ナパの山のテロワールを味わえるニュートンのカベルネ
ナパのスプリング・マウンテンにあるニュートン(Newton)のオンラインセミナーに参加しました。単一畑のカベルネ・ソーヴィニヨン3本が試飲用にいただけるという大変大ぶるまいのセミナーでした。
ニュートンの創設者はピーター・ニュートンとその妻スー・フア・ニュートン。ピーター・ニュートンは1964年にナパのカリストガにスターリング(Sterling)を創設。ワインメーカーにリック・フォーマン(Ric Forman)を迎え、人気ワイナリーとなりました。1977年にスターリングをコカ・コーラに売却し、ニュートンを設立。未開拓だったスプリング・マウンテンのパイオニアとなりました。
ニュートンでも当初はリック・フォーマンがワインメーカーとなりましたが、リックが自身のワイナリー「フォーマン」(現在もすばらしいワインを作り続けています)を立ち上げるためにワイナリーを離れたため、2代目のワインメーカーとして、ジョン・コングスガードを迎えました。1996年にはジョン・コングスガードも自身のワイナリーを設立してニュートンから独立、彼のコングスガードもトップクラスのシャルドネやカベルネ・ソーヴィニヨン、シラーなどを造り続けています。
3代目のワインメーカーとして就任したのはピーターの妻のスー・フア・ニュートン。この人はとんでもない才人で、かつてはファッションモデルであり、様々な学位を持ち、母国である中国語のほか、育った英語、さらにフランス語もできます。ニュートンのワイナリーや庭園のデザインも手がけました。ワインについては当初は何も知らなかったものの、2人の優秀なワインメーカーから吸収して自らワインメーカーができる知識を身に付けたようです。
2008年にピーター・ニュートンが亡くなり、ワイナリーは現在はモエヘネシーディアジオが保有しています。スー・フア・ニュートンも離れ、
ニュートンのワインの中で最初のヒット作となったのが「アンフィルタード」のワイン。通常、ワインはボトルに詰める前にフィルターを通して不純物を取ります。これによって、ボトルの中で再発酵したり、変質したりすることを防ぎます。その代わり、ワインの質も少し落ちてしまいます。アンフィルタードとは文字通り、このフィルターを使わないことで、それでもワインが劣化しないように醸造過程などで細心の注意が必要になります。1990年のアンフィルタード・カベルネ・ソーヴィニヨンはロバート・パーカーが95点を付けました。アンフィルタードのシャルドネもパーカー95点以上の常連であり、ホワイトハウスの晩餐会でも複数回使われています。アンフィルタード・シャルドネはニュートンの代表的なワインと言っていいでしょう。現在はこれがニュートンの唯一の白ワインとなっています。
前述のようにスプリング・マウンテンのパイオニアであるニュートンは現在持っている57ヘクタールのうち85%が山にあるという、山へのこだわりも見せています。スプリング・マウンテンのほかマウント・ヴィーダー、ヨントヴィルにも畑を持っています。
また近年はサスティナブルにも熱心に取り組んでおり、ナパ・グリーンの畑とワイナリーの両方の認証を得ています。
ニュートンのフラッグシップのワイン「パズル」は自社畑をいくつものブロックに分けてそこからパズルのように組み合わせて一番いいワインを作るというブレンドによるワイン。今回はそのベースとなるマウント・ヴィーダー、ヨントヴィル、スプリング・マウンテンのカベルネ・ソーヴィニヨンを試飲しました。ヴィンテージはいずれも2014年で7年の熟成を経ています。
最初に試飲したのはマウント・ヴィーダー。
ナパは谷から見て東側の山をヴァカ山脈、西側の山をマヤカマス山脈と呼んでいますが、ヴァカ山脈側は木が少なく地肌が直接見えているところが多いのに対し、マヤカマス側は濃い森となっています。土壌や日照などの違いによるものと思われますが、結果としてマヤカマス側がやや涼しくなっています。中でもマウント・ヴィーダーは一番海に近く気温も低めです。ここのワインはマヤカマスの森を思わせる杉のニュアンスをよく感じますが、このニュートンのマウント・ヴィーダーも杉っぽさが顕著に見られます。レッドプラムやブラックベリーなど赤黒系の果実味もやや冷涼感を感じます。強固なタンニンがあり、酸も高め。非常に長い余韻。いわゆる「山カベ」の典型的なスタイルで、熟成も少し進んでいい感じになってきています。非常においしい。
ヨントヴィルは唯一平地の畑。ちょっと閉じている感じもありましたが、カシスやブルーベリーなど果実味もより暖かさを感じます。こなれてスムーズなタンニン。コーヒーやタバコなどの熟成によるニュアンスも感じました。ナパの平地のワインとしては、エレガントなスタイルです。
最後はスプリング・マウンテン。マウント・ヴィーダー同様山のワインですが、杉感はそれほどなく、その代わりにミンティなニュアンスを感じました。タンニンはやや強いですが、酸はマウント・ヴィーダーよりは低く、よりフルボディで強固な印象。
それぞれ、その地域らしさも出て、熟成による風味も現れてきており、非常に素晴らしいワインでした。最近、フラッグシップのパズルも試飲する機会がありましたが、パズルが非常に完成度が高く、その代わりにテロワールは意識させないような造りになっているのに対し、単一畑のものはそれぞれの地域が感じられるという点でまた別の魅力を発揮しているように感じました。
