
カリフォルニアの2025年のワイン用ブドウの収穫は260万トン。2024年の284万トンと比較して約9%減少しました。少なくとも過去20年では最少となっています。減少は予想通りでしたが、多くの業界関係者が心配していたほどではありませんでした。
260万トンという数字は予想より多かったものの、2024年と比較すると20万トンの減少です。5年間の平均収穫量と比較すると7200万ケースの差に相当し、2025年の生産量は2024年より約2000万ケース少ないことになります。 おそらく、生産量は販売量を下回ることになり、在庫調整が進むと思われます。
ナパでもブドウが収穫されずに残されたり、売れなかったり、持ち去られたりしたという報告がありましたが、ナパのカベルネ・ソーヴィニヨンの収穫量は増えていました。新しく生産性の高い農地が新たに稼働を開始したことと、1エーカー当たりの収穫量が増加したことに起因するようです。
ソーヴィニヨン・ブランの生産量は増加しています。これは需要を満たすために新たに作付け面積が拡大されたためでしょう。
「品種全体を見ると、州全体で増加したのはピノ・グリとソーヴィニヨン・ブランの2品種のようです。その他ほとんどは横ばいか減少しています。これはおそらく、2026年にブドウの需要が大きく回復するのは難しいことを意味し、何らかの意味のある市場改善が期待できるのは2027年になりそうです」とシアッティ社のパートナーであるグレン・プロクター氏は述べています。
プロクター氏はまた、主要品種の中でジンファンデルの生産量が前年比で最も減少しており、約24~25%減だったと指摘しています。 赤ワイン用品種の方が白ワイン用品種よりも減少率が高くなっています。
ナパ郡で生産されたブドウは、1トン当たり6767.53ドルと最も高い平均価格を記録しましたが、2024年からは2.6%下落しています。ソノマ郡とマリン郡は、1トン当たり2761.37ドルと2番目に高い平均価格でしたが、2024年比で5.7%の下落でした。
2025年産シャルドネの平均価格は1012.01ドルで、2024年産から4.2%下落し、カベルネ・ソーヴィニヨンの平均価格は2127.33ドルで、2024年産から2.7%下がりました。
なお、このレポートの平均価格には、売れ残ったブドウや、後日販売するためにバルクワインに加工されたブドウは含まれていないので、実質的にはもっと低くなっていると思われます。
ナパのロンバウアーといえば、「樽の効いたシャルドネ」の代表格としてあまりにも有名なワイナリーです。「古き良き」という言葉が似あうクラシックで果実味を生かしたスタイルを堅実に守り続けています。今回、2008年からヘッド・ワインメーカーを務めているリッチー・アレン氏が来日し、テイスティング・セミナーが開催されました。今回のセミナーがユニークなのは、料理とのペアリングもあることで、しかもそのメニューは田崎真也ソムリエ協会前会長が考えたもの。セミナーでも田崎さんがメニューを選んだ理由やワインのテイスティングを直々に語ってくれるという貴重なものでした。
ちなみに、ロンバウアーの創設者コーナー・ロンバウアーの大叔母は『Joy of Cooking(料理の喜び)』というアメリカの家庭料理の有名本の著者であるイルマ・ロンバウアー。実はロンバウアーにとって料理とのペアリングは常に重要なテーマになっているのです。
テイスティングの最初のワインはソーヴィニヨン・ブラン2024です。ソノマのブドウを85%、ナパを15%使っています。夜間に手摘み収穫して、房ごとプレス。清澄度の高い果汁を使います。発酵・醸造にはフレンチオークの中古の樽10%、コンクリートが1~5%、残りがステンレスタンクを使います。10~11℃という低温で長い時間かけて発酵し、果実のアロマを残します。
田崎真也氏は、このワインから「かぼす」を思わせる和のグリーンな印象と、樽由来のイーストが混じり合った「ビスケット」の芳香を嗅ぎ取り、次のように分析しています。 「ニュージーランド産よりもボルドーの品格を備えつつ、よりフルーツの印象が高い。極めてバランスの良い酸が、直線的な力強さと果実の甘みを支えている」
リッチー・アレン氏は「これは、一口飲むだけで眠っていた味覚が鮮やかに目覚めるようなワインなのです」 と語っています。
私の印象は、果実のふくよかさがあり柔らかな味わい。ライムやグアバ、アプリコット。青っぽさはありません。テクスチャーがしっかりしています。一方で酸が下支えしていてしっかりバランスを取っています。カリフォルニアのソーヴィニヨン・ブランの中でも果実味が充実していることではかなり上になると思います。
