パルマッツ(Palmaz)・ヴィンヤードはナパのクームズヴィル(Coombsville)にあるワイナリー。クームズヴィルは2011年にナパのサブAVAとしては16番目に認定された比較的新しいAVA。ナパの南東の端にありサンパブロ湾にも近いことから、ナパの中ではカーネロスに次いで涼しいAVAとなっています。比較的涼しいところとはいえ、素晴らしいカベルネ・ソーヴィニヨンも生み出しており、例えばポール・ホブズやファヴィアといった超一流のワイナリーもここに畑を持っています。温暖化やワインのエレガント志向といったこともあいまって、注目が日増しに高まっている地域でもあります。

そんな新興地域なので、パルマッツも新しいワイナリーだろうと思いがちですが、実はそのルーツは19世紀1868年にまで遡ります。ナパで最初の商用ワイナリーが作られた1861年からわずか7年後のことです。ヘンリー・ヘーガンという人がシダー・ノール(Cedar Knoll)という畑を作ったのが今に至ります。

そんな昔にクームズヴィルにワイナリーがあったというのも驚きですが、残念ながら禁酒法の時代にワイン造りはやめてしまい、その土地を買ったのがアルゼンチン出身の医師ジュリオ・パルマッツでした。実はこの人、医学界では非常に有名な偉人です。パルマッツ・ステントという血管を広げる器材は広く使われており、日本心臓財団の50周年記念誌には「Palmaz 先生と Schatz 先生が開発した Palmaz-Schatz ステントは非常に効果的で、世界へ普及してゆきました」(原文ママ)と記されています。そのステントのシェアは一時90%に達したとされ、「IPインターナショナル誌」による「世界を変えた10個の特許」のリストに2回載ったとのこと。

パルマッツはシダー・ノール・ヴィンヤードを復活させ、丘にケーブを作って新しいワイナリーを築いています。週2回にわたってワイナリーの上空から取った航空写真で畑の状態を分析して灌漑する場所を決めるといった最新のテクノロジーも利用して古豪の再生を図っています。

前置きが長くなりましたが、そのパルマッツのワイン2つを試飲しました。ワインはインポーターの都光から提供を受けています。



左のパルマッツ・ヴィンヤード カベルネ・ソーヴィニヨンがフラッグシップ、右のシダー・ノール(インポーターによる表記はセダール・クノール)


まずはセカンドから試飲しました。ヴィンテージは2017。この年は10月に大きな山火事がありましたが、クームズヴィルのあたりまでは影響はあまりなかったものと思います。
非常に色が濃く、ちょっと濁ったような感じもあります。香りも非常に強く、グラスから20~30cm離れていてもムンムンと香ってくるほど。味わいはカシスやブラックベリー、ブルーベリーといった、青黒系果実の風味、チョコレートや鉛筆の芯、畑名をほうふつとさせる杉っぽさ(Cedarは杉のこと)もあります。ドライなワインですが甘やかな印象もあり、非常に魅力的。フルボディで余韻も非常に長いワイン。これで、セカンドワイン?とちょっと驚くほどのクオリティです。


一方、ファーストのパルマッツですが、こちらもヴィンテージは2017です。93.19%カベルネ・ソーヴィニヨン、4.39%カベルネ・フラン、1.63%マルベック、0.79%プティ・ヴェルドという構成。
こちらも非常に香りは強いのですが、セカンドと比べると奥ゆかしく内に秘めた感じがあります。特徴はシルキーなテクスチャ。タンニンはセカンドよりも強く、シナモンやクローヴ、ミントのような風味も目立ちます。チョコやコーヒーの風味もあります。一方、果実味はそれほど強くはなく、セカンドの甘やかさではなく、しなやかさを感じるワインです。第一印象はむしろセカンドの方が強いかもしれませんが、こちらはじっくり付き合ううちに良さがわかってくるようなワインです。

医学界のレジェンドが造るワインですから、医療関係の方への贈り物などにもいいかもしれません。

Cave de L Naotakaです。


同じくCave de L Naotakaです。


Wassy'sです。