サスティナブルを40年以上実践するクライン、高級なソノマAVAシリーズを日本市場で発売
ソノマのカーネロスに本拠地を持つクライン・ファミリー・セラーズ(Cline Family Cellars)が、クラインの中では高級ラインになる「ソノマAVAシリーズ」の国内発売に伴い、日本で発表会を開催しました。
クラインのワインは、国内では2000~3000円台の価格帯のものが中心でした。ソノマAVAシリーズは希望小売価格が税抜き6500~7000円と、やや高級な部類に入ります。なお、米国では単一畑のシリーズも販売しています。ソノマAVAシリーズは米国外では日本が初だとのことです。
今回来日したのは創設者のフレッド・クライン、ナンシー・クラインの夫妻。1982年の創設以来、家族経営をつづけています。ナンシーさんは初来日、フレッドさんは30年ぶりの来日。フレッドさんが以前来たときはココファームの仕事だったとのことで、クラインの代表として来るのは初めてです。
クラインはワイナリー名に「ファミリー」と入っているように、家族をとても大事にしています。ワイナリーの哲学も「家族」で、子供たちが畑を走り回っても危険がないように、設立当初から自社畑では除草剤や農薬をつかっていません。今でこそ「サスティナブル」は多くのワイナリーのキーワードになっていますが、約40年前からそれを実践してきたわけです。なお、二人には子供が7人おり、そのうち4人はクラインで働いています。家族経営としての持続性もあるわけですね。
クラインでは上の写真にあるように羊や山羊を放し飼いにしています。彼らが適度に草やブドウのはっぱを食べてくれます。雑草を食べてもらうための羊や山羊をレンタルするサービスもカリフォルニアにはありますが、クラインでは自分のところで飼っている羊や山羊を使っています。このほかブドウの皮などはたい肥に使用、猛禽類のための巣籠を設置するなど、自然と共存した農業を実践しています。
クラインのワインは、以前はABC(Anything but Chardonnay、Anything but Cabernet)といってシャルドネやカベルネといった人気品種を避けて、ローヌ系品種やジンファンデルを中心としていました。今もそれらは大事な品種ではありますが、近年はシャルドネやカベルネ・ソーヴィニヨン、ピノ・ノワールなども作っています。ソノマAVAシリーズもシャルドネ、ピノ・ノワール、ジンファンデル、カベルネ・ソーヴィニヨンという構成で、それぞれその品種を得意とするAVAのブドウで造られており、その地域の特性をワインのニックネームに使っています。このシリーズを始めたのも、ワイナリーを子供たちに継承していくことが年頭にあるようで、子供たちが生まれ育ったふるさとであるソノマを代表するようなブドウのワインを造り、新しいクラインの姿を伝えていきたいと語っていました。
シャルドネは「ハット・ストラップ」。畑はカーネロスの自社畑「J. Poppe」で、この畑が強風の通り道となっていることから、帽子を飛ばされないように紐を付けないといけないということで、そのニックネームが付きました。味わいは、まず柑橘などの果実味が口全体に広がります。豊かな酸で食欲もそそられるあじわい。白い花の香り、軽い樽の風味。アルコール分もたっぷりあり、濃密ですが上品なシャルドネです。
ピノ・ノワールも100%自社畑でソノマ・コーストのペタルマ・ギャップにある二つの畑のブドウを使っているようです。ニックネームは「フォグ・スウェプト」で、朝霧に覆われた地域を表現しています。チェリーやフランボワーズ、ザクロなど赤果実の風味。これも酸が高いです。エレガントですが、果実味がギュッと詰まったような濃密感や満足感のあるピノ・ノワールです。どうやら、この上品さと果実の豊かさによる濃密さの両立というのがこのシリーズの特徴になっているような気がしました。