合わせる料理は「富士の介のタルタル(大葉・柚子風味)」。富士の介はキングサーモンとニジマスを交配させて作った山梨の品種です。
ややボディのある富士の介の味わいは、果実味豊かなソーヴィニヨン・ブランと合っています。田崎さんによると「料理がちょっとリッチ感に負けているので、クリームチーズを切ったものを少し加えるとより近づいたのではないか。松の実や煎った白ごまを合わせると、樽の印象により近づくかもしれない」とのことでした。なお、田崎さんはテクニカル情報からメニューを考えたので、実際に試飲するのはこのときが初めてでした。
2番目のワインはシャルドネ2024です。冒頭に書いたようにロンバウアーの「看板」商品。カーネロスの自社畑と長期契約の畑からのブドウを使っています。
サンパブロ湾からの冷気が夜間の気温を28℃から10℃まで急降下させるカーネロス。ブドウが完璧なフレーバーと酸の均衡に達する「ピッキング・ウィンドウ(最適な収穫時期)」は極めて短く、わずか10日ほど。同社は160もの区画を個別に管理し、リッチー氏自らがブドウを味わい、収穫のタイミングを決定します。
収穫後は全房のままプレスし、果汁は1日置いてから樽に入れて発酵を始めます。発酵は6~8週間とゆっくり進みます。1週間から10日に1回バトナージュをします。MLFもゆっくり進み、9か月後にブレンドします。
ユニークなのは樽の構成で、アメリカンオークとフレンチオークの樽を使っています(新樽37%)。シャルドネでアメリカンオークを使うところは高級ワインでは珍しいと思います。ちなみに、赤ワインではカベルネ・ソーヴィニョンはフレンチオークのみ、ジンファンデルではアメリカンオークとフレンチオークを使っています。
リッチー・アレンさんにアメリカンオークを使う理由を聞いたところ、樽香というよりもテクスチャーが大事なようです。シャルドネにはミズーリ州のごく一部だけで取れる特別なアメリカンオークを使っているとのこと。ジンファンデルのアメリカンオークの樽とは産地が違います。このシャルドネのアメリカンオークの樽は、アメリカンオークによくあるとげとげしさが出ず、なめらかなテクスチャーを生み出すのだそうです。
味わいは熟した黄桃やブリオッシュ、さらにはバニラの薫香が重なります。わずかにバター感もあります。田崎さんは「酸とのバランスが完成度を高めている。黄色の熟したフルーツ、MLFによるカスタードクリームの印象にフルーツがスイーツのように
木樽のローストも絶妙でティラミスのような印象。リッチ感が持続した後で、最後にフレッシュ感。複雑性が続く」と表現しました。
合わせた料理は「真鯛の西京味噌漬け焼き」。
田崎さんによると、MLFしているワインに合わせて、同じく乳酸発酵している味噌を使ったとのこと。テクスチャーにクリーム感を与えています。また付け合わせのほうれん草はムニエルに使う焦がしバター(ブール・ノワゼット)をかけて炒めています。魚はあっさりとした鯛よりも、のどぐろの方が良かったかもしれないとのことでした。
確かに、ワインにボリューム感があるので、鯛はちょっと負けている感じもありました。ほうれん草はバターの風味と相まっておいしくワインとも相性が良かったです。
次のワインはナパヴァレーのカベルネ・ソーヴィニヨン2021です。セント・ヘレナ、カリストガ、スタッグス・リープ・ディストリクト、アトラスピークなど、ナパ各地のブドウをブレンドしています。
光学的選果で完熟した実だけを選んだあと、低温浸漬で色と風味を出し、樽とタンクを組み合わせて発酵させます。発酵後はバスケットプレスで優しくプレスして熟成に回します。
カシスやバニラ、甘草、スパイス、ローズマリー。リッチで強いワイン。クリーミーなテクスチャーで、タンニンが非常にこなれています。
田崎さんは「非常にピュアな果実の印象。リッチだけどタンニンが滑らかで、よくシルキーと言いますがそれを超えてビロード的な滑らかさです。ブラックチェリー、カシス、スミレ、クローブ、ナツメグ、葉巻のボックス、ローズマリーなど灌木の樹皮が感じられます」とコメントしています。
合わせた料理は「牛ロース肉の照り焼き 山椒風味」。牛ロースは一口では食べられないほど、かなり大きめのカットで、照り焼き風味のソースを上からかけています。日本酒、酒、みりん1対1に砂糖を加える一般的な照り焼きのタレだと甘さが強く、ワインの丸みやリッチ感が消されて苦みや酸味がネガティブに広がってしまいます。そこで今回は照り焼きのタレに赤ワインを煮詰めたものを加えて酸をそれに赤ワインを煮詰めたものを加えて、感覚的な甘みを下げています。さらにカベルネ・ソーヴィニョンのスパイス感や樹脂の印象に合わせて、日本の山椒でフレーバーを付けています。