なお、ニュートンは2020年のグラス・ファイヤーで大きな被害を受け、ワイナリーや庭園、さらには畑までもほとんど焼けてしまいました。現在はそこからの復興に向けて努力しているとのことです。
ニュートンの創設者はピーター・ニュートンとその妻スー・フア・ニュートン。ピーター・ニュートンは1964年にナパのカリストガにスターリング(Sterling)を創設。ワインメーカーにリック・フォーマン(Ric Forman)を迎え、人気ワイナリーとなりました。1977年にスターリングをコカ・コーラに売却し、ニュートンを設立。未開拓だったスプリング・マウンテンのパイオニアとなりました。
ニュートンでも当初はリック・フォーマンがワインメーカーとなりましたが、リックが自身のワイナリー「フォーマン」(現在もすばらしいワインを作り続けています)を立ち上げるためにワイナリーを離れたため、2代目のワインメーカーとして、ジョン・コングスガードを迎えました。1996年にはジョン・コングスガードも自身のワイナリーを設立してニュートンから独立、彼のコングスガードもトップクラスのシャルドネやカベルネ・ソーヴィニヨン、シラーなどを造り続けています。
3代目のワインメーカーとして就任したのはピーターの妻のスー・フア・ニュートン。この人はとんでもない才人で、かつてはファッションモデルであり、様々な学位を持ち、母国である中国語のほか、育った英語、さらにフランス語もできます。ニュートンのワイナリーや庭園のデザインも手がけました。ワインについては当初は何も知らなかったものの、2人の優秀なワインメーカーから吸収して自らワインメーカーができる知識を身に付けたようです。
2008年にピーター・ニュートンが亡くなり、ワイナリーは現在はモエヘネシーディアジオが保有しています。スー・フア・ニュートンも離れ、
ニュートンのワインの中で最初のヒット作となったのが「アンフィルタード」のワイン。通常、ワインはボトルに詰める前にフィルターを通して不純物を取ります。これによって、ボトルの中で再発酵したり、変質したりすることを防ぎます。その代わり、ワインの質も少し落ちてしまいます。アンフィルタードとは文字通り、このフィルターを使わないことで、それでもワインが劣化しないように醸造過程などで細心の注意が必要になります。1990年のアンフィルタード・カベルネ・ソーヴィニヨンはロバート・パーカーが95点を付けました。アンフィルタードのシャルドネもパーカー95点以上の常連であり、ホワイトハウスの晩餐会でも複数回使われています。アンフィルタード・シャルドネはニュートンの代表的なワインと言っていいでしょう。現在はこれがニュートンの唯一の白ワインとなっています。
前述のようにスプリング・マウンテンのパイオニアであるニュートンは現在持っている57ヘクタールのうち85%が山にあるという、山へのこだわりも見せています。スプリング・マウンテンのほかマウント・ヴィーダー、ヨントヴィルにも畑を持っています。
また近年はサスティナブルにも熱心に取り組んでおり、ナパ・グリーンの畑とワイナリーの両方の認証を得ています。
ニュートンのフラッグシップのワイン「パズル」は自社畑をいくつものブロックに分けてそこからパズルのように組み合わせて一番いいワインを作るというブレンドによるワイン。今回はそのベースとなるマウント・ヴィーダー、ヨントヴィル、スプリング・マウンテンのカベルネ・ソーヴィニヨンを試飲しました。ヴィンテージはいずれも2014年で7年の熟成を経ています。
最初に試飲したのはマウント・ヴィーダー。
ナパは谷から見て東側の山をヴァカ山脈、西側の山をマヤカマス山脈と呼んでいますが、ヴァカ山脈側は木が少なく地肌が直接見えているところが多いのに対し、マヤカマス側は濃い森となっています。土壌や日照などの違いによるものと思われますが、結果としてマヤカマス側がやや涼しくなっています。中でもマウント・ヴィーダーは一番海に近く気温も低めです。ここのワインはマヤカマスの森を思わせる杉のニュアンスをよく感じますが、このニュートンのマウント・ヴィーダーも杉っぽさが顕著に見られます。レッドプラムやブラックベリーなど赤黒系の果実味もやや冷涼感を感じます。強固なタンニンがあり、酸も高め。非常に長い余韻。いわゆる「山カベ」の典型的なスタイルで、熟成も少し進んでいい感じになってきています。非常においしい。
ヨントヴィルは唯一平地の畑。ちょっと閉じている感じもありましたが、カシスやブルーベリーなど果実味もより暖かさを感じます。こなれてスムーズなタンニン。コーヒーやタバコなどの熟成によるニュアンスも感じました。ナパの平地のワインとしては、エレガントなスタイルです。
最後はスプリング・マウンテン。マウント・ヴィーダー同様山のワインですが、杉感はそれほどなく、その代わりにミンティなニュアンスを感じました。タンニンはやや強いですが、酸はマウント・ヴィーダーよりは低く、よりフルボディで強固な印象。
それぞれ、その地域らしさも出て、熟成による風味も現れてきており、非常に素晴らしいワインでした。最近、フラッグシップのパズルも試飲する機会がありましたが、パズルが非常に完成度が高く、その代わりにテロワールは意識させないような造りになっているのに対し、単一畑のものはそれぞれの地域が感じられるという点でまた別の魅力を発揮しているように感じました。
なお、ニュートンは2020年のグラス・ファイヤーで大きな被害を受け、ワイナリーや庭園、さらには畑までもほとんど焼けてしまいました。現在はそこからの復興に向けて努力しているとのことです。