ジンファンデルはドライ・クリーク・ヴァレーから。スクール・ハウス・クリーク・ヴィンヤードというレイク・ソノマの近くの畑のブドウを使っています。樹齢は40~100年。樹が1本ずつ自立した作りで、ブドウの枝を8方向に伸ばすという古来からの剪定方法を使っていることから「エイト・スパー」というニックネームが付きました。ラズベリーやクランベリーの柔らかな果実味で甘やかさと酸とのバランスがいいワイン。ジューシーな味わいはジンファンデルのお手本的です。
最後はカベルネ・ソーヴィニヨンで、アレキサンダー・ヴァレーのブドウを使っています。畑はRio Lagoという、アレキサンダー・ヴァレーの中では一番ロシアンリバー・ヴァレーに近いやや冷涼なベンチランドの畑です。メルローとプティ・シラー、アリカンテ・ブーシェがブレンドされていてプティ・シラー、とアリカンテ・ブーシェは自社畑のものです。アレキサンダー・ヴァレーのカベルネ・ソーヴィニヨンというと代表するのがシルヴァー・オークやジョーダンで、どちらも濃すぎず芳醇な果実味が特徴です。このワインも果実味の豊かさはそのイメージ通り。味わいの底の方にタンニンがあり、じっくり味わうとそれがだんだんと出てくるような印象です。
ソノマAVAシリーズ、その名前通り、そのAVAらしさを出しつつ、親しみやすさはクラインらしいところでいいワインだと思います。特に、ソノマを勉強したい人は、このあたりから味わってみるのがいいかもしれません。
試飲会にはクラインの他のワインも出ており、また会場となった「俺のフレンチ グランメゾン大手町」(余談ですがこのお店、開店当時は「俺のGrill&Bakery」という名前でときどきステーキ食べに来ていました)によるソノマAVAシリーズとマリアージュする料理も出ていました。
この中で特に面白かったのがカベルネ・ソーヴィニヨンに合わせる料理として提供されていた「マグロとカラスミのカルパッチョ アホ・ブランコソース」。カベルネに魚を合わせるというのはあまり一般的ではありませんが、このカベルネは酸とのバランスがよく、やや軽快な味わいなのでよく合っていました。
ワインの感想を簡単に記しておきます。
クラインの「セブン・ランチランズ」シリーズの左がシャルドネで、右がソーヴィニヨン・ブランです。このシリーズは希望小売価格が3000円台のライン。シャルドネはよくできています。ソノマAVAシリーズと比べてもさほど見劣りしません。こちらの方がやや樽感が強く出てくるので、果実の良さをピュアに味わうならソノマAVAシリーズ、樽の風味を求めるならこちらがいいと思います。ソーヴィニヨン・ブランはステンレスタンク発酵・熟成タイプのもの。グレープフルーツの風味が豊かで教科書的ないいソーヴィニヨン・ブラン。
次はクラインのエントリーラインとなる「ファームハウス」シリーズのホワイトとレッドです。実売2000円強。ホワイトはアルバリーニョ、ヴィオニエ、ソーヴィニヨン・ブラン、マスカット・カネリのブレンド。前述のようにクラインは元々ローヌ系品種を中心としてきました。そのイメージを一番よく残しているのがこのシリーズです。
白は南ローヌの白のようなやわらかな味わいが心地よく、癒し系。最近はこういうワインを飲むと幸せに感じます。さくらアワードでダブルゴールドを受賞しているとか。赤も果実味にちょっとスパイスが入った印象。
最後は「エンシェント・ヴァインズ ジンファンデル」と、セブン・ランチランズ・シリーズのピノ・ノワールとカベルネ・ソーヴィニヨンです。
エンシェント・ヴァインズ ジンファンデルは、クライン創業の地であるコントラ・コスタの古木のジンファンデル。エレガントなソノマAVAシリーズのジンファンデルとは好対照なこのワイン。ビッグで果実味があふれるような味わい。多くの人のイメージするジンファンデルのスタイルだと思います。
セブンランチ・ランズのピノ・ノワールはベリーの香り豊かなワイン。ピノ・ノワールが一番ソノマAVAシリーズとの違いが大きかったように思います。カベルネ・ソーヴィニヨンはバランスよく作られた印象。スタンダードなワインです。
