「カルト・ワイン」の1つとして有名なColgin(コルギン)のセミナーに参加しました。この夏、Colginの社長に、Harlan傘下Bondの支配人だったポール・ロバーツ氏が就任というちょっとびっくりなニュースがあり、そのポール・ロバーツ氏が来日して説明しました。また、ポール・ロバーツ氏の移籍と関係あるのかどうかは分かりませんが、日本のインポーターがHarlanと同じ中川ワインに変わっています。

ポール・ロバーツ

ColginのオーナーはAnn Colgin氏。米国からロンドンに留学して美術を勉強し、オークションハウスとして有名なクリスティーズに入社しました。美術部門の向かいがワイン部門で、マイケル・ブロードベントなどの有名人と知り合いになってワインにも興味を持つようになりました。

その後、有力なオークションハウスのサザビーズに招かれ、ロスアンゼルスでワインのオークショナーになりました。

ナパにもしばしば訪れるうちにワインを作りたいと思うようになり、ヒルサイドの畑を探すうちに、ナパの東側にあるプリチャード・ヒルに土地を見つけました。

最初のヴィンテージである1992年のワインが市場に出たころは、まさにカルト・ワインの繚乱期。ヘレン・ターリーが作ったワインはその1つとして注目されるようになりました。これまでColginのワインはWine Advocate誌で6回100点を取っており、Harlanなどと並んで、ナパの最高のワインを作っています。

なお、当時の夫であるフレッド・シュレーダー氏は現在はSchrader Cellarsのオーナー。こちらも近年100点ワインを連発して、カルト・ワインの仲間入りをしています。

さらに、現在の夫のジョー・ウェンダー氏はブルゴーニュのメゾン・カミーユ・ジローのオーナーと、ワイン業界の一番きらびやかなところにいると言っても過言ではないかもしれません。


そのワインですが、ポール・ロバーツ氏は「濃いだけじゃない」ということを強調します。ナパのカルト・ワインというと、濃くて力強く、フルーツ爆弾のように果実味が強い、といったイメージを持ちがちですが、それを払拭したいという気持ちが強いようです。

試飲では2009年のCariad、2010年のIX Estate、2009年のIX Estateシラーの3種が登場しました。定価で言うと前の2つが6万5000円。シラーが3万5000円です。さすがの価格ですが、さらに日本への輸入量はCariadで5ケース(60本)という少量。まさに選ばれた人のためのワインという感じです。

余談ですがIX Estateはナンバー・ナイン・エステートと読むそう。初めて知りました。

Cariadは唯一自社畑以外のブドウで作るワイン。カベルネ・ソヴィニョンが中心です。畑はDavid AbreuのMadrona RanchとThorevilos:トレヴィロス。Madrona Ranchはプリチャード・ヒルとは反対側のナパの西側。St. HelenaからSpring Mountainに上がっていく斜面にある畑です。Thorevilosは東側の斜面ですがColginの畑よりは低い位置です。

畑管理の担当として有名なDavid AbreuはColginでも畑管理を担当しています。David自身のワイナリのワインも、Madrona Ranch、Thorevilosそれぞれで100点を取っています。CariadはAbreu畑の中でも急勾配の斜面のブドウを使い、収穫を早めにしているとのことでした。

ブルーベリーやカシスのような青系の果実の味をまず感じます。濃いワインではありますが、ミントのような爽やかさもあります。さすが、いいワインです。

次のIX Estateはカベルネ・ソヴィニョンが50%でメルローなどをブレンドしたワイン。Cariadと比べても明らかに色が濃いことにびっくりします。しかし、味わいは重くなく、とてもシルキー。とてもキメが細かいタンニンです。ただ、時間が経つにつれて、タンニンの渋さも強くでてきてまだまだ若いワインであることを思い知らされます。酸もしっかりしており、ポテンシャルの高さを感じます。10年後くらいに飲んでみたいワイン。

このエステートの畑IXはプリチャード・ヒルの上にあり、Lake Hennessyを見下ろすところですが、斜面の向きは東側。朝の太陽をしっかり浴びて、夕方は日が当たらないところを選んだといいます。石・岩が多く、畑を作るのに100トンもの石をどけたとか。プリチャード・ヒルを開拓するのは大変なのです。

最後はシラー。シラーはIXの畑の一番上部に植わっています。Ann Colgonがコート・ロティみたい、ということで同地のシャーブから樹を取り寄せて植えたとか。

これも美味しい。赤系の果実味を強く感じ、軽やかさと味わいの強さを並び立たせています。

Colginのワイン

ColginにはこのほかTychson Hill(ティクソン・ヒル)という畑のワインもありますが、今回の輸入ラインナップには含まれていません。将来は入る可能性もあるとのことでした。

また、Colginを有名にした最初の畑であるHerb Lambはフィロキセラにやられたため植え替えで、ラインナップから消えたとのこと。将来また作る予定はないこともない、という感じでしたが、雰囲気的にはIXにより自信を持っているように思いました。

最後に全体の感想を。

当たり前ですが、ワインはどれも美味しいです。特にIX Estateは良かったです。ポール・ロバーツ社長が言うように、濃いだけでないエレガンスがありました。

ただ、5万円を超えるワインを欲しいと思うかどうかには、ワインの出来以上に、そのワイン、そのブランドへの信頼がいると思います。以前試飲したHarlanは類まれな個性を持っていました。Bondもそれぞれすごいと思いました。Colginにそれを感じるかというと、今日の時点ではよく分かりませんでした。おそらく、自分のテイスティング能力が足りないせいだと思います。Cariad、IX Estateの違いは言えても、共通する個性を説明するのは難しいものです。

もっとテイスティングの能力がほしい、そう思った試飲会でした。