先日の記事は,2ちゃんねるその他で引用されたため,結構いろんな方が読まれているようです。今から見るとやや言葉足らずだったかなと思う部分もあるので,補足しておきます。

まず,最初の部分については「試飲」というところが引っかかります。ワイン・トレインは食事やワインの給仕はありますが,ワインを「試飲」するところではなく,そういった設備も持っていないはずです。

次に,試飲というのが言葉の綾だとしても,ここのワインの品揃えはほかのレストランと比べて特に優れているわけではありません。それはリストを見ていただければ分かると思います。したがってナパのさまざまなワインを味わうためにワイン・トレインに乗るというのはちょっとおかしいわけです。

さらに,今回登場したワインはリストにありません。この漫画を見て,「Etudeのピノが飲めるんだ」と思って乗車する人がもしいたら肩透かしをくらってしまうでしょう。

二つ目の引用のところについてもう少し説明します。オークヴィルを通り過ぎて次にヨントヴィル,それからナパというのは北から南に走っていることになります。ワイン・トレインは南のナパから北はセント・ヘレナまで行って折り返して戻ってきます。最初のカーネロスというのはナパをある程度含んでいますが,そこから北に上がって行っていると思って読んでいるので,「いつの間にか折り返しているんだろう」とかなり戸惑ってしまったことが一つあります。

次に,スタッグス・リープの位置関係の問題です。記事に書いたようにスタッグス・リープはナパ・ヴァレーの谷の東側です。「ヨントヴィルとナパを越えればスタッグス・リープがある」というのは,ボルドーでたとえるならば「グラーブからメドックを過ぎるとポムロールがある」と言うようなものです。また,南北の位置関係で見てもスタッグス・リープはナパほど南ではありません。ヨントヴィルの東にあたります。なお,さらに細かいことを言うとこのあたりはAVAの名前であるスタッグス・リープと,AVAの名前であり市の名前でもあるオークヴィルやヨントヴィル,AVAの名前ではなく,市の名前であるナパと,名前のレベルが混在しているのもちょっと問題です。

最後に,三つ目の問題として,記事に書いたようにワイン・トレインはスタッグス・リープをかすめもしません。ここは「ある」というだけで「通る」と書いてないから単なる位置関係だけを言おうとしたのかと解釈しようかとも思ったのですが,上述のように,それも大分おかしなことになっています。

それから「ワイン・トレインは観光用の列車ですからプロであるワイン評論家が乗るのはちょっと恥ずかしいのではないかという気もしないでもないですが…」と書きましたがこれは感想であって,内容が間違っているという問題とはちょっと別の話です。

このほか,「そもそもワイン・トレインはカーネロスを走っていない」という指摘をいただきましたが,出発地であるナパはCarnerosにぎりぎり入っているかどうかというところです。仮に入っていたとしてもワイン・トレインからカーネロスの畑は見えないだろうとは思いましたが,そこまでは目くじら立てなくていいかなと,それについては前記事では触れませんでした。

また,雑誌のキャプチャを記事内に入れたことで「著作権が心配」という意見も拝見しましたが,これについては漫画の批評のための引用というのが認められているので,問題ないはずです。