先日、ごぼうのリゾットに山椒をかけたものとピノ・ノワールを合わせたのがとても合っていたのですが、カベルネと山椒も合いますね。ワインのボリューム感と肉のボリューム感もよく合っていました。間違いのない組み合わせです。
最後のワインはジンファンデル。シエラフットヒルズのブドウを85%使っており、3分の1は1890年代から続く自根・無灌漑の古木です。リッチー・アレンさんはオーストラリアの出身で、シラーズの経験があったことから、最初はシラーズのように「ヘビーハンデッド(重厚な抽出)」で作ればいいのかと思いこんだそうです。シラーズはアグレッシブに扱っても大丈夫なブドウなのですが、果皮が薄くデリケートなジンファンデルには合わず、今は抽出を穏やかに管理する「ライトタッチ」な醸造を徹底しています。新樽比率をわずか10%に抑え、アメリカンオーク中心の古いオーク樽を中心に熟成させています。
実はアルコール度数は15.9%もあります。そのため、やはり全体的なボリューム感はかなりあります。甘やかな香り、甘草、プラム、ブルーベリーのジャム、バニラの風味。古木からの酸味が高いレベルで全体のバランスを取ります。クラシックなジンファンデルのスタイルをきれいに仕上げた印象です。
田崎さんは「酸がしっかりあってバランス良く成熟している。黒系果実と赤系果実の両方を感じられる。ブラックペッパーはなく、ベルガモットを含むアイスティーのような香り。アメリカンオークのココナッツの香りはリオハのワインやシラーズに共通する。アメリカンオークが合う品種は多くないがジンファンデルはまさにその一つ。樽から来るビターチョコや苦みにカカオのフレーバー。ポテンシャルの高いジンファンデルに沿ったスタイルだと思います」とコメントしています。
合わせた料理は「ウナギのマトロート 八丁味噌風味」。マトロートというのは魚を赤ワインで煮込んだフランスの伝統的料理です。今回は八丁味噌を使うことで和風にしたてています。
シャルドネに合わせた白みそは白ワインに合いますが、赤ワインにはうまみが強く、苦みも感じる八丁味噌が合うとのこと。ワインの特徴を聞いて、当初考えていたよりも全体に味付けを強くしたとのことでした。
リッチー・アレンさん、うなぎはほとんど食べたことがなかったそうですが、今回の来日では何回かうなぎを食べて、赤ワインに合うことに驚いたそうです。とても感動したので、カリフォルニアでも食べたいと思っているそうですが、まずはこのように調理するシェフを探さないとと言っていました。
まあ、牛肉に引き続き、これも間違いのない組み合わせですね。大変おいしく、ワインにも合っていました。
ロンバウアー、クラシックなイメージを裏切らない、ナパらしい果実味の豊かさを持ったワインを造っています。一方で、オプティカル・ソーターの導入や25種類もの樽を使い分けること、優しい抽出のためのバスケットプレスなど、醸造面は進化していますし、栽培でもNapa GreenやFish Friendly Farmingといったサスティナブル認証を取得するなど、改善・改良を続けています。コルクは全品TCAのチェックをしています。伝統に甘んじず、ただ出来上がったワインはイメージを裏切らない、ナパの中でも安心して飲めるワインの一つです。
こういったアメリカンスタイルのワインは和食には合わないと短絡的に考えがちですが、調理法を少し工夫するだけで、見事なペアリングになる。田崎さんのメニューからもそういった学びがありました。
ナパのクームズヴィルにあるワイナリー「パルマッツ(Palmaz)」。以前ワインを提供いただいたときに、調べて紹介しましたが、先日セミナーで改めて話を聞いたので、パルマッツの「すごいところ5つ」を紹介したいと思います。
以前の記事:ナパの古豪、医学界のレジェンドと注目新興産地で花開く
パルマッツのここがすごい
①歴史がすごい
②創設者がすごい
③畑がすごい
④重力移動の徹底ぶりがすごい
⑤ワイナリーの技術がすごい
①歴史がすごい
クームズヴィルは2011年に策定されたナパでは新しいAVAですが、実は古い歴史を持っています。パルマッツのワイナリーは1877年にHenry Hagenという人がオープンしたところにあります。実はナパでもとても古いワイナリーの歴史を背負っているのです。

