カリフォルニアワインのインポーターとして有名な中川ワイン販売の創設者である中川一三氏が,ダイナース・クラブ・カードの会員誌「Signiture」で連載していたエッセイを中心にまとめた本です。

野菜アレルギーで野菜を全く食べられなかったという中川氏が遊学先で言語学の権威である駒井明氏から受けたアドバイスが「それならば,ワインをお飲みなさい」とのこと。それをきっかけにワインを飲み始めたというのがとてもユニークです。さらに駒井氏の教え子からは「ワインを知るには,ひとつの銘柄のワインを最低十ケースは飲むことだ」と教わり,一つのワインを最低10ケース買っていったというからすごいものです。それだけ財力があったということでもあるのでしょうけど。

この氏をして「私が最も好きで,なおかつ世界的にも最高と評価できるワイン」は何かというと「カリフォルニア産のピノ・ノワールである」というのだから,カリフォルニアワイン・マニアでない人が読む本としてはびっくりするようなことが書いてあります。

ただ,登場するワインは,古酒など一部のストックものを除けば,やはり中川が輸入しているものばかりであり,ピノの話は割と前半で収束してしまうのは,物書きのプロでないだけにしょうがないところでしょう。

といったことを割り引かなければいけないとしても,でてくるワインはかなりマニアック。WesMarやNarsai,Georgeなどがフルページのカラーででてくる本なんてほかには考えられません。カリフォルニアワイン・ファンならば持っておくべきでしょう。

なお,後半に収録されている著者へのインタビューでは,著者が開催するワイン会に来た有名人の話が,こんなに書いてしまっていいのだろうかと心配になるくらい載っています。これも必見かも。

また,このインタビューの最後には「飲みたくても飲めない。買いたくても買えない。ここにカリフォルニア・ワインの大きな問題があります。これを何とか変えていく努力を,私は微力だけれども試みていきたいと思います」とあります。その努力,期待しています。まずはインポーターの仕切りの価格を下げていただくのが…