以前はクラインというとシラーやジンファンデルが中心という印象でしたが、もちろんジンファンデルもあるものの、イメージを変えつつあることを感じた発表会でした。
クラインのワインは、国内では2000~3000円台の価格帯のものが中心でした。ソノマAVAシリーズは希望小売価格が税抜き6500~7000円と、やや高級な部類に入ります。なお、米国では単一畑のシリーズも販売しています。ソノマAVAシリーズは米国外では日本が初だとのことです。
今回来日したのは創設者のフレッド・クライン、ナンシー・クラインの夫妻。1982年の創設以来、家族経営をつづけています。ナンシーさんは初来日、フレッドさんは30年ぶりの来日。フレッドさんが以前来たときはココファームの仕事だったとのことで、クラインの代表として来るのは初めてです。
クラインはワイナリー名に「ファミリー」と入っているように、家族をとても大事にしています。ワイナリーの哲学も「家族」で、子供たちが畑を走り回っても危険がないように、設立当初から自社畑では除草剤や農薬をつかっていません。今でこそ「サスティナブル」は多くのワイナリーのキーワードになっていますが、約40年前からそれを実践してきたわけです。なお、二人には子供が7人おり、そのうち4人はクラインで働いています。家族経営としての持続性もあるわけですね。
クラインでは上の写真にあるように羊や山羊を放し飼いにしています。彼らが適度に草やブドウのはっぱを食べてくれます。雑草を食べてもらうための羊や山羊をレンタルするサービスもカリフォルニアにはありますが、クラインでは自分のところで飼っている羊や山羊を使っています。このほかブドウの皮などはたい肥に使用、猛禽類のための巣籠を設置するなど、自然と共存した農業を実践しています。
クラインのワインは、以前はABC(Anything but Chardonnay、Anything but Cabernet)といってシャルドネやカベルネといった人気品種を避けて、ローヌ系品種やジンファンデルを中心としていました。今もそれらは大事な品種ではありますが、近年はシャルドネやカベルネ・ソーヴィニヨン、ピノ・ノワールなども作っています。ソノマAVAシリーズもシャルドネ、ピノ・ノワール、ジンファンデル、カベルネ・ソーヴィニヨンという構成で、それぞれその品種を得意とするAVAのブドウで造られており、その地域の特性をワインのニックネームに使っています。このシリーズを始めたのも、ワイナリーを子供たちに継承していくことが年頭にあるようで、子供たちが生まれ育ったふるさとであるソノマを代表するようなブドウのワインを造り、新しいクラインの姿を伝えていきたいと語っていました。
シャルドネは「ハット・ストラップ」。畑はカーネロスの自社畑「J. Poppe」で、この畑が強風の通り道となっていることから、帽子を飛ばされないように紐を付けないといけないということで、そのニックネームが付きました。味わいは、まず柑橘などの果実味が口全体に広がります。豊かな酸で食欲もそそられるあじわい。白い花の香り、軽い樽の風味。アルコール分もたっぷりあり、濃密ですが上品なシャルドネです。
ピノ・ノワールも100%自社畑でソノマ・コーストのペタルマ・ギャップにある二つの畑のブドウを使っているようです。ニックネームは「フォグ・スウェプト」で、朝霧に覆われた地域を表現しています。チェリーやフランボワーズ、ザクロなど赤果実の風味。これも酸が高いです。エレガントですが、果実味がギュッと詰まったような濃密感や満足感のあるピノ・ノワールです。どうやら、この上品さと果実の豊かさによる濃密さの両立というのがこのシリーズの特徴になっているような気がしました。
ジンファンデルはドライ・クリーク・ヴァレーから。スクール・ハウス・クリーク・ヴィンヤードというレイク・ソノマの近くの畑のブドウを使っています。樹齢は40~100年。樹が1本ずつ自立した作りで、ブドウの枝を8方向に伸ばすという古来からの剪定方法を使っていることから「エイト・スパー」というニックネームが付きました。ラズベリーやクランベリーの柔らかな果実味で甘やかさと酸とのバランスがいいワイン。ジューシーな味わいはジンファンデルのお手本的です。