ワイナリーは禁酒法時代になくなってしまいましたが、1997年にパルマッツ夫妻が屋敷を購入したことで、現在のパルマッツが始まります。屋敷の中には実はワインセラーがあり、古いワインが保管されていました。

パルマッツのワインのラベルには赤い染みが付いていますが、これはセラーで見つけたワインのラベルに敬意を表してのもので、一つのワインについて6パターンの染みがあるそうです。
②創設者がすごい

創設者のジュリオ・パルマッツ(写真の右から3人目)は心臓外科医としてとても有名な方です。彼が発明したバルーン拡張型ステントは「前世紀に世界を変えた10の特許」に選ばれているほどで、彼の成果物はワシントンD.C.のスミソニアン博物館にも収録されています。
写真はパルマッツの家族で、現在率いるのは右端のクリスチャン・パルマッツです。
③畑がすごい

パルマッツの畑は三つあります。左が最下部の畑で標高400フィート、右の下の方が標高1200フィート、右上が標高1400フィートです。上の畑はクームズヴィルの中で最も標高が高い畑です。実はそこから少し東に行くとKenzo Estateがあります。ほかのクームズヴィルのワイナリーとも一線を画す畑の構成はかなりすごいです。
面白いのはカベルネ・ソーヴィニョンは下の畑と一番上の畑には植えられていますが、標高1200フィートの畑にはないことです。実はそこにもカベルネが植えられていたのですが、冷涼でうまく育たなかったのでシャルドネなどに植え替えられました。
ただ標高1400フィートの畑にもカベルネ・ソーヴィニョンはあります。標高は60メートルくらいしか変わらないのになぜでしょうか。実は、1200フィートの畑は霧に隠れることが多く、冷涼なのですが、1400フィートのところには霧がかからず、暖かくなるのです。
④重力移動の徹底ぶりがすごい


