もしも乙武さんが訪れたのが米国のレストランだったら
乙武洋匡さんが銀座のイタリアンレストランで入店拒否されたことが話題になっています(当初のTwitterのやり取りなどをまとめた記事「【Twitterで激白】乙武洋匡氏が車椅子を理由にレストランで入店拒否されたと告白 / レストランは謝罪と弁明」、乙武さんがブログに書いた記事「イタリアン入店拒否について」)。
乙武さんが怒った理由は、入店を断られたことそのものよりも、店側の対応の悪さによるものだと思いますが、そもそも店として車椅子のお客さんにどこまで対応するか、というのはなかなか難しい問題だと思います。特に、都心では地下や2Fで階段しかアクセスがなく、スタッフもほとんどいない、といった店はありふれていますし。
では、これが米国だったらどうでしょう。
米国では父ブッシュの時代にできたAmericans with Disabilities Act(ADA)という法律があります。ここでは雇用や公共施設などで身体障害者差別を禁じることが記されており、レストランもTitle III—Public accommodations (and commercial facilities) に含まれています。
それによると、この法律よりも後に作られる建物では「アクセシビリティ・ガイドライン」を満たさないといけないほか、既存の建物でも、障害を取り除くことが“大きな困難でない”(原文は“easily accomplished without much difficulty or expense”)場合は、対応しないといけないことになっています。
今回の乙武さんのケースではビルにエレベーターがあるもののレストランがある2Fには止まらない形になっていたとのこと。おそらく米国であれば店側に非があるという判断になったのではないかと思います。
米国は、人種差別問題が大きな問題であったことからか、差別の撤廃を法律的に定める傾向が強く、人種・宗教・性別などで賃金の差別をしてはいけないなど、かなり多くの決まりがあります。障害者についても法律的に守られ、実際の社会でも日本より不自由が少なく暮らせるようになっている感じがあります。
ただ、訴訟大国の米国では、こういった決まりを逆手に取ろうという輩も登場します。Jarek Molskiという人は1985年にオートバイの事故で障害が残ったのですが、カリフォルニアで障害者用の駐車場の不備や手すりの不備など400以上もの訴訟を起こしました。
彼が相手にするのは中小の事業所だけ。前述の“大きな困難でない”という部分の曖昧さを突いたものでした。大きな会社にとっては“大きな困難でなく”できる解決策も中小にとっては大変であるということを逆手に取ったのでした。
最終的には、彼は裁判所で「ゆすり」であるとされ、それ以上の訴訟ができなくなったのですが、既にそれまでに大半が和解に持ち込まれており、232件の弁護を担当した弁護士の報酬だけでも1000万ドルを超えたと推測されています。
実は、彼の訴訟の対象にはワイナリも含まれていました。カリフォルニアワイン・インスティテュートの堀賢一さんによると、「『玄関にスロープが付いていない』『車いす用のトイレがない』『車いすでトイレに入ったら、トイレットペーパに手が届かず、不快な思いをした』等の理由で20以上のワイナリーに対して訴訟を起こし、膨大な慰謝料を手に入れ」たとのこと。
ある、ソノマのワイナリのオーナーは「裁判所経由の訴状で知らせるのではなく、訪問時に『車いすからではトイレットペーパーに手が届かないので、設置位置をかえてほしい』といってくれれば、すぐ変えるのに」と言っていたそうです。
こういうことがあるため、小規模のワイナリは、テイスティング・ルームを設けて一般に公開するのに及び腰になってしまっているそうです。一部のワイナリでメーリング・リスト・メンバーだけに公開を限っているところがあるのは、こういう問題があるからかもしれません(この場合は一般公開ではないのでADAの適用範囲ではなくなります)。
法律で守られているが、やや行き過ぎの面も出てしまう米国と、今の日本、どちらもいい面、悪い面がありますが、日本では「優しい心」を持っていたいと思います。
乙武さんが怒った理由は、入店を断られたことそのものよりも、店側の対応の悪さによるものだと思いますが、そもそも店として車椅子のお客さんにどこまで対応するか、というのはなかなか難しい問題だと思います。特に、都心では地下や2Fで階段しかアクセスがなく、スタッフもほとんどいない、といった店はありふれていますし。
では、これが米国だったらどうでしょう。
米国では父ブッシュの時代にできたAmericans with Disabilities Act(ADA)という法律があります。ここでは雇用や公共施設などで身体障害者差別を禁じることが記されており、レストランもTitle III—Public accommodations (and commercial facilities) に含まれています。
それによると、この法律よりも後に作られる建物では「アクセシビリティ・ガイドライン」を満たさないといけないほか、既存の建物でも、障害を取り除くことが“大きな困難でない”(原文は“easily accomplished without much difficulty or expense”)場合は、対応しないといけないことになっています。
今回の乙武さんのケースではビルにエレベーターがあるもののレストランがある2Fには止まらない形になっていたとのこと。おそらく米国であれば店側に非があるという判断になったのではないかと思います。
米国は、人種差別問題が大きな問題であったことからか、差別の撤廃を法律的に定める傾向が強く、人種・宗教・性別などで賃金の差別をしてはいけないなど、かなり多くの決まりがあります。障害者についても法律的に守られ、実際の社会でも日本より不自由が少なく暮らせるようになっている感じがあります。
ただ、訴訟大国の米国では、こういった決まりを逆手に取ろうという輩も登場します。Jarek Molskiという人は1985年にオートバイの事故で障害が残ったのですが、カリフォルニアで障害者用の駐車場の不備や手すりの不備など400以上もの訴訟を起こしました。
彼が相手にするのは中小の事業所だけ。前述の“大きな困難でない”という部分の曖昧さを突いたものでした。大きな会社にとっては“大きな困難でなく”できる解決策も中小にとっては大変であるということを逆手に取ったのでした。
最終的には、彼は裁判所で「ゆすり」であるとされ、それ以上の訴訟ができなくなったのですが、既にそれまでに大半が和解に持ち込まれており、232件の弁護を担当した弁護士の報酬だけでも1000万ドルを超えたと推測されています。
実は、彼の訴訟の対象にはワイナリも含まれていました。カリフォルニアワイン・インスティテュートの堀賢一さんによると、「『玄関にスロープが付いていない』『車いす用のトイレがない』『車いすでトイレに入ったら、トイレットペーパに手が届かず、不快な思いをした』等の理由で20以上のワイナリーに対して訴訟を起こし、膨大な慰謝料を手に入れ」たとのこと。
ある、ソノマのワイナリのオーナーは「裁判所経由の訴状で知らせるのではなく、訪問時に『車いすからではトイレットペーパーに手が届かないので、設置位置をかえてほしい』といってくれれば、すぐ変えるのに」と言っていたそうです。
こういうことがあるため、小規模のワイナリは、テイスティング・ルームを設けて一般に公開するのに及び腰になってしまっているそうです。一部のワイナリでメーリング・リスト・メンバーだけに公開を限っているところがあるのは、こういう問題があるからかもしれません(この場合は一般公開ではないのでADAの適用範囲ではなくなります)。
法律で守られているが、やや行き過ぎの面も出てしまう米国と、今の日本、どちらもいい面、悪い面がありますが、日本では「優しい心」を持っていたいと思います。