質は上々。ただし春先の霜や干ばつの影響で、収穫量は例年よりも少なかったところが多くなりました。

今年の収穫での最大のトピックは「熱波」。9月上旬のレイバーデイ前後で1週間近くも華氏で100度(摂氏38度程度)を超えるような高温が続きました。天気予報で熱波が到来することは分かっていましたから、シャルドネやピノ・ノワールなど、収穫時期が早めなブドウはほとんどレイバーデイ前に収穫されました。熱波到来前の駆け込み収穫で、醸造設備が足りなくなるようなワイナリーもあったようです。熱波の後には降雨もありましたが、特に収穫の足かせになるようなものではなかったようです。

ワイナリーによっては同じ品種でもレイバーデイ前とレイバーデイ後に収穫が分かれてしまったところもあります。レイバーデイ前のブドウはタンニンが強く、かなりしっかりした味わいのワインになります。一方、熱波より後に収穫したブドウは芳醇でやわらかな味わい。レイバーデイ前とレイバーデイ後で大きく個性の異なるワインができます。そのため、同じワインで収穫が熱波の前と後に分かれてしまったようなところでは、これらをどうブレンドしていくかもワインメーカーの腕の見せどころになりそうです。

熱波以外では春先の霜が大きな出来事でした。ローダイなどの温暖な地域で、春に霜がおり、収穫量が大幅に減りました。また、干ばつはほとんどの地域で続いており、収穫減につながっています。

以下では各地域についてまとめます。
メンドシーノ:春先は好条件の天候が続き、品質も収穫量も大きく期待されました。ただ、レイバーデイの熱波と干ばつによって、収穫はややチャレンジングになりました。結果的には収穫量はやや多く、完熟したブドウの糖度は例年より少し低いくらいに収まりました。
ナパ:2021年の10月と12月には500mmほどの雨が降りました。2022年の芽吹きは3月で、春は温暖からやや冷涼。9月のレイバーデイの1週間は38℃を超える高温が続き、数日間は43℃~47℃ほどにまで上がりました。幸いなことに、夜は15℃程度まで気温が下がったのでブドウがリフレッシュされました。この熱波でブドウの成熟は早まり、例年より早い収穫になりました。品質は非常に良く、白は完璧な酸を残し、フレーバーとテクスチャーも素晴らしく、赤はストラクチャーがありフレーバーも素晴らしいです。
ソノマ:芽吹きは2月に始まりました。2月と4月には低温の時期があり、夏はややマイルド。収穫は予想より数週間早い7月29日に始まりました。収穫は10月半ばまでに90%終了しました。収量は平均より少なく、品質は素晴らしいものがあります。
ローダイ:春の霜は2008年以来の大きな被害をもたらしました。中には今年の収穫を諦めた生産者もいました。レイバーデイの熱波によって、一部のブドウは脱水して収穫量も少し減りました。熱波の前に収穫した白は素晴らしい品質です。
モントレー:21年秋には降雨があり、干ばつを少し和らげました。春の霜害もまぬがれ、非常に順調に進んでいましたが、レイバーデイの熱波によってブドウが脱水し、ピノ・ノワールは平年より25~40%も少ない収穫になりました。ただ、品質は上々です。
パソ・ロブレス:春先の霜害はほとんどありませんでしたが、晩春に異常な低温が続き、実付きに影響が出ました。8月には約1週間、気温37~40℃の熱波があり、続いて9月には10日ほど40~46℃もの熱波に襲われました。その後には雨が降って生産者をやきもきさせました。この地域には珍しく8月に赤ワイン用のブドウの収穫が始まりました。収穫量は干ばつや春の低温のため30%ほど減りました。味わいは凝縮して素晴らしいものになっています。
サンタ・バーバラ:9月の熱波の前に収穫したブドウは素晴らしい品質でした。春は霜の影響はなかったものの干ばつと低温、強風で最大30%ほど収穫が減ったところがありました。9月の熱波はブドウの状態に大きく影響し、熱波後は通常より糖度が低くなりました。その後の降雨量も多く、さらに糖度が下がりました。畑によって収穫時期も品質も大きく変わる年になりました。