著者の本田さんは古くからの知り合いである。長いこと第一線の記者として活動を続けていることは尊敬に値する。昔はライバル心のようなものもないわけではなかったが,今では同じ世代のものとして,応援する気持ちが強い。

さて,本書であるが,メインのテーマをスマートフォンである。しかし,今スマートフォンについて語るのはデジタル業界すべてについて語るのと同じことだ。かつてパソコンがデジタル業界の第一線であったように,今はスマートフォンが業界のあらゆるセクターに注目されているのである。

それだけにスマートフォンについて語るには幅広い見識が必要であるが,筆者は携帯電話だけでなく,パソコンはもちろんのこと音楽配信などのコンテンツビジネスもお手の物であり(私の見るところではこの分野が一番得意のように思われる),ソーシャルメディアについても詳しい。

しかも,ともすれば業界用語を盛りこんで偉そうに語りたくなるところを,どの分野も平易にだれでも分かるように書いている。

スマートフォンを中心としたデジタル産業の今を簡単に知ることができる好著である。