高級ワインのワイナリーに行くと「うちは重力を使っています」などと言われることがあります。タンクから樽に移したり、樽から樽に移すなど、液体を移動させるときに、ポンプを使うのではなく、重力の力を使って(要は上から下に落とす形で)ワインを移動させます。パルマッツはこれを徹底しており、ボトル詰めまで最初から最後まで重力だけを使ってワインを移動させます。彼らは「重力で完成させた」と称していますが、部分的に重力を使っても、これほど徹底的に行うところはないと思います。
重力を使うことで、ワインを優しく扱っているのですが、ポンプを使うのとの違いはタンニンに現れてきます。ポンプを使うと、タンニンの分子が壊れてしまい、とげとげしさが出てきます。重力で優しく扱うことで、シルキーな舌触りが生まれます。
⑤ワイナリーの技術がすごい

パルマッツのワイナリー(醸造設備)は斜面に沿って地下に作られています。発酵用のタンクが並ぶところのドーム型の天井には様々なデータが一面に映し出されています。例えば、タンクの中の温度を取ってみても、1、2カ所でなく何カ所も温度を測ってムラが出ないようにしています。
これらのシステムは現社長のクリスチャンが中心になって手掛けているということで、他のワイナリーの追随を許さないレベルになっています。
さて、番号は振っていませんが、最後にもちろんワインもすごいです。カベルネ・ソーヴィニョンの造りはどちらかというとクラシック。今回のセミナーでは2013年のカベルネ・ソーヴィニョンを試飲しましたが、絶品でした。
どうでしょうか、パルマッツの魅力は伝わったでしょうか。
ナパの中でもユニークさではかなり上に行くワイナリーだと思います。
以前の記事:ナパの古豪、医学界のレジェンドと注目新興産地で花開く
パルマッツのここがすごい
①歴史がすごい
②創設者がすごい
③畑がすごい
④重力移動の徹底ぶりがすごい
⑤ワイナリーの技術がすごい
①歴史がすごい
クームズヴィルは2011年に策定されたナパでは新しいAVAですが、実は古い歴史を持っています。パルマッツのワイナリーは1877年にHenry Hagenという人がオープンしたところにあります。実はナパでもとても古いワイナリーの歴史を背負っているのです。

ワイナリーは禁酒法時代になくなってしまいましたが、1997年にパルマッツ夫妻が屋敷を購入したことで、現在のパルマッツが始まります。屋敷の中には実はワインセラーがあり、古いワインが保管されていました。

パルマッツのワインのラベルには赤い染みが付いていますが、これはセラーで見つけたワインのラベルに敬意を表してのもので、一つのワインについて6パターンの染みがあるそうです。
②創設者がすごい

創設者のジュリオ・パルマッツ(写真の右から3人目)は心臓外科医としてとても有名な方です。彼が発明したバルーン拡張型ステントは「前世紀に世界を変えた10の特許」に選ばれているほどで、彼の成果物はワシントンD.C.のスミソニアン博物館にも収録されています。
写真はパルマッツの家族で、現在率いるのは右端のクリスチャン・パルマッツです。
③畑がすごい

パルマッツの畑は三つあります。左が最下部の畑で標高400フィート、右の下の方が標高1200フィート、右上が標高1400フィートです。上の畑はクームズヴィルの中で最も標高が高い畑です。実はそこから少し東に行くとKenzo Estateがあります。ほかのクームズヴィルのワイナリーとも一線を画す畑の構成はかなりすごいです。
面白いのはカベルネ・ソーヴィニョンは下の畑と一番上の畑には植えられていますが、標高1200フィートの畑にはないことです。実はそこにもカベルネが植えられていたのですが、冷涼でうまく育たなかったのでシャルドネなどに植え替えられました。
ただ標高1400フィートの畑にもカベルネ・ソーヴィニョンはあります。標高は60メートルくらいしか変わらないのになぜでしょうか。実は、1200フィートの畑は霧に隠れることが多く、冷涼なのですが、1400フィートのところには霧がかからず、暖かくなるのです。
④重力移動の徹底ぶりがすごい