最後はカベルネ・ソーヴィニヨンで、アレキサンダー・ヴァレーのブドウを使っています。畑はRio Lagoという、アレキサンダー・ヴァレーの中では一番ロシアンリバー・ヴァレーに近いやや冷涼なベンチランドの畑です。メルローとプティ・シラー、アリカンテ・ブーシェがブレンドされていてプティ・シラー、とアリカンテ・ブーシェは自社畑のものです。アレキサンダー・ヴァレーのカベルネ・ソーヴィニヨンというと代表するのがシルヴァー・オークやジョーダンで、どちらも濃すぎず芳醇な果実味が特徴です。このワインも果実味の豊かさはそのイメージ通り。味わいの底の方にタンニンがあり、じっくり味わうとそれがだんだんと出てくるような印象です。
ソノマAVAシリーズ、その名前通り、そのAVAらしさを出しつつ、親しみやすさはクラインらしいところでいいワインだと思います。特に、ソノマを勉強したい人は、このあたりから味わってみるのがいいかもしれません。
試飲会にはクラインの他のワインも出ており、また会場となった「俺のフレンチ グランメゾン大手町」(余談ですがこのお店、開店当時は「俺のGrill&Bakery」という名前でときどきステーキ食べに来ていました)によるソノマAVAシリーズとマリアージュする料理も出ていました。
この中で特に面白かったのがカベルネ・ソーヴィニヨンに合わせる料理として提供されていた「マグロとカラスミのカルパッチョ アホ・ブランコソース」。カベルネに魚を合わせるというのはあまり一般的ではありませんが、このカベルネは酸とのバランスがよく、やや軽快な味わいなのでよく合っていました。
ワインの感想を簡単に記しておきます。
クラインの「セブン・ランチランズ」シリーズの左がシャルドネで、右がソーヴィニヨン・ブランです。このシリーズは希望小売価格が3000円台のライン。シャルドネはよくできています。ソノマAVAシリーズと比べてもさほど見劣りしません。こちらの方がやや樽感が強く出てくるので、果実の良さをピュアに味わうならソノマAVAシリーズ、樽の風味を求めるならこちらがいいと思います。ソーヴィニヨン・ブランはステンレスタンク発酵・熟成タイプのもの。グレープフルーツの風味が豊かで教科書的ないいソーヴィニヨン・ブラン。
次はクラインのエントリーラインとなる「ファームハウス」シリーズのホワイトとレッドです。実売2000円強。ホワイトはアルバリーニョ、ヴィオニエ、ソーヴィニヨン・ブラン、マスカット・カネリのブレンド。前述のようにクラインは元々ローヌ系品種を中心としてきました。そのイメージを一番よく残しているのがこのシリーズです。
白は南ローヌの白のようなやわらかな味わいが心地よく、癒し系。最近はこういうワインを飲むと幸せに感じます。さくらアワードでダブルゴールドを受賞しているとか。赤も果実味にちょっとスパイスが入った印象。
最後は「エンシェント・ヴァインズ ジンファンデル」と、セブン・ランチランズ・シリーズのピノ・ノワールとカベルネ・ソーヴィニヨンです。
エンシェント・ヴァインズ ジンファンデルは、クライン創業の地であるコントラ・コスタの古木のジンファンデル。エレガントなソノマAVAシリーズのジンファンデルとは好対照なこのワイン。ビッグで果実味があふれるような味わい。多くの人のイメージするジンファンデルのスタイルだと思います。
セブンランチ・ランズのピノ・ノワールはベリーの香り豊かなワイン。ピノ・ノワールが一番ソノマAVAシリーズとの違いが大きかったように思います。カベルネ・ソーヴィニヨンはバランスよく作られた印象。スタンダードなワインです。
以前はクラインというとシラーやジンファンデルが中心という印象でしたが、もちろんジンファンデルもあるものの、イメージを変えつつあることを感じた発表会でした。