高級ワインのワイナリーに行くと「うちは重力を使っています」などと言われることがあります。タンクから樽に移したり、樽から樽に移すなど、液体を移動させるときに、ポンプを使うのではなく、重力の力を使って(要は上から下に落とす形で)ワインを移動させます。パルマッツはこれを徹底しており、ボトル詰めまで最初から最後まで重力だけを使ってワインを移動させます。彼らは「重力で完成させた」と称していますが、部分的に重力を使っても、これほど徹底的に行うところはないと思います。
重力を使うことで、ワインを優しく扱っているのですが、ポンプを使うのとの違いはタンニンに現れてきます。ポンプを使うと、タンニンの分子が壊れてしまい、とげとげしさが出てきます。重力で優しく扱うことで、シルキーな舌触りが生まれます。
⑤ワイナリーの技術がすごい

パルマッツのワイナリー(醸造設備)は斜面に沿って地下に作られています。発酵用のタンクが並ぶところのドーム型の天井には様々なデータが一面に映し出されています。例えば、タンクの中の温度を取ってみても、1、2カ所でなく何カ所も温度を測ってムラが出ないようにしています。
これらのシステムは現社長のクリスチャンが中心になって手掛けているということで、他のワイナリーの追随を許さないレベルになっています。
さて、番号は振っていませんが、最後にもちろんワインもすごいです。カベルネ・ソーヴィニョンの造りはどちらかというとクラシック。今回のセミナーでは2013年のカベルネ・ソーヴィニョンを試飲しましたが、絶品でした。
どうでしょうか、パルマッツの魅力は伝わったでしょうか。
ナパの中でもユニークさではかなり上に行くワイナリーだと思います。

ガロが、銘醸畑モンテロッソから、エステートのワインを造ることを明らかにしました。モンテロッソはソノマのムーンマウンテンAVAにある畑。標高300mほどの高台で、その名の通り鉄分の多い赤い土が特徴となります。
19世紀に植えられたジンファンデルなど多品種のフィールドブレンドのブロックや1886年に植えられた北半球最古のセミヨン、1940年に植えられたカベルネ・ソーヴィニヨンなど、様々なブロックがあります。
ナパのルイ・M・マルティニが長年畑のオーナーでしたが、ルイ・M・マルティニがガロに買収されたため、ガロがオーナーになっていました。これまでは、マルティニのほか、ベッドロックなどがモンテロッソのジンファンデルなどを作ってきています。これらのワインも引き続き作られていきます。
新ブランドのワインは4種類。1886年植樹のセミヨンから作る「Monte Rosso Estate」、1900年に植樹されたジンファンデル、アリカンテ・ブーシュ、グランノワール、カリニャンのフィールドブレンド「Monte Rosso Estate The Essence」、最良のレッドブレンドを作る「Monte Rosso Estate The Impression」(2023年はカベルネ・フラン、カベルネ・ソーヴィニヨン、マルベックのブレンド)、1940年のカベルネ・ソーヴィニヨンの古いブロックから作る「Monte Rosso Estate Los Nin~o」となっています。

2月22日に、ナパのセントヘレナでプルミエ・ナパヴァレー・オークションが開催されました。30回目となる記念の回でしたが、昨今の不況の影響を受け総落札額は300万ドルと、昨年の330万ドルを下回りました。
例年発表されるトップロットの価格なども、今年は正式なプレスリリースには含まれていません。ただ、Wine-Searcherの記事には独自の分析した結果が出ていました。
Downturn Hits Napa's Top-End Wines | Wine-Searcher News & Opinion
興味深いのは、落札単価が最も高かった品種がカベルネ・フランだったこと。ナパで一番高額で取引されているのがカベルネ・フランなので、当然の結果ともいえますし、カベルネ・ソーヴィニヨンと比べるとロット数も全然違うので、カベルネ・フランが抜いたというのは語弊がありますが、時代は少し軽いスタイルのものを求めているというののは反映されているように思います。